撮影日記


2020年07月04日(土) 天気:雨

リトレックビューはたくさん売れたの?

大判カメラを発売する会社の1つに,株式会社ウイスタ(WISTA)がある。ボディが木製のものと,ボディが金属製のものとをラインアップしている。
 木製で4×5判のものには,FIELD 45という名称が与えられている。使っている木材の種類によって複数のモデルが用意されており,このシリーズをまとめて「フィールドカメラ」と称しているが,つまりは組立暗箱である。また,8×10判のものもラインアップしていた。
 金属製で4×5判のものには,WISTA 45という名称が与えられている。このシリーズは「テクニカルカメラ」と称しているが,レンズを取りつける前枠とフィルムを取りつける後枠が蛇腹でつながれており,撮影しないときにはコンパクトに折りたためるようになっているので,基本的にはこれも,組立暗箱と同じようなものである。金属製ボディのため,木製の組立暗箱よりは頑丈であるが,どうしても重いものになってしまう。
 WISTAではこのほか,モノレールタイプのカメラもラインアップしていた。

WISTA 45の発売は,1972年とのことである。その発売前には,Rittreck View(リトレックビュー)という5×7判の金属製組立暗箱が主力商品だったという(*1)。

Rittreck View一式

2年ほど前に,四つ切1/2判での広角レンズとして,FUJINONの180mmレンズと120mmレンズとを貸していただいた(2018年10月21日の日記を参照)。そのうち,180mmレンズで撮影した成果をまとめたものとあわせてレンズをお返ししたところ,こんどはRittreck View一式をお譲りいただけたのである。
 Rittreck Viewは5×7判サイズのカメラなので,4×5判の組立暗箱にくらべてずいぶんと大きい。(5×7判とほぼ同じ大きさである)カビネ判サイズの組立暗箱にくらべても,ずいぶんと大きい。そして,金属製の頑丈なボディであり,木製の組立暗箱にくらべてずっと重いのである。
 どうしても頼りなさを感じる木製の組立暗箱にくらべると,1つ1つの動きがしゃきしゃきしていて,安心感がある。

Rittreck Viewを組み立てた

譲っていただいたセットには,複数のレンズボードとバックアダプタが含まれていた。レンズボードの大きさは独自のものであるが,そのうちの1枚は,リンホフボードを取りつけられるようになっていたので,手持ちのレンズをすぐに利用できる。
 受け取ったとき,Rittreck Viewには,カビネ判の乾板撮枠用のバックアダプタが装着されていた。

カビネ判アダプタ

「オリエンタル」(現在のサイバーグラフィックス(*2))の銘板(*3)がついている。
 手元にあるカビネ判の撮枠が使えるか試してみたが,OKUHARAのバックアダプタ用の撮枠も,無銘暗箱のバックアダプタ用の撮枠も,どちらも撮枠のほうが微妙に大きくて,はいらない。

OKUHARA・無銘暗箱のアダプタと撮枠
(上)OKUHARAの銘板のついたバックアダプタ用の撮枠。
(下)無銘組立暗箱用のバックアダプタ用の撮枠。
どちらも,このORIENTALのバックアダプタには,はいらない。

Art FIELD CAMERA(2020年6月22日の日記を参照)用の撮枠は,使えそうである。しかし,この撮枠は1つしかない。実際にこれで運用するのは2枚撮るごとに詰め替えることになるので,とても面倒である。

Art FIELD CAMERAの撮枠は使えそう
Art FIELD CAMERA用の撮枠は,やや小さいが,使えなくはなさそうだ。

セットには,4×5判用のバックアダプタも含まれていた。これは国際規格のフィルムホルダ用のようで,問題なく使えそうである。

シノゴ用は国際規格

しかし,Rittreck Viewは高機能で頑丈なカメラであるが,大きくて重い。カビネ判や4×5判で撮るならば,もっと軽快なカメラはいくらでもある。だからもし,Rittreck Viewを使うならば,八つ切サイズで使いたい。

八つ切のバックアダプタ

これには,M.S.K.の銘板がついたバックアダプタ用の撮枠がちょうど使える。
 この八つ切サイズのバックアダプタは,Rittreck Viewの後部を伸ばして取りつけるようになっている。ここを四つ切1/2サイズのものにつけかえれそうに見えるが,かなりきつくつくられており,そのままでは交換できそうにない。

Rittreck Viewを発売したころは,株式会社ウイスタではなく,武蔵野光機株式会社という名称であった。武蔵野光機時代は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に商品を掲載していたが,その後,ウイスタの名称では「カメラ総合カタログ」に載らなくなった。そのため,武蔵野光機のリトレックというカメラはまったくの過去のもの,そしてあまり普及しなかったものだと思いこんでいた。
 しかしここ最近,インターネットオークションを眺めていると,ほぼ途切れずにいつも,Rittreck Viewが出品されている。ごくマイナーなカメラだと思っていたが,じつはそれなりにポピュラーな存在であるようだ。株式会社ウイスタのWebページ(*1)を見ると,「輪出を含め累計約1万代を生産」(「代」はおそらく「台」の誤変換),「国内の主な購入層はポートレイト主体の営業写真家」であったことがわかる。それなりの数が流通し,かつ,営業写真家が機材を更新したり廃業したりすることで,多くのRittreck Viewが中古品の市場を流通しているということのようだ。
 このWebページにはさらに,「4×5カラーの感材が急速に普及してきたのを受けてWISTA45の設計がスタート」とある。Rittreck Viewでも4×5判のカラーフィルムが使えるように,国際規格にあわせたバックアダプタが用意されていたということであろう。

*1 展示室 カメラ (株式会社ウイスタ)
https://www.wista.co.jp/show/camera/camera.html

*2 会社概要 (サイバーグラフィックス株式会社)
https://www.cybergraphics.co.jp/CGC_corporate.html

*3 OLIENTAL キャビネ暗箱 (Kan's Room)
http://kanscamera.sakura.ne.jp/hp7/html/p108.html


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