撮影日記


2023年12月14日(木) 天気:曇のち雨

重い照度計

これまでにいろいろとご提供いただいた結果,2台のGOSSEN Lunasixを入手することができた。しかもこれらはたまたま,前期型と後期型とに分類できるようなものだったのである(2023年12月10日の日記を参照)。GOSSEN Lunasix(ゴッセン・ルナシックス)は,CdSという素子を使う(そのために電源が必要である)露出計である。それより以前には,セレン光電池を使うGOSSEN Sixtomat(ゴッセン・シクストマット)という小型の露出計が発売されていた。これについては,あわせて4台を入手することになった。表面の部品が破損していたりするものもあるが,これも細かく見ると3つくらいに分類できそうである。その相違点や前後関係などが見えてきたら,またあらためてまとめようと思う。

さて,いただいた機材のなかには,こういうものも含まれていた。ともかく重いので計ってみると,500gをこえている。

このように閉じた状態のままでは,この装置がいったいなんなのかよくわらない。しかし,開いてみれば,受光部のような円形の部分とメーターがあるので,どうやら露出計らしい装置であることがわかる。
 それにしても,妙に大きく,そして重い。受光部とメーターがあるとはいえ,どことなく露出計らしさがない。よく観察すると,メーターの目盛りには,F値やシャッター速度などの数値がない。少なくとも,写真撮影用の露出計ではなさそうだ。そして,メーターのところに「LUXMETER」と書いてあり,メーターの目盛の単位は「lx」である。つまりこれは,明るさを「lx(ルクス)」単位で計測する,照度計というものである。
 照度とは,実際に照らされている明るさを示すものである。たとえば,インテリアやディスプレイ(装飾)などの現場で,それぞれの場所ごとに適切な明るさで照らされるように調整をするために使われるものとのことである。使い方としては,入射光式の露出計と同じようになるわけだが,写真撮影用の露出計は測定結果を絞りとシャッター速度の組み合わせで読み替えられるようになっているのに対し,照度計は測定した明るさをそのままルクス単位で読み取るようになっている。

メーターのところには,筆記体の「Toshiba」というロゴがある。これは,東芝の製品であることを示している。しかし,その下にある「LUXMETER」のさらに下にある文字は,「TOKYO KOGAKU KIKAI K.K.」と書かれている。東芝の製品であれば「TOKYO SHIBAURA DENKI K.K.」などと書かれていそうなものであるが,これはなにを意味しているのだろうか。
 まず,この製品はいつごろのものなのかを確認したい。写真用品ではないので,日本カメラショーや,写真用品ショーのカタログ,あるいは日本カメラ「カメラ年鑑」などには掲載がなさそうで,そこからたどることはできそうにない。
 そこで,裏面に書かれている「7号形光電池照度計」をたよりに国立国会図書館デジタルコレクションを検索したところ,「7號型照度計に就いて (馬場新二)」(*1)という文書がヒットした。掲載がある媒体は,東芝が発行する「東芝レビュー」であり,馬場新二氏は「柳町工場技術部」とだけ書かれているから,おそらく川崎の柳町にある東芝の事業所のことであろう。馬場新二氏も東芝の中の人ということであり,したがってこの装置は,1953年ごろまでに東芝で完成された装置であると考えてよさそうである。

さて,メーターの下に書かれている「TOKYO KOGAKU KIKAI」とは,どういう関係にあるのだろうか。装置の裏面を見ると,「東京芝浦電気」ではなく,「東京光学機械株式会社」と書かれている。これは,現在のトプコンが1989年まで使っていた社名である。Webで公開されているトプコンの概要(*2)を見ると,「東京芝浦電気(株)(現(株)東芝)の関係会社となり、電気計測器等の生産を開始」と書かれている。関係会社になる前の,製品の開発や製造の役割については読み取れないが,「Toshiba」のロゴと「東京光学機械」の名前とが共存しているということは,この個体は関係会社になった1960年以降に製造,出荷されたものと考えてよいだろう。

この照度計の受光部は,大きく折り返すこともできるようになっている。そのため,メーターを見ながらの測光には,たいへん好都合である。現在,明るさに応じて振れ幅が変わるなど,メーターは動いている。しかし,精度についてはどの程度まで保たれているかはわからない。
 どのみち,使うことなく保管するだけになるのだろうとは思われるが。

*1 7號型照度計に就いて(馬場新二) (「東芝レビュー 第8巻第7号」(東芝技術企画部,1953年7月)(国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/3253730/1/26

*2 トプコンの歩み 1932〜1969年 (株式会社トプコン)
https://www.topcon.co.jp/about/history/vol01/


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