撮影日記


2018年10月13日(土) 天気:晴

Gタイプニッコールの謎
F-501AFの不思議な挙動

ニコンのオートフォーカス用のレンズのうち,絞りリングのない「Gタイプ」というものがある。絞り値を設定するためのダイアルがボディ側にない機種では,基本的に使用できず,使用できる場合でも大きな制約がある(2018年10月10日の日記を参照)。

Nikon F-501AFにおける,Gタイプレンズの挙動には,不思議な点がある。
 ニコンのWebサイトでGタイプレンズが「使用できません」と説明されている機種の1つに,Nikon F-501AFがある(*1)。
 Nikon F-501AFは,(システムが異なるNikon F3AFを除いて)ニコンから発売された最初の,オートフォーカス一眼レフカメラである。ボディ上部にダイアルがあり,そこにはシャッター速度を示す「2000」(1/2000秒)から「1」(1秒)までの値のほかに,「B」(バルブ撮影),「A」(絞り優先AE),「P DUAL」「P」「P HI」(プログラムAE)のモードが記されている。ボディ側に絞りを設定するためのダイアル等はなく,絞り値はレンズ側の絞りリングで設定する。
 プログラムAEを使用するときは,ボディ上部のダイアルを「P」(または「P DUAL」「P HI」)に設定し,レンズ側の絞りリングを最小絞りに設定する。絞りリングを最小絞りにしておくのは,ボディからの制御ですべての絞り値を選択できるようにするためである。なお,ペンタックスやキヤノンのレンズには,プログラムAEやシャッター速度優先AEを使うための「A」ポジションが最小絞りの隣に設けられており,少しはわかりやすくなっている。
 ただし,Nikon F-501AFには,少し変わったところがある。実際には,絞りリングを最小絞りに設定していなくても,プログラムAEがはたらくのである。絞りリングを開放にしたままでは,ファインダー内の露出計表示が「エラー」を示すが,一応,撮影動作はできてしまう。また,最小絞りにまで絞り込まなくても,3段ほど絞っておけば,「エラー」表示になることなく,プログラムAE撮影ができる。Nikon F-501AFは,AE時には開放測光ではなく,瞬間絞り込み測光をおこなっている(2015年3月18日の日記を参照)。絞りを正確に制御できない古いタイプのレンズでもプログラムAEを使えるようにした配慮と思われるが,そのためかこのような多少いい加減な動きをさせても,とりあえず適正な露光がされることになる。

Gタイプレンズは,常時,最小絞りになっているようなものである。ただし,絞りがどこまで絞り込まれているかを機械的に伝達するピンはない。つまりNikon F-501AFにGタイプレンズを装着すると,レンズが開放であると認識されるはずである。それならば露出計表示は「エラー」を示すはずであるが,妥当と思われる値を示している。実際にレリーズして見ると,明るさに応じて適度に絞りも制御されているように見える。
 ともかく,ニコンのWebサイトで「使用できません」となっている,Nikon F-501AFとGタイプレンズの組みあわせでも,きちんと動作しているように見えるのである。

そこで,実際にフィルムを装填して撮影してみることにした。

Nikon F-501AFにAF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6Gを装着した。

露出計表示は「エラー」を示さず,妥当そうなシャッター速度を示す。

何コマか撮影したところで,違和感があることに気がついた。
 ピントが,あわないのである。
 Nikon F-501AFは,初期のオートフォーカス一眼レフカメラである。実用的な性能が得られるようになったとはいえ,現在のカメラとくらべれば,オートフォーカスの性能はかなり劣っている。だから,機械が迷ってピントがなかなかあわないことは,「そんなものだろう」と思いながら撮っていた。
 しかし,そういうレベルの問題ではないのである。
 迷いに迷ってようやくあったはずのピントが,明らかにずれている。ファインダー内のインジケータは合焦を示すが,ファインダースクリーンに写った像は,あきらかにピンボケである。

明らかにピンボケなのに合焦を示すことがある。

では,ファインダースクリーンがずれたりしているのか,といえば,そうではない。何度かオートフォーカス動作をやりなおすと,そのうち納得できるところで合焦するようになる。

きちんと合焦を示すこともある。

きちんと合焦したところでレリーズすれば,きちんとピントのあった写真が撮れている。

Nikon F-501AF, AF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6G, Konica 100

露出については当然のようにそろっており,問題ない。

Nikon F-501AF, AF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6G, Konica 100

ニコンのWebサイトで,Nikon F-501AFではGタイプレンズが「使用できません」となっているのは,ピントがあわないことがある,というこの現象をさしているのだろうか?
 ボディとレンズとの間でやりとりされる情報は,モデルごとに改良が加えられているだろう。そのうち,古いボディとあたらしいレンズとの間では,矛盾が生じたり,相互に悪影響をおよぼすことがあっても,おかしくない。
 しかしそれでは,オートフォーカス一眼レフカメラではないNikon F-301でも「使用できません」となっていることが,説明できない。露出に大きな問題があれば,そのことをさして「使用できません」としていると考えられるが,少なくともNikon F-501AFでは露出の問題は感じられない。

Nikon F-501AF, AF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6G, Konica 100

ニコンのGタイプレンズの謎は,ますます深まっていくのである。

*1 AF-S・AFのGタイプレンズとの組み合わせについて (株式会社ニコン)
http://www.nikon-image.com/products/nikkor/combination/#section05


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