撮影日記


2018年07月15日(日) 天気:晴

NIKKOREX 35IIは おもしろみに欠ける

「シャッターが切れません」という状態の,NIKKOREX 35IIを購入した。

NIKKOREXは,廉価版のシリーズとして発売された,ニコンの一眼レフカメラである。このシリーズに含まれるカメラは5機種あり,そのうち4機種はレンズシャッター式でレンズが固定されている。残りの1機種は,縦走り金属幕シャッターを採用した初期の一眼レフカメラの1つとして知られており,ニコンFシリーズと交換レンズを共用できる。
 NIKKOREXシリーズの一眼レフカメラは,あまり売れなかったようだ。その理由の1つとして,ニコンFにくらべて故障しやすかったということが指摘される。とくに最初の機種にあたるNIKKOREX 35は,実際に故障が多かったらしい。以前,ニコンのWebサイトで公開されていたお話し(*1)のなかでは,「組み込まれたレンズシャッターユニットも、このカメラのメカとは必ずしも相性の良いものではなく」ということや「初めての試みとして最終組み立てまで外注先に任せたことも、トラブルの原因」ということが,故障の多い製品となった原因として考えられている。
 NIKKOREXのシリーズは,Nikon FやNikomatのシリーズほどには売れなかったこともあって,中古カメラ店で見かけることも,すっかり少なくなってきた。たまに見かけることがあっても,まったくの故障品としてジャンクコーナーにやや強気の価格で並べられていることがある,という具合である。さいきん目撃した価格にくらべれば安価だったことと,外見があまり傷んでいないように見えたことから,今回は「シャッターが切れません」を承知で購入したのである。

しかし,これらは「故障が多い」という問題点を抱えたNIKKOREX 35を改良した,NIKKOREX 35IIである。もしかしたら,些細なトラブルを解消することで動くようになるのではないか?という期待もあった。
 動作を確かめてみたところ,上の画像にある手前の個体については,ボディ外側やフィルム室などが著しく汚れているものの,シャッターはほぼ正常に動作しているように見えた。また,レンズにも大きな汚れやクモリ,カビなど見られない。掃除したところ,なんとか使えそうな状態になった。「シャッターが切れません」という説明は,ウソだったのか?まあ,こういうウソは,むしろありがたいものであるが。

 
NIKKOREX 35II (NIKKOR-Q 5cm F2.5), Konica 100

実際に撮ってみたところ,ふつうにしっかり,カリッとした描写を見せてくれる。レンズの銘が「NIKKOR-Q」なので,レンズはおそらくテッサー型あるいはそれに近いものであろう。F2.5という開放F値は,標準レンズとしては暗いものと思われるかもしれないが,テッサー型としてはむしろよくがんばっているものだと思う。

NIKKOREX 35II (NIKKOR-Q 5cm F2.5), Konica 100

画面内に強い光源がはいるような条件でも,しっかりとした写りを見せてくれる。
 写りとしては,まったく問題がない。きれいな写真を撮るための機械として,じゅうぶんな性能をもっている。
 しかし,撮り心地というものは,あまりよいものには感じられない。
 まず,このカメラは大きく重い。レンズをはずして収納することもできないので,カバン等へのおさまりがよくない。カメラの重さを気にしないなら,すなおにNikon Fを使うほうがよいだろう。
 また,ファインダーがあまり快適でないことも気になる点である。NIKKOREX 35IIは,ペンタプリズムではなくポロミラーでファインダーが構成されている。コストダウンや軽量化などに貢献しているのかもしれないが,Nikon Fのファインダーにくらべてその見え具合はどうしても劣ったものに感じられる。レンズの描写はよいし,明るさもがんばっているとはいえ,あまり快適ではない見え具合だ。
 レンズに妙な癖があってきわめて個性的な写りが得られる,というわけでもないので,どうしてもこのカメラを使いたい,という気分にはなりにくそうである。

上の画像にある奥の個体については,たしかに「シャッターが切れません」という状態のものだった。全体にボディはきれいだが,片方のストラップ取り付け金具や,巻き上げレバー上部の蓋など,欠落した部品もある。
 ヘリコイドもきわめて固い状態だったので,アルコール等を使って細部を清掃してみたところ,やがてシャッターも動作するようになった。しかし,その動きは不安定である。また,ピントリングが近距離のとき,ミラーが下りた位置で固定されない。NIKKOREX 35IIは,クイックリターンミラーになっておらず,シャッターレリーズの後はミラーがあがったままになり,巻き上げをすることでシャッターがチャージされるとともに,ミラーが下りてくるのである。
 それでもいちおうレンズの清掃などしているうちに,動作が不安定な理由が見えてきた。レンズ鏡胴が,微妙に緩んでいるのである。巻き上げのときに鏡胴をしっかり握って固定しておけば,問題なく動作することがわかった。どこかのネジを締めればきちんとなおるものと思うが,まあ急ぐことはない。

初代のNIKKOREX 35は,実際に故障しやすいカメラだったようだ。そして,NIKKOREXシリーズすべてに,故障しやすいというイメージがついてしまったのだろう。しかし,問題点を解消すべく改良されたNIKKOREX 35IIは,評判ほどには故障しにくいものなのかもしれない。

*1 ニコンファミリーの従姉妹たち 第1回「ニコレックス35」と「ニコレックス35II」 (株式会社ニコン)
   Internet Archivesより
https://www.nikon.co.jp/main/jpn/profile/about/history/itoko/itoko01j.htm


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