撮影日記


2019年07月01日(月) 天気:曇

FUJIX DS-505Aに絞りリングは意味がない

Kodakの経営がおもわしくなかったころ,「Kodakはデジタル化に乗り遅れた」という評価をする人を見かけたことがある。それは明らかに,間違っていると思う。Kodakは,デジタルカメラというものを発明し,業務用に多数のデジタルカメラを出荷するなど,カメラのデジタル化をリードしてきた存在だ。一般消費者向けの廉価なデジタルカメラも発売したし,デジタル画像を共有するサービスも展開した。乗り遅れたのではなく先行し過ぎたため,消費者の志向とずれてしまったのではないだろうか。
 Kodak DCS 420は1994年8月に発売された,150万画素の撮像素子をもつデジタル一眼レフカメラである。日本における価格は149万円であり,一般の人が趣味で使うようなものではなく,もっぱら報道や印刷などの業務用途で使われてきた。その後1995年には富士フイルムが,130万画素の撮像素子をもつFUJIX DS-505というデジタル一眼レフカメラを市場に送りこんできた。どちらも,ライカ判一眼レフカメラのレンズを利用する,デジタル一眼レフカメラである。
 この2機種の撮像素子は,画素数は似たようなものであるが,大きさが異なっている。
 Kodak DCS 420の撮像素子の大きさは,13.8mm×9.2mmである。この大きさは,Nikon 1などに採用された,1型というものに近い大きさである。ライカ判にくらべて小さいため,50mmレンズを装着したときに撮影できる範囲は,ライカ判のカメラで130mmレンズを使うときと同等のものに限定される。
 FUJIX DS-505の撮像素子はさらに小さな2/3型とよばれるもので,大きさは8.6mm×6.6mmである。しかしながらFUJIX DS-505では,撮像素子の前に像を縮小するためのレンズ群(縮小光学系)が設けられている。これによって,ライカ判と同じ感覚でレンズを使用できるようになっている。
 たぶんに,スタジオ内等で小物を撮影する場合を想定すれば,Kodak DCS 420でも問題なく使えるし,よけいな光学系がない分,高画質が期待できる。ただし,広角レンズを使った表現には不都合である。一方,FUJIX DS-505の場合は,縮小光学系による画質等への影響が考えられるが,広角レンズから望遠レンズまで,使い慣れた感覚で撮影できるという点が好都合である。

1996年に,FUJIX DS-505を改良した,FUJIX DS-505Aが発売された。縮小光学系を使っていることなど,基本的な部分は変わっていない。
 この縮小光学系には,絞り機構が内蔵されている。装着するレンズの絞りは使われず,絞りリングをどの位置にしていても,つねに開放で使われる。そして,カメラとしては,(たぶんF6.7よりも明るい)すべてのレンズの開放F値を,F6.7として扱うようになっている。

左はFUJIX DS-505Aのマウント,右はKodak DCS 460のマウントである。左のほうは,レンズの絞りを動かすレバーの可動域がほとんどないことがわかる。このレバーが動くことで,自動絞り機構を実現しているのだが,FUJIX DS-505Aではこのレバーは動かず,装着したレンズの絞りをつねに開放状態にする。

カメラとしてはすべてのレンズの開放F値をF6.7として扱おうとするが,装着されるレンズの明るさには,さまざまなものがある。なんらかの方法で,カメラの露出計を補正する必要があるはずだ。そこで,FUJIX DS-505Aでは,レンズに設けられた開放F値伝達ピンが利用されている。このピンは,Ai方式のニッコールレンズには設けられている。Ai方式ではない,旧式のオートニッコールをAi方式に改造したレンズには,設けられていない。

マウント側には,そのピンからの情報を受けるレバーが設けられている。この機構をもつニコンの一眼レフカメラは,マニュアルフォーカス用レンズでもプログラムAEや多分割評価測光ができる,Nikon FAやNikon F4などかぎられた機種だけである。

露出計については,補正するための電気信号を送ることができればそれでよいが,実際に開放F値がF6.7になるように,明るいレンズを装着したときには縮小光学系に内蔵された絞りも制御されていると思われる。しかし,シャッターを動作させたときにレンズを正面から覗きこんでも,縮小光学系に内蔵されているとされる絞りがどう動いているかが見えない。そのため,このあたりの動作については,じゅうぶんに確認できてはいない。


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