撮影日記


2019年10月24日(木) 天気:雨

スタジオデラックス 光球の互換性は?

セコニックが発売する「スタジオデラックス」は,入射光式の露出計である。
 カメラに内蔵されたTTL露出計などは反射光式の露出計であり,被写体で反射する光を測定する。それに対して入射光式の露出計は,被写体にあたる光を測定する。そのため,被写体の色や反射率などに左右されずに露出決定できるという特徴がある。
 入射光式の露出計には,受光部に白い半球状のものがとりつけられている。この部品は,光球とよばれている。現実の被写体は立体的なものなので,受光部が平板であるのではなく,半球状になっているのがよいとのことだ。光球は,1940年にアメリカのD. Norwood氏が特許を得た。そして,これを利用した「ノーウッド・ディレクター」という露出計が発売されるようになり,のちにSEKONICが製造にかかわるようになる(2019年9月1日の日記を参照)。そして,モデルチェンジを重ね,セコニック「スタジオデラックス」として発売が続いている。
 長年,多数が発売されてきたシリーズなので,中古品として流通するものも多く見かけるし,ときにはジャンク品として売られている場合もある。受光素子が劣化していたり,メーター部分の機械が摩耗していたりすると,さすがに使いものにはならないだろう。しかし,メーターはきちんと動くものの,光球が割れているあるいは光球が失われているという理由で,ジャンク品として売られているケースもある。
 光球だけを入手することができれば,これらのジャンク品を活用できるかもしれない。また,「スタジオデラックス」を実用している人にとっても,光球の予備が入手できるとなにかと好都合で,安心して使えるのではないだろうか。

まずは,セコニックのWebサイト(*1)を参照してみよう。
 現行モデルの「スタジオデラックスIII L-398A」については,部品として光球だけを購入できることがわかる。そして,光球は「L-398シリーズ共用」となっている。旧モデルの「スタジオデラックスII L-398M」や「スタジオデラックス L-398」でも使える部品ということだ。

●新旧「スタジオデラックス」の互換性

「スタジオデラックス」を名乗る露出計は,L-398シリーズだけではない。
 それ以前のモデルとして,L-28cおよびL-28c2も「スタジオデラックス」である。現行モデルL-398シリーズ用の光球は,L-28cシリーズで使えるだろうか。実際に装着して,たしかめてみよう。

L-398の光球(現行モデル)は,爪のかみあわせが異なるようだが,L-28cに装着することができた。

逆に,L-28cの光球をL-398(光球は現行モデルと同じ)に装着することは,できなかった。

左側がL-398の光球,右側がL-28cの光球である。
 L-28c用の光球のほうが,取り付け部がやや大きくて,L-398には装着できないのである。L-398の光球は,L-28cの開口部よりも小さいので,装着できるのである。小さいといっても,爪がなんとかかみあうので,不用意にはずれることもない。L-28cでは,イレギュラーな使い方ではあるが,L-398の光球を利用できるようである。

なお,L-28cとL-28c2の光球は,同じもののようである。

●「スタジオデラックス」と「スタジオS」との互換性

L-28cよりも前のモデルとの間では,光球の互換性はどうなっているだろうか。

左側は「スタジオS」の光球,右側は「スタジオデラックス L-28c」の光球である。
 一見して,はめこみ部分の構造がまったく異なることがわかる。

左側の「スタジオS」の光球はめこみ部は,円形の穴が開いているだけである。
 それに対して右側の「スタジオデラックス L-28c」の光球はめこみ部には,光球につけられた爪がはまる切り欠きが設けられている。

また,光球はめこみ部の穴の大きさが,そもそも異なっている。「スタジオS」のほうがいくぶんか小さいため,「スタジオS」の光球は「スタジオデラックス L-28c」にすっぽりはまる。ただし,爪の切り欠き部などにすきまがあるので,測光にはよくない影響が出そうである。

逆に,「スタジオデラックス L-28c」の光球は大きいので,「スタジオS」には,まったくはまらない。

左側はセコニック「スタジオS」,中央はセコニックが製造したBROCKWAY CAMERAの「ノーウッド・ディレクター Model-S」,右側はDIRECTOR PRODUCTSの「ノーウッド・ディレクター Model-C」である。「スタジオS」およびそれ以前に発売された,「ノーウッド・ディレクター」各モデルとの間では,光球は共通に使えるようである。
 ただし,中央のものについては,ほかにくらべてやや光球のはめこみがきついものになっている。工作精度にやや問題があったのか,これくらいは個体差として気にしないべきなのか。

●まとめ

「スタジオデラックス」の光球の互換性についてまとめると,つぎのようになる。

  本体
スタジオSシリーズ L-28cシリーズ L-398シリーズ
光球 スタジオSシリーズ × ×
L-28cシリーズ × ×
L-398シリーズ ×

L-28cシリーズの本体に,L-398シリーズの光球を装着することは可能だったので,この表では「△」とした。実際に使う場合は,測光結果の補正などが必要になるかもしれない。なお,この表の結果にしたがって使用した場合に,なんらかの問題や損害が生じても,当方は責任を負わない。あくまでも自分自身の責任で使用すること。

実際には,L-28cより前の「スタジオS」あたりの製品になると,保管状態がよほどよくないかぎり,受光素子やメーカーのメカニズムの劣化などがあって,正確な測光が困難になっているかもしれない。ジャンク品などで入手した古い露出計をどうしても利用したい場合などの,なんらかの参考になれば,幸いである。

*1 製品情報 スタジオデラックスIII L-398A (株式会社セコニック)
https://www.sekonic.co.jp/product/meter/l_398a/l_398a.html




追記:2019年11月14日(木) 天気:曇ときどき晴

「スタジオデラックス」の光球の互換性について,情報をいただいた。

 光球単体売りのパッケージに次のように印刷されています。
表面  SEKONIC
 ATTACHMENT
 光球 LUMISPHERE
 FOR L-398A
   L-398M
   L-398
   L-28C2
   L-28C
裏面 光球の取り付け方
光球の枠の白点を受光部の白点にあわせてセットし時計方向に静かにまわしますと約45°で光球は固定されます。
(注)
●L-398、L-28C2、L-28C は回らなくなる位置で止めてください。
●L-398、L-28C2、L-28C は着脱の際、多少かたくなる場合もあります。
 このように,セコニックが公式に互換性を認めています。

このことにもとづくと,「スタジオデラックス」の光球の互換性については,つぎのようになる。

  本体
スタジオSシリーズ L-28cシリーズ L-398シリーズ
光球 スタジオSシリーズ × ×
L-28cシリーズ × ×
L-398シリーズ ×

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