撮影日記


2018年12月02日(日) 天気:晴

TC-16ASの使えるディジタル一眼レフカメラ

ニコンが発売したはじめて発売したオートフォーカスの一眼レフカメラは,1983年に発売されたNikon F3AFという機種だった。ラインアップされた専用のオートフォーカスレンズは,80mm F2.8と200mm F3.5の2本だけだったが,これに加えて,TC-16Sというオートフォーカス用テレコンバータが用意された。マニュアルフォーカスのニッコールレンズにTC-16Sを装着すると,焦点距離を1.6倍に伸ばすとともに,Nikon F3AFでオートフォーカス撮影ができるようになる。TC-16Sのレンズが前後に動くことで,マニュアルフォーカスのレンズのピントリングを動かさなくても,ピントをあわせることができるようになる,というしくみになっている。これにより,すでに所有しているレンズでもオートフォーカス撮影のできることになり(ただし,使えるレンズに制約はある),一気に多数のオートフォーカス用レンズがラインアップされたことにもなる。
 3年後の1986年に,オートフォーカスの一眼レフカメラNikon F-501AFが発売された。レンズのピントリングを動かす方式が,Nikon F3AF用のものとは異なる,まったくあたらしいシステムになっていた。以後,ニコンが発売するオートフォーカスの一眼レフカメラは,Nikon F3AFのシステムではなく,Nikon F-501AFのシステムを引き継いで発達していった。
 Nikon F-501AFと同時に発売されたオートフォーカス用のレンズは,標準ズームレンズ35-70mm F3.3-4.5,望遠ズームレンズ70-210mm F4と標準レンズ50mm F1.8の3本だけしかなかった。しかし,すでに所有しているレンズでもオートフォーカス撮影に使いたいというケースはある。Nikon F-501AF用にも,オートフォーカス用テレコンバータが用意された。それが,TC-16ASである。

Nikon F-501AFが発売されて以降,オートフォーカスレンズのラインアップも充実していった。そうなると,TC-16ASの存在価値も薄れていく。TC-16ASが対応するカメラは,F-501AFのほかには,F-801,F90,F90X,F4,F5,F6といった一部の上位機種に限定されるものになった。

現在の,ニコンのディジタル一眼レフカメラでは,ほとんどの機種でTC-16ASが動作しない。それらの機種でもTC-16ASでオートフォーカス撮影をするためには,TC-16ASを改造する必要がある。その方法は,インターネット上で広まっており,実際に改造して撮影を楽しんでいる人も少なくないようだ。
 ところが,ごくわずかだが,TC-16ASが動作するディジタル一眼レフカメラが存在する。

1つは,Kodak DCS 460だ(2016年4月1日の日記を参照)。
 Kodak DCS 460というのはディジタルバック部分の名称であり,カメラ本体は,Nikon F90あるいはF90X(実際にはアメリカ向け仕様のN90,N90s)なので,そもそもTC-16ASの対応機種である。おそらく,Nikon F-801(N8008)を利用する,Kodak DCS 200も同様であろう。

さらに,FUJIX DS-505Aでも,TC-16ASが動作する(2016年3月16日の日記を参照)。FUJIX DS-505やDS-560など,同じシリーズの他機種でも,同様であると思われる。

そして,ディジタル一眼レフカメラNikon D1は,TC-16ASでオートフォーカス撮影ができない仕様になっていた。そのため,それ以後に発売されたディジタル一眼レフカメラは,すべてが,TC-16ASでのオートフォーカス撮影には対応していない,と思いこんでいた。
 ところが最近,そうではないことに気がついた。Nikon D2シリーズとNikon D200は,TC-16ASでのオートフォーカス撮影に対応していたのである。YONGNUO YN 40mm F2.8Nのオートフォーカスが動作するかどうかは,どういう条件に左右されるのか。各機種のさまざまな対応を確認しているときに,たまたま気がついた(2018年11月13日の日記を参照)。

 

Nikon D2XでもTC-16ASが使えるというのならば,さっそく試してみたい。

Nikon D2X, TAMRON SP 90mm F2.5 + TC-16AS

マスターレンズとしては,TAMRON SP 90mm F2.5 (52B)を使った。本来は手ごろで使いやすい中望遠レンズであるが,TC-16ASを併用することで焦点距離は144mmとなり,さらにNikon D2Xの撮像素子はいわゆるAPC-Sサイズなので,写る範囲はさらに狭い200oレンズ相当のものになる。それでもNikon D2Xのオートフォーカス能力に頼ることで,手持ちでもなんとか写し止めることができる。

Nikon D2X, TAMRON SP 90mm F2.5 + TC-16AS

TC-16ASを併用しても,TAMRON SP 90mm F2.5に特有のなめらかなボケは健在だ。
 TAMRON SP 90mm F2.5はボケが美しいのだが,これはあくまでもピントがシャープであることで,はじめて魅力的に見えるものである。ピントをきちんとあわせてこそ,ボケも活きる。三脚を立てて,動かない被写体をしっかりと撮りたい。一方で,オートフォーカスの能力に頼れば,少々風が吹いているときでも,なんとか撮れてしまうこともある。それならば,オートフォーカス化されたTAMRON SP 90mm F2.8を買えばいい,と言われそうだが,以前に少し借りて使った経験では,旧型のF2.5ほどの美しさを感じなかったのである(2018年5月23日の日記を参照)。
 それでもまあ,いずれはあらためて経験する必要はあるのかもしれない。


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