2018年09月25日(火) 天気:曇
「デジタルフォトテクニック」は 「フォトテクニックデジタル」じゃないよ Kodak DCS 460に関する記事を求めて
Kodak DCS 460は,はじめて600万画素の撮像素子を搭載した,一眼レフタイプのディジタルカメラである。Nikon F90 (実際には輸出モデルのNikon N90,後期モデルでN90sを使用)のボディに,Kodakのディジタルバックを組みあわせた製品であり,ずいぶんと背の高いカメラとなっている。本体に充電式電池が内蔵されていて交換はできず,撮影した画像を確認するための液晶モニタもないなど,使いにくい面の多いディジタルカメラである。それでも,シャッターレリーズボタンを押すだけで,3060ピクセル×2040ピクセルのカラー画像が得られるのだから,当時としては画期的な存在だったことは間違いない。
それだけに,販売価格もたいしたものであり,一般の人が趣味のために気軽に買えるようなものではなかった(2016年1月14日の日記を参照)。だからもっぱら,業務用として使われていたようである。そのせいか,最近のカメラ雑誌等で,古いディジタルカメラに注目したような特集があっても話題にされることはないようで,紹介記事を見かけることがない。また,流通経路が業務用に特化していたのだろうか,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されることもなかった。
発売当時,Kodak DCS 460は,どのように紹介されていたのあろうか。当時の雑誌あるいはムックのようなものを探してみることにした。
写真工業出版社が発行した「デジタルフォトテクニック2 デジタルが開く新しい写真の世界」は,ずっと以前に購入していたものである。
発行は1999年3月だから,Kodak DCS 460はすでに発売されている。そして表4(裏表紙)にはFUJIX DS-505Aの広告が掲載されている。業務用モデルであっても,扱っている可能性がありそうだ(もっとも,FUJIX DS-505Aは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されていた)。
記事を一通り読んでいくが,Kodak DCS 460を紹介するようなページは,この本にはなかった。
ところで,この本は「デジタルフォトテクニック2」である。ということは,その前の巻があったはずだ。その巻には,Kodak DCS 460が紹介されている可能性がありそうだ。そこで,amazonで,「デジタルフォトテクニック」を検索する。すると,表示されるのは,玄光社の雑誌「フォトテクニックデジタル」ばかりである。
ちがう,今日は,お前に用事があるんじゃない。
気をとりなおして,「写真工業 デジタルフォトテクニック」で検索する。すると,写真工業出版社の「デジタルフォトテクニック2」「デジタルフォトテクニック3」「デジタルフォトテクニック4」が表示された。そうだ,それでいいのだ。しかし,「デジタルフォトテクニック1」あるいは「「デジタルフォトテクニック」と思われる本が,表示されない。
検索のキーワードを「写真工業出版社 デジタルフォトテクニック」にすると,ようやくそれらしきもの「デジタルフォトテクニック 脱暗室宣言」が表示された。だが,それが求めているものであるかどうかの,確信がもてない。「デジタルフォトテクニック2」「デジタルフォトテクニック3」「デジタルフォトテクニック4」は,統一的な表紙デザインなので,シリーズであることが容易にわかる。しかし「デジタルフォトテクニック 脱暗室宣言」の表紙は,デザインがまったく異なっている。さらに「(Photo Expert)」というシリーズ名のような表記もついている。しかも,amazonのサイトでは,発行年月が「2000/7」だ。「デジタルフォトテクニック2」の「1999/3」よりも後に発行されているとは,どういうことか?
ほかのWebサイトでも検索したところ,「デジタルフォトテクニック 脱暗室宣言 (Photo Expert)」の発行年月は1995年12月であることがわかった。amazonでの「2000/7」表記は,最終改訂版の発行年月をあらわしている可能性がある。それならば,初版本を入手したい。
amazonでの出品者に問い合わせ,1995年12月版であることが確認できたものを購入した。
本文には,Kodak DCS 420の紹介記事があった。もちろん,期待通りにKodak DCS 460にも言及されている。この記事によると,「ニコンとの直接の協力関係はなく,コダックが単にニコンのボディを改造してデジタルカメラを作っているだけだそうだ。」とのことだ。
「改造」というと大仰なものに聞こえるかもしれないが,改造されたポイントはたぶん4箇所だけだと思う。
1つは,裏蓋を撤去していること。もっとも,Nikon F90の裏蓋は,そもそも交換式である。データバックやマルチコントロールバックなどに交換することができるようになっている。だから,裏蓋を撤去していることは,改造というようなレベルのものではない。
改造らしい改造がされている箇所としては,ファインダースクリーンがある。Kodak DCS 460の撮像素子は,ライカ判より少し小さい(ただし,いわゆるAPS-Cサイズよりは大きいので,便宜的にAPS-Hサイズとよばれることもある)ため,ファインダーに見える範囲がすべて写るわけではない。そこでファインダースクリーンに,写る範囲を示す線が引かれているのである(2017年10月22日の日記を参照)。
もう1つは,まさに改造と呼んでよい箇所だと思うが,Nikon F90のフィルム室内にある小さな突起が撤去されていることがある。これを撤去しないと,撮像素子が傾いて,片ボケになってしまう(2017年11月20日の日記を参照)。
4つめの改造ポイントは,電池ホルダである。Nikon F90本体への電源は,デジタルバックであるKodak DCS 460に内蔵されたバッテリーから供給される。そのためにNikon F90の電池ホルダには穴があけられ,Kodak DCS 460からのコードが直結されている。
逆に言えば,Kodak DCS 460からNikon F90の部分を分離し,Nikon F90本来の機能を回復させるためには,少なくとも裏蓋と電池ホルダが必要になるのである。
ともあれ,Kodak DCS 460に関する雑誌記事等が,発売当時にはそれなりに出回っていたことが確認できたわけだ。これで,すっきりしたのであった。
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