2017年03月22日(水) 天気:晴
これこそ,ザ・クラカメなのか? どうしてMercuryが選ばれた?
いわゆる「100円ショップ」では,さまざまなアイテムが販売されている。文房具や日用品のほか,食品など日常的に実用するものが多い。カメラ・写真趣味者としては,単3型乾電池やボタン電池などを購入するために,「100円ショップ」を利用する人も多いだろう。カメラ・写真用品としては電池のほかに,アルバムや三脚,レンズも扱われている。かつては,フィルムも売られていたし,D.P.E.(フィルムの現像および写真のプリント)の受け付けもおこなわれていた。カメラそのものが販売されていたこともある(2009年1月31日の日記を参照)が,その姿はすぐに店頭から消えた。
今日,ひさしぶりに「100円ショップ」の店内で,「カメラ」の姿を見かけた。
「カメラ」と言っても,カメラそのものではなく,写真用品の類でもない。
カメラの形をした,マグネットである。要はカタチだけなのだが,このスタイルがおもしろい。
この形のカメラは,最近のディジタルカメラではない。もっと,古いものだ。このマグネットそのものも,古びて見えるようにつくられている。店頭でこのマグネットのそばには,古い電話機の形をしたマグネットや古いオートバイの形をしたマグネットなども並べられていた。これらはすべて,言うなれば「アンティーク風の小物」である。だから,カメラの形をしたマグネットも,最近のカメラをモデルにするわけにはいかない。古そうなカメラ,「クラシックカメラ」などとよばれるようなカメラを,モデルにしなければならない。
このカメラのモデルになったものは明らかに,Universal CameraのUnivex Mercury IIである。
カメラの上部に,大きく半円形のものが広がっている。ここには円盤状のシャッターがおさめられており,この形態こそがMercuryの最大の特徴である。そして,カメラに向かって右側に大きなノブがついているのは,一般的な135フィルム(いまでも主流といえるパトローネ入り35mmフィルム)に対応して,巻き戻し機能が必要になったMercury IIの特徴である。Mercury Iは専用のマガジン(フィルムを収納するケース)を使うようになっており,巻き戻し機能がなかったのだ。そのほかこのマグネットは,カメラ上面に2つのアクセサリシューがあることやカメラ正面のつまみ類など,Mercury IIの形態をよくとらえている。
この商品(マグネット)を企画した担当者は,なぜMercury IIをモデルにしたのだろうか?
「古そうに見えるカメラ」で,「ほかにはない特徴的なカメラ」を選んだ結果ではないだろうか。
どれくらい古いカメラであれば,「クラシックカメラ」あるいは「アンティークな商品」として認識されるのかはわからない。それでも,自分が生まれるよりも前につくられた製品ならば「古い」と感じる人が多いのではないだろうか。Mercury IIは1945年に発売されたようなので,ざっと70年前の製品である。日本は高齢化が進んでいると言っても,Mercury IIが発売されるよりも前に生まれた人は,まだ多数派ではない(*1)。多くの人にとってMercury IIは,アンティークな製品としてじゅうぶんな資格をそなえている。
「古い」だけならば,初期のLeicaやContaxにも,その資格はある。二眼レフカメラや蛇腹を使ったカメラなら,いかにも古そうなカメラである。だが,それらをモデルにした小物は,たぶんこれまでにもいろいろと企画され発売されてきたことだろう。ほかにはない独特の姿をしているからこそ,Mercury IIが選ばれたものと思いたい。
ほかでは見たことのない異様な姿,それでいて,知らなくてもそれが「カメラ」だとわかる。これこそまさに,クラシックカメラを代表するもの。ザ・クラシックカメラということになるのではないだろうか。いまこそ,Mercury IIを見直そうではないか。
ただ,Mercury IIは,いわゆる「ハーフサイズ」のカメラである(2005年10月4日の日記を参照)。いちどフィルムを装填すると,なかなか現像できないので注意が必要だ(笑)。
*1 人口推計 平成29年3月報 (総務省統計局)
→http://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/201703.pdf
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