撮影日記


2021年11月30日(火) 天気:曇のち雨

角型「関式サロン露出計」のモデル名

よく知られている計算盤式露出計の1つである「関式サロン露出計」には,細かなバリエーションの違いがあることが確認できる。これまでに少なくとも,角型1〜角型4までの4種類が存在することは確認している(2021年11月23日の日記を参照)。計算盤には製品の名称「SEKI'S SALOM EXPOSURE METER」という文字が目立つように記されているが,そこに発売時期やモデル名をあらわすような文字は見あたらない。それでも,「アサヒカメラ」1954年8月号には「最新型IIIA型新発売」という広告が掲載されている(2021年10月21日の日記を参照)し,型番の記された取扱説明書を入手しておられる人もいらっしゃる(2021年10月31日の日記を参照)ので,発売元(玄光社)はモデル名というか型番の概念をもっているはずである。そして,「IIIA」型が存在するからには,I型やII型などもあったはずである。角型1〜角型4あるいは丸型などが,「I型」あるいは「II型」などにも同定できるはずである。型番や時期のわかる広告や取扱説明書と,実際の製品とを照合することで,それらが判断できると思われる。

同定のために,それぞれのモデルの特徴をまとめているとき,ふと,これまで気がついていなかった文字が目に入った。
 これは,わたしが入手している角型4の裏面である。

いままで見落としていたのは,この中心部分にある文字列である。

「PATENTED MODEL III-A」という文字がある。
 角型4には,ほかのモデルにはなかった「まる閃 ミリセコンド」目盛が,「アサヒカメラ」1954年8月号の広告にあった「殊にシンクロ撮影の場合,即座に露出が判る独自の新考案が施された」(2021年10月21日の日記を参照)に対応するのではないかと想像していたのであるが,その通り,これは「IIIA型」ということで,よかったようである。

それでは角型1は,どうなっているであろうか。

サマータイムに対応している角型1は,「MODEL II-A」であった。丸型はとくに「I型」などと名乗っていなかったと思われるが,丸型から角型に大きくモデルチェンジしたことから,「II型」ということにしたのであろう。

さらに,インターネットオークションで目撃した角型2や,所有者から情報提供をいただいた角型3の裏面の画像を見ると,どちらも「PATENTED MODEL-IIB」となっている。角型1→角型2および角型3→角型4の順にモデルチェンジされていったという予想は,正解だったわけだ。
 しかし,かえって大きな問題が発生した。
 角型2と角型3は,計算盤の記載内容がかなり異なっている。これが同じ「II-B型」であるということは,II-B型にも前期型,後期型があるということだろうか。あるいはもっと頻繁に,細かい記載内容の改訂がおこなわれていた可能性もある。
 モデル名はすっきり判明したが,「関式サロン露出計」の沼は,想像以上に深いことが判明してしまったのかもしれない。

角型「関式サロン露出計」各モデルの特徴
サンプルモデルサマー
タイム
感光度表記カラーフィルム閃のミリ
セコンド
角型1 II-A 対応 DINとASA さくら・フジ DIN12 なし
角型2 II-B 非対応 ASAとDIN さくら・フジ ASA 8 なし
角型3 II-B 非対応 ASAとWeston さくら・フジ ASA 10,オリエンタル ASA 16 なし
角型4 III-A 非対応 ASAとWeston さくら・フジ ASA 10,オリエンタル ASA 16 あり

← 前のページ もくじ 次のページ →