撮影日記


2019年08月25日(日) 天気:曇一時小雨

ESPIO 200 そこまで誰が必要としたのか?

ブックオフのジャンクコーナーにある青いコンテナボックスのなかには,いつものようにいくつかのカメラが転がっている。たとえばHOLGAは,強気な価格がつけられたまま,長いあいだそこにある。Canon EOS kissを2つも3つも入手しようとは,今のところ考えていない。今日もあまり魅力的なものがないなと思っていたとき,480円という値札の貼られている箱に目がとまった。

なかに入っていたものは,PENTAX ESPIO 200である。

フィルムを使うカメラで,もっとも一般的なものは,35ミリカメラとよばれるものだ。これは,パトローネとよばれる容器に幅35oのフィルムがはいった,「135フィルム」とよばれるフィルムを使うカメラである。小難しい言いかたをしたが,いちばんふつうに売られているフィルムである。カメラ専門店でなくても,スーパーマーケットやコンビニエンスストアのようなところででも,いまでも売られているようなフィルムである。

カメラを分類する方法や基準には,さまざまなものがある。それでも,このようなフィルムを使うカメラは,大きく2つにわけることができる。それは,レンズを交換できるカメラと,レンズが固定されているカメラである。
 レンズを交換できるカメラとしては,たとえば一眼レフカメラがある。正面に撮影用のレンズがあり,そこを通った光は,ミラーによって導かれ,ファインダースクリーンに像を結ぶ。フィルムに露光するときは,ミラーが動いてシャッターが開き,フィルムに像を結ぶ。そのため,実際にフィルムに写る像と同じ像を,ファインダースクリーンで確認できる。これが一眼レフカメラの大きな特徴であり,その特徴を活かせるように,さまざまな交換レンズが用意されている。

 一眼レフカメラは高価であり,大きく重い。オートフォーカス機構が実用化されていなかったころには,操作にある程度の慣れが必要であった。
 だから,プロやマニアではない一般のユーザは,露出やピント合わせの操作が自動化され,小型軽量で安価な,コンパクトカメラとよばれるカメラを使うことが多かった。コンパクトカメラはレンズが固定されていて,交換ができない。
 たとえば運動会や発表会,観光地やイベントなどで,遠くのものを大きく写したいと思う人は,少なくなかっただろう。そういう要望にこたえるために,レンズの前にとりつけるタイプのテレコンバージョンレンズが用意されたこともある(2005年10月14日の日記を参照)。しかし,フロントコンバージョンレンズでの倍率は,せいぜい1.5倍程度だった。コンパクトカメラに装着されたレンズの焦点距離は38mmくらいのことが多く,この1.5倍は57mmにすぎない。望遠レンズというよりは,ちょっと焦点距離が長めの標準レンズという感覚である。
 コンパクトカメラで,それなりに望遠レンズらしい撮影ができるようになるのは,2倍程度のズームレンズが搭載されるようになってからのことである。

コンパクトカメラでさいしょに焦点距離70mmの撮影ができるようになったのは,おそらく1986年の「コニカ望遠王」(Konica MR.70)だろう。このカメラのレンズは,ズームレンズではなく,2焦点レンズとよばれるものだった。テレコンバージョンレンズを,レンズの前ではなく後ろに挿入するようになっている。
 つづいて,1987年には,35mm F3.5-70mm F6.7のズームレンズを搭載したPENTAX Zoom 70があらわれている。
 コンパクトカメラに搭載されたズームレンズの焦点距離はどんどんと伸びていき,ついには200mmにまで到達するようになった(2013年2月10日の日記を参照)。これが,PENTAX ESPIO 200である。

しかし,コンパクトカメラに,ここまでの望遠レンズが必要だったのだろうか?

200mmというと,本格的な望遠効果が得られるレンズである。しかも,コンパクトなボディに収めるために,口径はごく小さく,開放F値はF13というまさに「暗黒ズーム」となっている。だから,200mmで撮影するときには,高感度フィルムを使ったとしてもしっかりした三脚を使いたい。コンパクトカメラは気軽に持ち歩くためのカメラであるはずだが,しっかりした三脚が必要となると,その気軽さがスポイルされてしまう(2013年3月3日の日記を参照)。
 また,コンパクトカメラでは,撮影するレンズとは別にファインダーのレンズが設けられている。このようなカメラのファインダーで,厳密なフレーミングをするには相応の慣れが必要だ。せっかくの望遠レンズで意図したものだけを大きく写そうとしても,フレーミングがずれてしまうと残念なことになる。

コンパクトカメラを使うユーザが,ほんとうに200mmという望遠レンズを必要としたのだろうか。そして,満足できる結果を得られるくらい,使いこなしていたのだろうか。そういう疑問を感じてしまう一方で,こういう特徴のあるカメラは,おもしろそうであることは間違いない。


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