撮影日記


2019年12月11日(水) 天気:曇

印画紙で撮る「おもちゃ」なカメラ

かつて,小学生あたりを対象にした月刊誌の付録において,カメラというものは1つの定番であったと思う。ただし,ここでいうカメラは,本格的なカメラではない。年間購読予約などをすれば,110カートリッジフィルムあるいは127カートリッジフィルムを使う簡便なカメラがもらえるというキャンペーンを見かけたことはあるが,月刊誌の付録になるカメラは,もっと簡便なものである。付録になるカメラに共通する特徴として,「通常のフィルムを使うものではない」という点がある。本格的な暗室がなくても,カメラへの装填,現像,プリントなどができるようなフィルムや印画紙,薬品などがセットされていた。さらに簡便なものとして,「日光写真」というもののセットが付録になることもあったが,同様に自分で現像などの処理をするようになっているものである。
 通常のフィルムを使うカメラであれば,フィルムを買って,D.P.E.店に現像とプリントを依頼する必要がある。これは,小学生のお小遣いには,少々敷居の高い行為である。あくまでも,月刊誌の付録として何回か遊べればよい,というものとして企画されたものと思われる。
 これらのカメラや日光写真のセットを付録にした雑誌は,あくまでも学習雑誌を名乗るものである。したがって,それらのカメラや日光写真のセットは,たんに遊べればよいというものではなく,なんらかの理科の学習につながるような実験ができるように配慮されている。その学習項目は,印画紙などにおける化学反応が主題ではなく,光の進み方のような内容が主題だったとなんとなく記憶している。

これは,学研「6年の科学」の付録だったカメラである。

このカメラで撮影するためには,まず,暗所において裏蓋を開けて印画紙を装填する。

このカメラにシャッターはなく,レンズキャップの開閉で露光量を調整するようになっている。

付録には,このカメラで使うための印画紙とそれを現像処理するための薬品も含まれていた。いまとなってはどのような仕様の印画紙や薬品であり,適正な露光時間や現像処理の条件など,わからなくなっている。
 そして,この付録(すなわち教材)は,現像処理における化学反応を学習するためのものではなく,光の進み方を学習するためのものであったと記憶している。それに使うために,写る範囲がほぼ2倍に広がる,広角のコンバージョンレンズが付属している。

付録には,ピントグラスに相当する部品も含まれており,これをカメラの後部にはめこむことで,実際に写る範囲を確認することができる。

ただし,いうまでもないことであるが,撮影用印画紙の使用と,このピントグラスの使用とは,排他的な関係にある。実際に撮影をするときには,まずピントグラスをはめた状態で視野を確認し,そのときのカメラの位置がわかるように,なにかのしるしを残しておく。そして,暗所で印画紙を装填したのち,しるしをしたところにカメラをおき,レンズキャップをはずして露光するという手順になる。ただ,カメラの上部に設けられた枠状のファインダーに頼っても,広角コンバージョンレンズを使わないときであれば,写る範囲を大きくはずすことはない。

このピントグラスには,もう1つの使い道がある。
 撮影し現像して得られるものは,ネガ画像である。ネガ画像の得られたプリントとあたらしい印画紙とを重ね,カメラの後ろ側にはめて,このピントグラスでおさえる。これを日光にあてることで,焼き付けができる。焼き付けた印画紙を現像すれば,ポジ画像が得られる,というしくみになっている。

付録の印画紙や薬品は残っていないが,カメラに関してはさいわいにも,部品がこのようにセットで残っている。
 付録のものとは特性が異なるとはいえ,印画紙を使う環境は確保している。そして,四切1/2判の撮影で,印画紙で撮影する経験もある。
 いまあらためて,このカメラを使ってみようと思うのであった。


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