撮影日記


2017年12月31日(日) 天気:曇 

2017年にお迎えしたカメラたち

12月31日には例年のように,この1年間にお迎えしたレンズやカメラを思い返すことにしよう。

重要なものとしては,まず,Nikon F-601Mをあげておきたい(2017年1月29日の日記を参照)。このカメラを入手したことで,「ニコンF3桁シリーズ」(「F-●01」という名称の機種)を一通りそろえられた,つまり,コンプリートできたことになる。
 ニコンF3桁シリーズは,ニコンの一眼レフカメラでさいしょの,オートフォーカス式のシリーズとなる(Nikon F3AFを除く)。しかし,ニコンF3桁シリーズに含まれるすべての機種が,オートフォーカス式というわけではない。ニコンF3桁シリーズとしてさいしょの機種となるNikon F-301は,ニコンではじめて電動ワインダーを内蔵した一眼レフカメラとして1985年9月に発売されたが,オートフォーカス式ではなかった。1986年4月に発売されたNikon F-501AFからが,オートフォーカス式の一眼レフカメラとなる。その後,毎年のように改良機種が発売され,上級機種F-801シリーズ,中級機種F-601シリーズ,エントリーモデルF-401シリーズというラインアップが形作られた。いずれも一定の評価を得てそれなりの数が流通し,いまでも中古カメラ店でよく見かける。ニコンF3桁シリーズのカメラは,流通する数が多いこともあって,価格もお手頃なものになっていることが多い。
 それならば,ニコンF3桁シリーズのコンプリートは容易に思われるだろうが,このシリーズにはややレアな機種が含まれている。それが,Nikon F-601Mである。

Nikon F-601M

オートフォーカス一眼レフカメラの中級機種となるF-601シリーズの1つであるが,このカメラはオートフォーカス式ではない。F-601から,オートフォーカス機能と内蔵フラッシュが省かれている。電動ワインダーを内蔵したマルチモードAE機として,Nikon F-301の後継機種となるのかもしれないが,オートフォーカス用のレンズを装着しなければプログラムAEとシャッター速度優先AEが使えず,マルチモードAE機としては使えない。どういうユーザ層を対象にしたのかよくわからない,なんとも中途半端な印象の機種である。
 少なくとも日本国内ではあまり売れなかったのだろうか,中古カメラ店の店頭で見かける機会は少なく,たまに見かけても,やや強気な価格がつけられていることがある。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されたのは,vol.100(1991年3月)からvol.104(1992年3月)である。Nikon F-601がvol.100(1991年3月)からvol.112(1996年5月)に掲載されていたこととくらべると,発売された期間はごく短いものだったようである。
 ニコンF3桁シリーズのコンプリートをめざすときには,Nikon F-601Mの入手がネックとなる。逆に考えれば,もしすでにNikon F-601Mを入手しているならば,ニコンF3桁シリーズのコンプリートをめざすべきだ。

このほかにニコンの一眼レフカメラとしては,Nikomat EL(2017年5月27日の日記を参照)とNikomat FTNのブラックボディ(2017年12月2日の日記を参照)を入手した。
 Nikomat ELは,ニコンの一眼レフカメラとしてはじめて,電子制御シャッターを採用して絞り優先AEが使える機種として,1972年12月に発売された。ほかのニコマートシリーズの機種にくらべると,やや小ぶりで軽く,絞り優先AEも使えるので,Ai方式ではないタイプのニッコールレンズ(オートニッコールあるいはニューニッコール)をお気軽に使うのに適している。
 Nikomat FTNは1967年10月に発売された機種で,絞りリングを1往復させることでレンズの開放F値を設定できるユーザインタフェースを提案した。この方法は,レンズを交換するたびに開放F値を設定する必要のないAi方式に移行するまで,「ニコンのガチャガチャ」として定着するものになった。Nikomat FTNそのものはずっと以前に入手していたが,ブラックボディの入手は今回がはじめてとなる。

Nikomat EL and Nikomat FTN black

また,Nikon FG-20は,きわめて小型軽量ながら絞り優先AEとマニュアル露出が可能な,携帯しやすく使いやすい一眼レフカメラである(2017年11月7日の日記を参照)。これも,2017年に入手したカメラの1つである。

Nikon FG-20

ニコンF3桁シリーズこそコンプリートしたものの,ニコンの一眼レフカメラ全体のコンプリートを考えるならば,まだまだ道は長いのだ。

今年は,ニコン以外の一眼レフカメラも,いくつか入手している。
 そのうちでも,CHINON CP-9 AFとFUJICA AX-5は,ずっと以前から興味のあった機種だ。

かつてチノンは,8mmカメラの分野で有名であった。しかし,よく知られているように,家庭用ビデオが普及すると,8mmカメラの市場はごくかぎられたものになっていく。チノンは,8mmカメラだけではなく,35o判のコンパクトカメラや一眼レフカメラも発売するようになった。残念ながら一般の市場では,ニコンやキヤノン,あるいはペンタックス,ミノルタ,オリンパスのように,目立つ存在にはならなかった。
 一眼レフカメラでAE機構が一般化する流れの中で,ペトリやミランダなどのメーカーは,市場から姿を消した。オートフォーカス式の一眼レフカメラが登場する時期になると,オートフォーカス式の一眼レフカメラを発売しなかったいくつかのメーカーが,市場から姿を消した。
 チノンは,そのような時期にも,姿を消さなかったメーカーの1つである。
 そして,オートフォーカス式の一眼レフカメラも発売していた。1988年ころに発売された,CHINON CP-9 AFである。

CHINON CP-9 AF

この時期にチノンが発売した一眼レフカメラは,ペンタックスのカメラと同じKマウントを採用していた。CHINON CP-9 AFのレンズマウントも,Kマウントと同じ形状のものである。しかし,オートフォーカスやプログラムAEなどのために,電気接点などが付加されている。具体的には,ペンタックスのAシリーズと共通する電気接点がマウント面にあり,マウント内にはオートフォーカスのための電気接点が設けられている(2017年7月27日の日記を参照)。このため,CHINON CP-9 AFにペンタックスAレンズを装着すると,ペンタックスAシリーズと同様にプログラムAEが利用できるようになる。しかし,オートフォーカスのための電気接点はペンタックスのものとは異なるため,ペンタックスのオートフォーカス用レンズを装着しても,CHINON CP-9 AFでオートフォーカス撮影はできない。
 CHINON CP-9 AFの大きな特徴として,ピントリングを駆動するモーターがレンズ側に内蔵されていることがあげられる。そのため,ピントリングの動きについては,当時のオートフォーカス式一眼レフカメラのなかでは,早い部類になるものと感じられる。ただし,キヤノンEOSのように超音波モータを使用しているわけではないようで,ピントリングが動作するときの音はかなり大きい(2017年8月13日の日記を参照)。また,このレンズには絞りリングがない。絞り優先AEやマニュアル露出で撮影するときは,絞り値をカメラのボタンで選択し,設定する。CHINON CP-9 AFでペンタックスのレンズを使用することはできるが,CHINON CP-9 AF用のレンズをほかの機種で使用することは,事実上できない。

チノンのオートフォーカス式の一眼レフカメラとしては,CHINON GENESIS (チノン・ジェネシス)という,レンズ交換のできないタイプのカメラが知られている。このタイプのカメラとしてはオリンパスLシリーズが有名であり,中古カメラ店の店頭でもよく見かける。CHINON GENESISは,オリンパスLシリーズにくらべると,見かける機会は少ない。CHINON CP-9 AFを中古カメラ店の店頭で見かけることは,さらに少ない。

AE一眼レフカメラを何機種も発売しながら,オートフォーカス式のカメラを発売することなく,35o判一眼レフカメラの市場から消え去ったメーカーも少なくない。そのようなメーカーのカメラとして,1979年9月(日本国内では1980年3月)に発売されたFUJICA AX-5は,興味深い機種の1つである。

FUJICA AX-5

FUJICA AX-5は,絞り優先AE,シャッター速度優先AEのほかにプログラムAEも使用できる。マルチモードAEの一眼レフカメラとしては,1977年発売のMINOLTA XDや1978年発売のCanon A-1などに次ぐ,初期のものとなる。しかし,MINOLTA XDやCanon A-1のような人気は出なかったようで,中古カメラ店の店頭で見かける機会はごく少ない。1981年発売のMamiya ZE-Xもあまり見かけないが,それよりもさらに見かけないカメラである。
 コンパクトカメラや,おもに業務用として使われる中判カメラ,大判カメラ用レンズの分野では,フジの製品はポピュラーな存在だと思う。しかし,35o判一眼レフカメラの分野では,フジの製品はかなりマイナーな存在となっている。

フジと同様に,フィルムや印画紙のメーカーでもあるコニカも,コンパクトカメラの分野ではとてもポピュラーな存在であるが,35o判一眼レフカメラの分野では地味な存在である。コパルの縦走りメタルフォーカルプレンシャッターユニットを早期から採用したなど,エポックメインキング的な要素の多いメーカーであるが,そのアピールポイントは,Konica C35EF (ピッカリコニカ)やKonica C35AF (ジャスピンコニカ)などにくらべて,一般市場向けにはやはり地味である。
 私は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されたすべてのメーカーの一眼レフカメラを,1機種ずつだけでも入手して体験したいと考えている。まだ1台も入手できていないメーカーもたくさんあるので,まだ先は長い。コニカも,これまで一眼レフカメラを入手できていなかったメーカーの1つだったが,今年ようやく,コニカの一眼レフカメラを2機種,入手することができた。

Konica new FTA and Konica Acom-1

コニカの35o判一眼レフカメラは,初期のものと,AE機構を前提にしたARシリーズともよばれるものとに,大きくわけることができる。これらの間には,交換レンズの互換性がない。今年,入手したものは,1970年発売のKonica new FTAと1976年発売のKonica Acom-1の2機種である。どちらもARシリーズとよばれる機種で,シャッター速度優先AEが可能である。
 ARシリーズ用の交換レンズとしては,HEXANON AR 40mm F1.8というレンズが有名である。このレンズとのセットで,かつ安価に入手することを重視していたため,これまでコニカの一眼レフカメラを入手する機会に出会うことができないでいた。50oレンズつきにも対象を広げたところ,あっさりと「よい出会い」があった,ということである。もちろん,HEXANON AR 40mm F1.8は,いずれ入手したいと考えている。

昨年は,フジ(2016年1月4日の日記を参照)やコダック(2016年1月14日の日記を参照)が発売した初期のディジタル一眼レフカメラ,ライカ判サイズの撮像素子をもつディジタル一眼レフカメラ(2016年8月26日の日記を参照)やニコンFマウント以外のディジタル一眼レフカメラ(2016年12月7日の日記を参照)も入手するなど,ディジタル一眼レフカメラがようやく充実した年となった。
 今年も,ディジタルの一眼レフカメラをあらたに入手することになった。

PENTAX K100Dは,Kマウントあるいはマウントアダプタを併用してM42マウントのレンズを,ディジタルカメラで使おうと考えて入手したものである(2017年2月27日の日記を参照)。KマウントボディでM42マウントレンズを使うアダプタを入手していないので,本来の目的を達成していない。

PENTAX K100D

OLYMPUS E-300は,フォーサーズシステムとよばれる仕様のディジタル一眼レフカメラの1つである。正直なところ,このシステムにはあまり魅力を感じていなかった。その後,いわゆる「ミラーレス」カメラであるマイクロフォーサーズシステムへ発展的に解消してしまったので,すでに過去の規格のものである。
 だから,欲しくて入手したわけではない。ジャンクカメラのセットを入手したなかに,たまたまボディのみが含まれていたものだ。動作するかどうか試したところ,とくに問題もなさそうだったので,あらためてバッテリーパックとレンズを入手して,いちおう使えるようにしたものである(2017年7月3日の日記を参照)。

OLYMPUS E-300

ディジタル一眼レフカメラのほか,いわゆる「ミラーレス」カメラをはじめて入手することができた。
 入手したものは,SONY α NEX-C3である。マイクロフォーサーズ規格やニコン1など,ほかの「ミラーレス」カメラよりも大きな,いわゆるAPS-Cサイズの撮像素子を使っている。このため,マウントアダプタを使っていろいろなマウントのレンズを試すという遊び方にも適している。

SONY NEX-C3

KマウントボディでM42マウントレンズを使うアダプタを買っていないのは,M42マウントのレンズで遊ぶときはSONY α NEX-C3を使うことにしたためである(2017年3月12日の日記を参照)。
 PENTAX K100Dを入手した意味がなくなってしまったわけだが,あまり気にしないことにしよう。

コンパクトカメラでも,興味深いものをいくつか入手できた。

CHINON Bellami (チノン・ベラミ)は,ずっと以前から興味のあった機種の1つである。なによりの魅力は,そのデザインだ。巻き上げレバーに連動して開くレンズカバーと,そこに描かれた馬車の絵が,とても魅力的である。実際に撮影してみたところ,描写もすなおで満足できるものである(2017年10月9日の日記を参照)。

CHINON Bellami

また,日本国内ではあまり見かけない,SAMSUNGのコンパクトカメラも入手した。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」にSAMSUNGのカメラが掲載されたのはvol.111(1996年)からvol.113(1997年)にかぎられるので,日本で大々的に発売された期間はごく短いのだろう。このたび入手できたものは,4機種ある(2017年7月7日の日記を参照)。そのうち日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載された機種と同定できるのは,SAMSUNG MAXIMA ZOOM 145のみである(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」では,「サムソン スリムズーム145」として掲載されている)。そののちに発売されたと思われるSAMSUNG KENOX 140ipは,小型ながら多機能で使い勝手もよく,写りにも満足できる楽しい機種である(2017年11月19日の日記を参照)。

SAMSUNG compact cameras

富士フイルムがFUJI KLASSE Wの出荷を2014年4月に終了したことで,35o判コンパクトカメラは市場から事実上退いた状態になった。FUJI Silvi F2.8は,2002年に発売され,2007年に出荷を終了した。フィルムのコンパクトカメラとしては,最末期に発売された製品の1つである。
 FUJI Silvi F2.8の魅力は,超広角域である24mmからのズームレンズを搭載している点だ。また,24mm時の開放F値はF2.8で,望遠側の焦点距離こそ長いものの開放F値が大きな「暗黒ズームレンズ」が一般的だったなかにおいては,とても魅力的なスペックをもっていた。実際に使ってみると,ピントをはずすことが少なくなかったことが残念であるが,24mmという超広角域が使えるので,街なかでのスナップ的な撮影をおこなうには快適である(2017年8月17日の日記を参照)。

FUJI Silvi F2.8

このほかにも,Mamiya 645のシステムが充実したり(2017年2月21日の日記を参照),APS一眼レフカメラ専用のIX-NIKKOR 60-180mm F4.5-5.6を入手して,少し手を加えることで(制約があるものの)ライカ判の一眼レフカメラで使えることが確認できたり(2017年8月25日の日記を参照),フジのBirdie kitというスライドプロジェクタに魅せられたり(2017年7月17日の日記を参照)するなど,いろいろと楽しめた1年であった。
 来年は,どんなカメラやレンズなどとの出会いがあるだろうか。


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