2018年10月10日(水) 天気:雨
Gタイプニッコールの謎 F-601とF-601Mはなにが違うのか?
レンズ交換のできるカメラにおいて,カメラボディとレンズとを接合する部分は,(レンズ)マウントとよばれる。マウントの形状は,メーカーあるいはシリーズごとに異なるものが使われている。形状は同じでも,機械的な連動のしくみあるいは情報伝達のための電気接点などの異なっている場合もある。
ニコンの一眼レフカメラに使われているマウントは,(ニコン)Fマウントと称している。1959年に発売されたNikon F以来,最新のディジタル一眼レフカメラNikon D5などに至るまで,その基本的な形状はかわっていない。この間に,ほかのメーカーは一度くらいは大きな変更をしていることに対して,ニコンでは「不変のFマウント」と称している。たしかに基本的な形状は変わっていないが,連動のしくみはずいぶんと変化しており,古い製品とあたらしい製品の組みあわせでは,いろいろと制約の生じる場合も少なくない。ボディやレンズにあたらしい機能が設けられるごとに,その組みあわせは複雑化していく。
ニコンのオートフォーカス用のレンズに,「Gタイプ」というものがある。かつてレンズにはピントリングと絞りリングが設けられていたが,ボディの自動化がすすむにつれ,ボディに設けられたダイアルで絞りを設定するようにユーザインタフェースが変更された。そのようなボディで使用するレンズには,絞りリングは必要ない。そこで,絞りリングをなくしたレンズも発売されるようになり,そのようなレンズは「Gタイプ」とよばれるようになっている。
ボディに設けられたダイアルで絞りを設定するカメラであれば,「Gタイプ」レンズはなんの問題もなく,機能をフルに利用できる。しかし,そうではないボディで使うときにはいろいろと制約が生じる。具体的には,ニコンのWebサイトで説明されている(*1)が,「A(絞り優先AE)モードとM(マニュアル露出)モードが使用できません」というものと,「使用できません」というものとがある。
「AモードとMモードが使用できません」という理由は,絞りリングのないGタイプレンズは,つねに「最小絞り」の状態になっているためである。ボディ側に絞りを設定するダイアルのないカメラでは,最小絞り以外の絞りを選ぶことができないので,AモードとMモードではカメラが動かないわけではないが,実用的ではないということになる。AモードとMモード以外に,S(シャッター速度優先AE)モードやP(プログラムAE)モードがあるカメラでは,問題なく使用できる。
「使用できません」というカメラは,SモードやPモードのないカメラである。ただし,Nikon FA,Nikon FG,Nikon F-301,Nikon F-501にはPモード(Nikon FAにはPモードとSモード)があるので,使えそうであるが,ニコンのWebサイトでは使えないことになっている。
ここで不思議なのは,F-601とF-601Mの関係だ。
F-601は,比較的初期のオートフォーカス一眼レフカメラの1つである。フラッシュを内蔵したマルチモードAE(P,S,A,Mすべてのモードが使える)の中級機にカテゴライズされ,少々動作音がけたたましいものの,使い勝手のよいカメラである。F-601Mは,F-601からオートフォーカスとフラッシュを割愛したモデルとされている。それだけの差であるにもかかわらず,F-601MでGタイプレンズは「AモードとMモードが使用できません」であるのに対し,F-601は「使用できません」となっている。実際に,F-601にGタイプレンズを装着すると,エラーとなって動作しない。
Nikon F-601にAF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6Gを装着すると…
「最小絞りになっていない」というエラーが出て,使えない。
Nikon F-601MにAF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6Gを装着すると…
最小絞りになっていると認識され,P,Sモードが使える。
一方,F-601MにGタイプレンズを装着しても,P(プログラムAE)モードにすれば問題なく撮影ができる。
Nikon F-601M, AF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6G, Konica 100
S(シャッター速度優先AE)モードを使えば,流し撮りもおこないやすい。
Nikon F-601M, AF Zoom-NIKKOR 28-80mm F3.3-5.6G, Konica 100
Nikon F-601とNikon F-601Mは,同じようなカメラのはずなのに,内部の制御回路(コンピュータ?)に差が設けられている。なんのためにこのような差が設けられているのか,まったく見当がつかない。
シンプルに見えるNikon F-601であるが,なにか奥深い秘密が隠されているようだ。
*1 AF-S・AFのGタイプレンズとの組み合わせについて (株式会社ニコン)
→http://www.nikon-image.com/products/nikkor/combination/#section05
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