撮影日記


2023年12月10日(日) 天気:晴

ゴッセン・ルナシックスの前期型と後期型

この夏にいろいろと送っていただいた,大きな荷物(2023年8月16日の日記を参照)の内容の整理を再開している。今回も露出計がいろいろと含まれていたが,そのうちの1つに,GOSSEN Lunasixがあった。

ゴッセンは1919年に創業したドイツのメーカーで,さまざまな露出計を発売してきたことがよく知られている。Lunasixは,それまでのセレン光電池にかわってCdSという素子を使う電気露出計である。セレン光電池は,光に応じて電力が発生する素子である。その電力によってメーターの指針を振らせるなどして,測光結果を表示する。CdSは,光に応じて抵抗値が変化する素子であり,それ自身には発電能力はない。そのため,メーターの指針を振らせるにも,電源が必要になる。そのかわり,セレン光電池では難しかった暗いところでも,測光ができるようになった。
 GOSSEN Lunasixは,指針が示す値を読み取り,その値にあわせてダイヤルを回すと,絞りとシャッター速度の値がわかるようになっている。このたびいただいたGOSSEN Lunasixはそのダイヤルが外れてしまっていたが,電池を入れると明るさに応じて指針が振れる状態であった。ただし,必要な電池は1.35Vの水銀電池(H-DあるいはMR9とよばれるもの)であり,1.55Vの酸化銀電池などを使うときには電圧を調整するアダプタが必要である。

じつは,以前に多くの露出計などをいただいたときにも,GOSSEN Lunasixは含まれていた。つまりこれは,2台目のGOSSEN Lunasixである。あらためて動作を確認し,きちんと動くほうだけを保管しようと考えた。必要があれば,部品を移植して外見の傷みを隠すなどしてもよい。
 ところが,2台のGOSSEN Lunasixには,いろいろな相違点があった。

まず,気がつくのは測光ボタンが違うことである。

2台目のLunasixは,高輝度時用と低輝度時用の独立した2つの測光ボタンがついているのに対し,1台目のLunasixはシーソー状のボタンになっている。そして,メーターの目盛にも違いがあり,2台目のほうは高輝度時用と低輝度時用のスケールが並んでいるのに対して,1台目のほうはボタンを押しこんだ側に応じてスケールが切り替わるようになっている。

動作を確認するために電池を入れようとすれば,使う電池が違うことにも気がつく。
 2台目のほうは水銀電池1個(表記は「Batt. Mallory RM625R」)を使うようになっているのに対して,1台目のほうが水銀電池2個(表記は「2 Batt. Mallory PX13」)を使うようになっている。

そこで,eBayなどに出品されているGOSSEN Lunasixの画像を観察して,シリアルナンバーを収集してみた。その結果からは,測光ボタンが「独立した2つ」になっているものが前期型,「シーソー型」になっているものが後期型に該当するように思われる。

GOSSEN Lunasixのシリアルナンバー
シリアルナンバー測光ボタン形状使用する電池の表記備考
45572つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
137442つボタンBatt. Mallory RM 625R入手済
295602つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
353952つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
542522つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
642542つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
649202つボタンBatt.Mallory PX 13eBayで目撃
88730シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
89878シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
98917シーソー型2Batt. Mallory PX 13入手済
99944シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
105431シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
109640シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
116842シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
128931シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
151989シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
180604シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃
183561シーソー型2Batt. Mallory PX 13eBayで目撃

 PX 13およびRM 625 Rはどちらも1.35Vの水銀電池で,H-DあるいはMR9と同じサイズのものである。現在,水銀電池は発売されていないが,同じサイズのアルカリ電池を入手することは可能である。ただし,電圧の違いが,測光結果に影響をあたえる。そのため,実際に使用する場合には,酸化銀電池電圧を調整するアダプタを組み合わせて使用することが望ましい。
 GOSSEN Lunasixの発売時期は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」や日本カメラ「カメラ年鑑」などで確認することはできそうにない。「アサヒカメラ」や「写真工業」などの雑誌では,1962年あたりから広告が掲載されているようなので,発売時期もそのころだと考えられる。ともかく,電源を必要とするタイプの電気露出計としては,早い時期に発売されたものの1つといえる製品だろう。


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