撮影日記


2019年09月02日(月) 天気:雨のち曇

印画紙での撮影は曇りの日がよい?

デジタルカメラに関して,センサのサイズは関係ない!という主張をする人を見かけることがある。撮像素子がライカ判サイズであろうと,いわゆるAPS-Cサイズであろうと,画素数に差がなければ問題ないという発想なのであろう。
 しかし,フィルムを使って撮る場合は,そうではない。単純に,フォーマットが大きいほど,デジタルカメラでいうところの画素数が増えるのである。鑑賞用に引き伸ばすときの倍率も低くて済むので,結果として大きなフォーマットで撮れば,七難を隠すのである。超望遠レンズでの撮影であれば,フォーマットが大きすぎるとカメラも扱いにくくなるのでほどほどにしなければならないが,標準レンズあるいは広角レンズくらいでの撮影であれば,できるだけ大きなフォーマットで撮りたくなることがある。

一昨日は,ひさしぶりに四切1/2(6インチ×10インチ)判の組立暗箱を用意した。
 現在,6×10判のフィルムは市販されていない。8×10判のフィルムをカットして使わなければならないのだが,これは高価であり,カットの手間もかかる。そこで,四切(12インチ×10インチ)の印画紙を半分にカットして使っている。実際には,半分にカットしたうえでさらに長辺短辺とも数ミリずつカットする必要がある(2010年8月1日の日記を参照)。それでも,暗室でセーフライトを使って作業ができるので,さほど困難というわけではない。

静かな住宅地のなかに,大正時代にもうけられた道標が残っている。
 一昨年,これを撮ったのだが,印画紙をホルダに装填してからいささか月日が過ぎており,さらに現像処理もうまくできなかったのか,カブリやムラが目立つものになった。今回は,その撮りなおしである。

いつものように,ここを通る人は多くない。ただ,早朝ではなく午後のこと,まったく誰も通らないわけではない。通行の邪魔にならないようにできるだけ隅に三脚を立てたいが,一方で家屋の入り口などをふさがないようにも配慮しなければならない。こんな場所で黒い冠布をかぶっていたら(冠布は,黒いほうを内側にしてかぶるのが正しい使い方であるが,赤を外にすると必要以上に目立ってしまいそうなので躊躇するのである),不審者と思われてもしかたない。
 そのときちょうど,「うわー,すごいカメラですねー」と言いながら通り過ぎていった人がいた。これはカメラであり,そこにいる私は写真を撮っている人であると,認識されたようである。なにをやっているのかわからない,そんな不審者として通報されずに済んだようだ。

被写体にする道標は,すぐ近くにもう1つある。

いかにも雨が降り出しそうな空模様で,明るさはじゅうぶんにあるが,日ざしがない。光がよく回りこんでおり,コントラストがなさそうな状況である。いっぽうで,印画紙での撮影は,フィルムでの撮影にくらべて硬調になりがちなので,これくらいのほうがよいのかもしれない。
 ともあれ2箇所目の道標を撮り終わり,カメラをかたづけたところで,ぽつりぽつりと雨が降りはじめてきた。晴雨兼用の小さな傘で雨をしのぎつつ,移動する。帰宅したところで,ちょうど本降りになってきた。

そして,今夜,これを現像した。

FUJINON W 180mm F5.6, FUJIBRO WP FM2 (F16, 8sec), microfine (1:1, 28℃, 90sec)

印画紙のカブリやたわみもなく,現像のムラもない。こんどは,うまくいったようだ。

FUJINON W 180mm F5.6, FUJIBRO WP FM2 (F16, 8sec), microfine (1:1, 28℃, 90sec)

ポストのところで撮った1枚目のほうは,もう少し近づいて撮るべきだったか。しかしこれ以上近づくと,往来の妨げになる。せめて,180mmレンズではなく210mmレンズがよかった。このときは,180mmレンズしか用意していなかったのである。
 2枚目のほうは,もう少し短焦点なレンズで,左奥の地蔵堂を屋根まで入れたらよかったかもしれない。少し下がれば入ったかもしれないが,これ以上離れると,こちらでも往来の妨げになる。
 ともかく,わずかな差であっても,焦点距離の異なるレンズを用意しておくほうが,なにかと好都合なことが多いのかもしれない。
 雨が降る直前の,どんよりした空。光はよくまわりこんでおり,コントラストの弱い状況。だからこそ,印画紙での撮影がにあったのだろう。路面や壁面の粒も感じられる,いい具合に写ってくれたと思っている。いまやフジブロは,RCタイプの号数印画紙として貴重な存在。しかし,製造と販売の終了がアナウンスされており,店頭の在庫もそのうち尽きてしまうだろう。手元にフジブロはまだ残っているが,ぼちぼち代替手段も考えはじめるようにしておきたい。


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