撮影日記


2015年08月04日(火) 天気:晴

キヤノンフレックスRMを救出
58mm F1.2レンズも復活

私がお気に入りのボールペンの1つに,「フィッシャー スペースペン ブレット」というものがある。このボールペンは,インクタンクに窒素ガスを満たして一定の圧力をかけていることから,逆さにしていても無重力状態においても書くことができるという。
 このペンはいただきものである(2005年7月13日の日記を参照)が,個人的にすっかり気に入って,ずっと使い続けているものだ。まず,なめらかに書けること。適度な重さがあることも,なめらかに書けることに関係しているかもしれない。そして本体の見た目がシンプルで,美しいことがある。「フィッシャー スペースペン ブレット」は一見するとかなり短めのペンなので,使いにくそうに感じるかもしれない。しかし,実際に書くときにはキャップを反対側にはめることで,一般的なボールペンとかわらない全長になり,とくに違和感なく使うことができる。

「フィッシャー スペースペン」のインクは粘着性が高いことから,「ドライアップ(乾燥)がなく100年以上の保管も可能」と謳っている(*1)。しかし,インクというものは使えば減る。そして,書けなくなる。書けなくなったら,替え芯を買ってこなければならない。
 ただし,そこに少々問題がある。
 「フィッシャー スペースペン」の替え芯は,先にも書いたように特殊な構造のものである。そして,アメリカのメーカーの製品だということもあるのか,1本100円というわけにはいかない。まあ,少しばかり高価といってもせいぜい1本1000円くらいなので,値段は問題にはならない。そんなことではなく,「フィッシャー スペースペン」を取り扱っているお店が広島県内には1件しかない,ということが大きな問題なのだ。

ということで,ボールペンの替え芯1本を買うために,わざわざ八丁堀の福屋まで足を運ばなければならないのである(*2)。しかも,筆記具売場は,7階の隅にある。その周辺は,OMEGAやROLEXがあたりまえのようにあり,それらを安物だと思わせてしまいかねない (と勝手に思い込んでいる) Vacheron Constantinまで揃っているような,高価な時計の売り場である。細かいことはさておき,要するにふだんは近づく機会のないエリアである,ということが重要である(笑)。そのかわりというべきか,平日の夕方にはほかのお客さんの姿もほとんどなく,話は早い。

さて,せっかく市内中心部に出かけたのだから,売り場がリニューアルされたらしい「ブックオフ広島大手町店」に立ち寄ることにした。それまでなかったと思える,青いコンテナボックスが並んでいる棚に,どことなく既視感を覚える。そのなかを覗くと,ジャンク品がいろいろ。 しばらく「ブックオフ広島大手町店」から姿を消していた,フィルムカメラの姿もある。そうだ,これは「ブックオフ」というよりも「ハードオフ」の雰囲気である(笑)。
 ただ,残念なことに青いコンテナボックスのなかに,救出すべきものは見つからなかった。
 そのとき,横のほうからなにか訴えかけるものを感じた。

鍵のかかるショーケースの隅から存在を主張していた正体は,標準レンズつきの「キヤノンフレックスRM」であった。
 店員さんを呼んで,ショーケースから出してもらい,状態を確認する。
 まず,全体に酷い汚れや傷,凹み等は見られない。シャッターは,1秒の動作がやや不安定だが,いちおうすべての速度でそれなりに動いているようだ。露出計も,それなりに反応している。裏蓋を開くが,その内部にも汚れなどなく,シャッター幕もちゃんと動いている。
 つぎに,レンズの無限遠がちゃんと出ているかを確認すべく,ファインダーを覗いた。
 おかしい。妙に暗い。
 レンズをよく見ると,絞りこまれた状態になっている。そりゃ,ファインダーが暗いはずだ。しかし,Canonflex RMは,自動絞りではなかったのか?レンズには絞り値の刻まれたリングが2つあるので,もしかするとプリセット絞りなのかもしれない。そう考えていろいろと動かしてみるが,どうしても絞りは動かない。それでもよく見れば,少しは開いたようだ。絞り羽根が,粘っているのだろうと思われる。これは,どうするべきか少し迷う。もしかするとちょっとした掃除で簡単に復活するかもしれないが,思ったよりも重症かもしれない。キヤノンのレンズマウントはスピゴット式なので,分解がややこしそうである。もういちど,レンズを眺めたとき,「58mm 1:1.2」という数値が見えた。F2クラスの廉価版レンズにしては大きいなあと思い,もういちどよく見てみた。「1.2」である。F1.2という大口径レンズならば,復活することに賭けてみよう。
 値札につけられた価格は980円だったが,たまたま「200円引きクーポン」をもっていたので,これを780円で救出することになった。

持ち帰っているうちに,絞りはいつのまにか開放に戻っていた。単に粘っているだけで,致命的な故障はしていないのではないだろうか。絞り羽根の表面を軽く掃除したら復活するのではないか,という期待がもてる状況だ。
 目的地は,絞り羽根。この場合,後玉から攻めるべきか,前玉から攻めるべきか。後玉から攻めたほうが,絞り羽根に到達しやすいというイメージをもっているのだが,キヤノンレンズのマウント部は,固定リングのために少々複雑である。そこでまずは,前玉から分解に取りかかる。
 結果として,最前面の銘板をはずすとあらわれる穴を利用して,カニ目回しを使えば,簡単に絞り羽根に到達することができた。そしてライターオイルをちょっとだけつけて,綿棒で軽く絞り羽根を掃除した。何回か繰り返すと,絞り羽根がシャキっと開くようになった。どうやら,解決したらしい。「SUPER-CANOMATIC LENS R 58mm F1.2」は,やはり自動絞りレンズであった。

EOSより前のキヤノンの一眼レフカメラ用レンズは,大きく4種類に分類できる。
 もっとも初期のものは,「スーパーキヤノマチックRレンズ」(以下,単に「Rレンズ」とよぶ)である。ボディで巻き上げ動作をおこなうとレンズ側の自動絞り用のバネがチャージされ,ボディでレリーズ動作をおこなうとレンズ側の自動絞りが実行されるようになっている。完全自動絞りが実現されているが,巻き上げ動作をおこなった後のボディに,自動絞り用のバネがチャージされていないレンズを取りつけると,自動絞りが動作しないという現象が発生する。レンズの着脱に,「お作法」が必要だったのである。しかも,レンズの後ろには大きなレバーが2つあり,これによって簡単に自動絞りをチャージしたり解放したりできる。結局,レンズを着脱するときにはそのあたりを確認しなければならない。
 この問題点は,つぎの「FLレンズ」で解消された。ただし自動絞りの動作方法が根本的にかわったので,「Rレンズ」用のボディに「FLレンズ」を取りつけたり,「FLレンズ」用のボディに「Rレンズ」を取りつけたりすることはできるが,どちらの場合にも自動絞りがはたらかない。
 キヤノンの一眼レフカメラ用レンズは,つぎに「FDレンズ」とよばれるものになる。「FLレンズ」ではできなかったが,「FDレンズ」では開放測光に対応するようになった。しかも,ボディ側から絞りを制御することも考慮されていたため,シャッター速度優先AEやプログラムAEが比較的早期に実現されている。
 ここまでの「Rレンズ」「FLレンズ」「FDレンズ」は,スピゴット式(あるいはブリーチロック式)とよばれるもので,レンズを所定の位置にはめたあと,根元のリングを回して固定するしくみのものだった。これを一般的なバヨネットマウント同様に,カチッとロックされるまで回すだけで済むようにしたものが,「ニューFDレンズ」である。

さて,せっかくF1.2という大口径レンズが復活したのであるから,これでなにかを撮りたくなるというものだ。では,どのボディを使おうか。Canonflex RMで使うのが本来のスタイルだろうが,この時代の一眼レフカメラは少々重い。また,絞りを意識した撮影をしたいと考えれば,TTL露出計が内蔵されており,さらに絞り優先AEの使えるカメラで撮りたいものだ。
 ということで,最近救出したCanon AV-1の出番となる(2015年6月11日の日記を参照)。

Canon AV-1は,ニューFDレンズ時代のボディであるが,レンズマウントの形状はRレンズの時代からかわっていない。だから,Canon AV-1にSUPER-CANOMATIC LENS R 58mm F1.2を取りつけることは可能だ。自動絞りが使えないので手動絞りレンズとして使うことになるが,絞り優先AEならばひと手間増えるものの,さほど扱いにくくなるわけではない。SUPER-CANOMATIC LENS R 58mm F1.2とあわせて,タチハラフィルスタンド45を使ったアオリ撮影の試し撮りもしておきたいところである。

*1 FISHER SPACEPEN | BRAND (ダイヤモンド株式会社)
http://diamond.gr.jp/brand/fisher-spacepen/brand/

*2 FISHER SPACEPEN | SHOP (中国・四国) (ダイヤモンド株式会社)
http://diamond.gr.jp/brand/fisher-spacepen/shop/cyugoku-shikoku/


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