撮影日記 |
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2017年12月02日(土) 天気:晴妙にきれいなニコマートFTNカメラを趣味とする人たちの一部で,「ドフ」という語句が使われることがある。「ドフ」ではときおり,珍しい製品や格安の製品が見つかることがあるらしい。 今日もコンテナを覗いてみると,そこにはビニル袋に包まれた黒いカメラがあった。 値札に記載された金額は,780円である。そして,このレンズは,ニッコールっぽい。迷わず救出したそのカメラは,ニコマートFTNのブラックボディであった。付属していたレンズは,NIKKOR-S Auto 50mm F1.4である。 なぜ,このカメラがわずか780円でジャンク品扱いされていたのであろうか。 それでは,レンズがどうしようもない状況だというのだろうか? しかし,オプション品のアクセサリシューが取りつけられていることからは,本気で使おうと考えられていたと思われる。純正の保護フィルタがつけられていることや,下半部だけケースに入れられていたことからは,ある程度は使われていたものの,神経質なくらいにていねいにたいせつに扱われていた可能性も考えられる。 ニコマートFTNは,1967年10月に発売された。日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.32(1968年6月)によれば,ボディの価格は32000円,50mm F1.4レンズ付きで54800円である。さらに,ブラックボディは日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.38(1970年5月)では1000円高い価格がつけられている。1969年5月に東京から新大阪まで新幹線「ひかり」号を利用すると,運賃2230円,超特急料金1900円で4130円となる。現在,東京から新大阪まで「のぞみ」を利用すると,運賃8750円,通常期の指定席特急料金5700円で,14450円となる。単純に計算して,3.5倍だ。50mm F1.4レンズ付きでブラックボディのニコマートFTNの価格を3.5倍すると,195300円となり,決して安いものではないことがわかる。なお,国鉄の初乗り運賃は,1969年5月は5kmまで30円,現在は3キロまで140円(本州3社の幹線)だから,ざっと5倍である。これで比較すれば,279000円となる。ともあれ,神経質なくらいにていねいに扱われるのも,当然のことなのだ。 |
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