2018年09月27日(木) 天気:晴
一眼レフカメラにセットされるものは,標準レンズか?ズームレンズか?
多くの一眼レフカメラは,レンズ交換などを含んだシステムとして製品が展開されている。平たく言ってしまえば,一眼レフカメラの特徴は,豊富な交換レンズを利用できることである。もちろん,レンズ交換ができないタイプの一眼レフカメラが存在していることはじゅうぶんに承知しているので,その点についてのツッコミは,今日のところはご遠慮いただきたい。
レンズ交換ができる,ということは,ボディとレンズとを別々に買うことができることでもある。これはそのまま,ボディとレンズの両方を買わなければならない,と言いかえることもできる。
はじめて買うときには,ボディだけを買っても,レンズだけを買っても,写真を撮ることはできない。ボディもレンズも,どちらも買う必要がある。そこで,ボディとレンズのセット販売もおこなわれてきた。
最近の一眼レフカメラでは,ボディと標準ズームレンズとがセットになっているものが多い。最近では,レンズを付属したセットは「レンズキット」という名称で販売されるようになったせいか,そのような標準ズームレンズは「キットレンズ」とよばれることもある。「キットレンズ」は,メーカーとしても力を入れているようで,価格のわりには侮れない性能を示すと評価される傾向がある。「レンズキット」として大量に販売されることが期待できるので,薄利多売を狙えるのであろう。そのほか,ユーザがはじめて手にするそのメーカーのレンズという位置づけなので,ユーザによい印象を与えたい,という狙いもあるようだ。
一眼レフカメラがオートフォーカスになったころから,キットレンズとして標準ズームレンズがセットされることが目立つようになってきた。しかしそれ以前には,標準ズームレンズではなく,50mmくらいの標準レンズがセットされているものであった。そのころはまだ,ズームレンズというものは,大きく重く高価で,画質の面でも不利な存在であった。はじめて自社のレンズを買ってくれるユーザに,安価で,コンパクトで,性能のよいレンズを手にしてもらうためは,50mmくらいの標準レンズをセットにすることは,理にかなっている。
標準レンズのかわりに使えるという意味も含めて,はじめて商品化された標準ズームレンズとしては,ニコンのZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5というものがある。これは,50mmをはさんで短焦点側にも使え,ズーム比が2倍あり,F3.5という明るさも確保していた。コンパクトで安価なレンズであったが,画質面の評価がやや低いものだった(2016年4月19日の日記を参照)。
それでも標準ズームレンズは,コンパクトになり性能をあげていった。そして1978年,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.61でついに,一眼レフカメラにズームレンズをセットして販売する形態が見られるようになった。そのカメラは,FUJICA AZ-1で,セットされたズームレンズはFUJINON Z 43mm-75mm F3.5-4.5というものである(2007年4月28日の日記を参照)。これが,日本ではじめての「一眼レフカメラ+ズームレンズキット」である!
…と,思っていたのだが,その後,友人に恐るべき事実を教えられた。
日本ではじめての 「一眼レフカメラ+ズームレンズキット」は,Nikon FとZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5である。
その証拠として,セット価格が掲載された日本カメラショー「カメラ総合カタログ」も見せていただいた。
日本カメラショー「カメラ総合カタログ」は,いずれコンプリートしたいと考えている。地道に集め続けて,先日ようやく,1960年のvol.1以降を発行年単位でほぼそろえることができた(2018年8月27日の日記を参照)。
しかし,見あたらないのである。
Nikon FとZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5のセット販売を記載した「カメラ総合カタログ」が,見あたらないのである。
考えられることは,たった1つだ。このセット販売が記載されたのは,ほんの一瞬であるということ。1990年ころまでは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」は,年に2〜4冊くらい発行されていた。だから,「発行年」をコンプリートするだけでは,カバーしきれない情報があるということだ。
そして未入手の巻を引き続きさがし求め,ようやく目的の情報に到達した。
そう,これをさがしていたのだよ。
このときニコンF「ボディ」の価格は44,500円である。そして,「ズームオート43〜86mmF3.5付き」の価格は,77,500円だ。「ニッコールオート50mmF1.4付き」の68,500円にくらべると,かなり高価なものである。また,「マイクロオート55mmF3.5付き」というセットも用意されていたことも,注目できるだろう。
さて,このセット価格が掲載されていたのは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.21 (1965年)である。
同じ1965年版でも,先に入手していたvol.20には,ズームレンズやマイクロレンズ付きのセット価格は掲載されていなかった。また,vol.24 (1966年版)以降にも,見られないものである。もし,このセットが掲載されていたのがvol.21だけだったなら,まさに掲載期間は一瞬だけとなる。ともあれ,vol.22,vol.23には,どのようなレンズ付きセットが掲載されていただろうか,気になることは増える一方なのであった。
|