2020年07月13日(月) 天気:雨 夕方には大雨警報発令
テールボードカメラを使えるようにする レンズボードとバックアダプタをつくる
テールボードカメラとよばれる形態のカメラは,19世紀末には出現している,ごく古いスタイルのカメラである。これは,前枠と後枠とが蛇腹で結ばれており,折りたためるようになっていることから,組立暗箱の一種ともいえる。一般的な組立暗箱は,ベースに対して前枠と後枠をそれぞれ折り重ねてたたむようになっている。それに対してテールボードカメラでは,前枠はベースに対して垂直に固定されている。後枠が動くようになっており,前枠と接触させた状態で,ベースをたたむようになっているところが,異なっている。
先月,無銘のテールボードカメラを入手した(2020年6月17日の日記を参照)。残念ながら,制作年代や製造国などを示す手がかりがまったくない。もしかすると19世紀につくられたカメラかもしれないし,もしかするとずっとあたらしい時代につくられたものかもしれない。
ともあれ,こういう古いタイプのカメラは,撮影ができるようにしておきたいものである。
入手時の状態は,すこぶる悪いものであった。まずは,全体の掃除をおこなう。容易にはずせる部品は,はずして汚れをよくふきとっておく。また,分解することで,隅に詰まった埃も,かなり取り除くことができた。その結果,後枠は入手時にくらべて,ずいぶんとスムースに動くようになった。
写真を撮るためには,レンズとフィルムが必要である。レンズとフィルムは,光をさえぎる空間で結ばれる必要がある。この空間が,カメラ本体となる。つまり,このテールボードカメラ本体に,レンズとフィルムを取りつけられるようにする必要がある。
レンズボードとしては,単にまるい穴があけられている板が装着されていた。
このままでは,どんなレンズも装着できない。ここで,2つの方法を検討した。
1つは,このレンズボードに適当な金具を取りつけて,レンズを固定したリンホフタイプのレンズボードを取りつけられるようにする方法である。工作が比較的簡単に済むような気がするし,リンホフタイプのレンズボードに取りつけたレンズはほかの大判カメラでも使いまわせるので,なにかと便利である。問題点は,もともと付属していたレンズボードに,大きな傷をつけてしまうことである。
もう1つの方法は,このレンズボードと同じようなボードを作成し,そこにレンズを取りつけられるようにする方法である。工作が面倒になるが,もともと付属していたレンズボードを傷つけずに済む。
そんなとき,あたらしくレンズを1つ入手した。
SchneiderのSymmar 210mm F5.6である。このレンズには,白い文字で「1:5.6/210」という数値のほかに,緑色の文字で「1:12/370」という数字が記されている。これは,前玉(シャッターより手前側にあるレンズ群)をはずして後玉(シャッターより奥にあるレンズ群)だけで運用するときの,焦点距離と開放F値をあらわしている。このような運用方法は,「ジンマーの前玉はずし」として,知られている。(この画像では見えていないが)絞りの目盛にも,白い数値と緑色の数値が記されていて,前玉はずしで撮影するときの絞り値がわかるようになっている。これは,「ジンマーの前玉はずし」を体験したくて入手したものであるが,付属していたレンズボードがリンホフタイプのものではなく,ずいぶんと大きなものなので,すぐには使えないでいた。
そこで,このレンズ専用に,レンズボードをつくってみることにした。まずは,四つ切1/2判の撮影で使っている,M.S.K.の組立暗箱にそのまま使えるサイズのレンズボードをつくった。これで,いつでも「ジンマーの前玉はずし」を体験できる。
つぎに,作成したレンズボードを,このテールボードカメラで使えるようにするアダプタをつくる。これらのボードやアダプタには,厚さ3mmの木の板を利用している。
そして,適当な金具を使って固定できるようにすれば,いちおうの完成となる。
レンズが使えるようになったなら,つぎはフィルムを使えるようにする必要がある。
このテールボードカメラに装着されていたバックアダプタには,カビネ判の乾板撮枠が使えそうに見えたが,実際に装着してみようとすると,ぶかぶかで使えないことがわかる。
組立暗箱で使われる乾板撮枠は,統一規格でつくられているように見えるが,実際には微妙に大きさが異なる場合がある。組立暗箱本体(バックアダプタ)とセットで入手した撮枠でなければ,うまくはまらないことがある(2020年7月04日の日記を参照)。そこで今回は,以前から手元にあった,無銘のカビネ判の組立暗箱のバックアダプタを利用することにした。
これには,カビネ判の乾板撮枠が3枚セットになっていたからである。撮枠が3枚あれば,撮影にはまあ困らないだろう。どのみち,印画紙を紙ネガとして撮影することになるので,いちどにたくさんの撮影は難しいのだから。
厚さ3mmの板と,厚さ6mm板とを適当な幅に切ったものを組みあわせて,テールボードカメラの後部にぴったりはまる枠をつくる。その上に,無銘組立暗箱のバックアダプタがぴったりはまる枠をつけくわえて,適当な金具で固定できるようにした。
これで,カビネ判の乾板撮枠を利用した撮影ができるようになる。
写真を撮るために必要な,レンズとフィルムが使えるようになった。さらに,きれいな写真を撮るためには,露出とピントを調整できるようにする必要がある。露出については,レンズにシャッターと絞りが内蔵されているから,問題ない。ピントを調整するには,レンズとフィルムとの距離を自由に調整できるようにする必要がある。これについては,フィルムを取りつける後枠が自由に動くようになっているから,この機構を利用すればよい。だから必要となるのは,前枠と後枠を結ぶ蛇腹が壊れているのを補修することである。
今日も夕方から,大雨警報が広島市に発令された。先週からほぼ毎日のように,大雨警報が発令されている。まず,7月6日未明に発令された大雨警報が解除されたのは,7月8日の朝のことである。7月6日の大雨というと,ちょうど2年前に,大阪で重要な仕事があるのに新幹線が止まってしまったことを思い出す(2018年7月6日の日記を参照)。7月8日にいったん解除されたものの,7月9日の朝にふたたび,大雨警報が発令された。これが解除されたのは,7月11日の朝のことである。そしてさらに,今日(7月13日)の夕方に大雨警報が発令された,という状況なのである。
雨が続いて撮影がむずかしいときは,カメラの整備や工作をするのに,もってこいである。
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