撮影日記


2024年06月02日(日) 天気:晴

200万画素でも侮れない描写 Nikon Coolpix 800

1995年にCASIO QV-10が発売されてしばらくのあいだは,数万円からせいぜい10万円程度で購入できるデジタルカメラは,撮像素子の画素数が30万画素級のものばかりで,ほとんどが固定焦点式の簡便なものであった。そんな時期に発売されたOLYMPUS C-1400Lが出力する画像には,パソコンのディスプレイいっぱいに表示できるだけの画素数があり,色もほどほどに鮮やかで,じつに高品位なものに感じられたものである。パソコンのディスプレイに表示するにはじゅうぶんで,プリントする場合でもL判くらいであれば問題はない。これ以上の画質がほしいなら,四つ切サイズくらいまで問題なく出力可能な600万画素級の撮像素子が必要だろうと考えていた。
 だからこの後の,ひんぱんにモデルチェンジがおこなわれるたびにすこしずつ撮像素子の画素数が増えていった動きには,いらだちも感じていた。そのころの雑誌で「画素数よりも階調が重要,画素数が少ないほど1つ1つの画素が大きく,階調が豊かになる」とする評価も見られたが,おかまいなく画素数は増えていく。そのような画素数競争を眺めるのに辟易していたこともあって,200万画素級や300万画素級のデジタルカメラには,これまであまり注目してこなかった。無理に追いかける必要などなかったからである。
 だから,Nikon Coolpix 800というコンパクトデジタルカメラを入手したのは,まったくの気まぐれだった。きっかけは,たまたま安価なものを見てしまった,というだけのことである。

Nikon Coolpix 800は,1999年に発売された。撮像素子は200万画素級のもので,搭載されたレンズは2倍ズームレンズである。広角側ではライカ判のカメラで38mmレンズを使ったときに相当する範囲が写り,望遠側では76mmレンズを使ったときに相当する範囲が写ることになっている。オートフォーカス一眼レフカメラの初期によくセットになっていた,35-70mmの標準ズームレンズと同じような感覚で使えると考えればよさそうである。そのクラスのレンズは,最短撮影距離が短めであることが多いが,Coolpix 800も最短撮影距離は0.3mということになっており,そのあたりも似たような感覚で使えそうである。
 この当時のニコンのコンパクトデジタルカメラとしては,半年ほど先に発売された,Nikon Coolpix 950という機種が有名である。レンズ部分が回転するスイバル機構,当時としては画質が多い部類にはいる200万画素級の撮像素子,搭載されたレンズはNIKKORを名乗っており,画質も優れているという評価がよく聞こえていた。さらに,ボディの外装には金属が用いられていたということも含めて,かなりよい評判を集めていたようである。
 Nikon Coolpix 800は,それにくらべると評判をあまり聞かない,地味な機種である。それだからこそ,安価に入手できたのかもしれない。Nikon Coolpix 950にくらべるとレンズのスイバル機構はなく,ごくふつうのカメラらしい姿をしている。搭載されたレンズは,Nikon Coolpix 950が3倍ズームレンズであるのに対し,Nikon Coolpix 800は2倍ズームレンズである。しかし,Nikon Coolpix 950と同じく,レンズにはNIKKORという銘がつけられている。その写りには,期待したいところである。

Nikon Coolpix 800

この距離でもピントがしっかりとあっている。

Nikon Coolpix 800

画面全体が白い場合でも,露出やホワイトバランスなど大きな問題はなさそうに見える。

このように,実際に撮ってみると期待以上に,しっかりとした写りを見せてくれた。これらを撮るにあたって,とくに設定を変えるなどの調整はしていない。設定などを気にしなくても,オートで安心して撮ることができそうである。これまで,200万画素級のデジタルカメラは,いわゆる画素数競争のあだ花みたいなものであると感じてきていた。だから,どちらかというとその存在を軽視してきたものであるが,どうやら侮れない存在であるらしいことがわかってきた。あらためて使い込んで,評価を改める必要がありそうだ。なんといっても,いかにもカメラであるというスタイルに,当時のニコンのカメラを象徴する赤いラインがかっこいい。


← 前のページ もくじ 次のページ →