撮影日記


2014年7月31日(木) 天気:はれ

Jupiterレンズを楽しもう

突然だが,久しぶりに「キエフ5」を使ってみようと思ったのは,5月下旬のことだった。
 とくに撮りたい対象があるわけでもなく,とにかく「キエフ5」を使いたくなったのである。
 「キエフ5」は,一般に「レンジファインダーカメラ」とよばれるカメラである。「レンジファインダー」とは「距離計」のことなので,「距離計を内蔵したカメラ」はすべて「レンジファインダーカメラ」とよばれてしかるべきである。しかし実際には,M型ライカなどのように,レンズ交換ができて,レンズのピントリングと距離計の動きが連動し,ピントがあっているかどうかをファインダー内で確認できるようなタイプのものだけが「レンジファインダーカメラ」とよばれることがある。一方で,1960年代前後によく見られた,キヤノネットなどのような,レンズシャッター式でレンズ交換もできないが,レンズのピントリングと距離計の動きが連動し,ピントがあっているかどうかをファインダー内で確認できるようなカメラまで含めて「レンジファインダーカメラ」とよばれることもある。「ライカ」のようなカメラだけを「レンジファインダーカメラ」とよぶこともあれば,さらに「キヤノネット」のようなカメラも「レンジファインダーカメラ」に含めてよぶこともある,というわけだ。この場合,初期「ライカ」のように距離計のないタイプのものは,「レンジファインダーカメラ」とはよばないことになるだろう。では,「ジャスピンコニカ」はどうか。これはピントをあわせる動作が自動化されているが,三角測量を利用した距離計が内蔵されたカメラであり,そう考えれば「レンジファインダーカメラ」とよばれるべきではないか?だが実際に,「ジャスピンコニカ」を「レンジファインダーカメラ」であるとしている人は,めったに見かけない。たまに見かけてもそれは,「一眼レフ以外はぜんぶレンジファインダーカメラ」みたいに思っている人のようだ。
 以上のように「レンジファインダーカメラ」という言葉は,なにを指しているかいまひとつ明確ではない。私は,カメラのタイプをあらわす言葉として「レンジファインダーカメラ」という表現は,嫌いである。なにをあらわしているかが明確ではない言葉をうれしげに使っている人は,結局,なにを考えているのか?ともかく個人的には,「レンジファインダーカメラ」という言葉は,排除し抹殺していましたい。しかしながら現実には,「レンジファインダーカメラ」という言葉はよく使われているし,それが意味するところの微妙な違いには,「空気を読む」ことで対応するのが大人の姿勢というものだろう。
 ということで私は,「(M型)ライカのようなカメラ」をあらわすときには,「レンジファインダーカメラ」という言葉よりも,「ビューファインダー」式で,交換レンズ等が充実した「システムカメラ」,これをつなげて「ビューファインダーシステムカメラ」とよぶのがよいと考えている。ただし今日の「撮影日記」では,多くの人にすんなりと読んでもらいたいので,たぶん耳慣れないだろう「ビューファインダーシステムカメラ」ではなく,「レンジファインダーカメラ」という言葉を使おうと思う。

Kiev 5

で,話がはじめにもどる。

突然だが,久しぶりに「キエフ5」を使ってみようと思ったのは,5月下旬のことだった。
 とくに撮りたい対象があるわけでもなく,とにかく「キエフ5」を使いたくなったのである。
 「キエフ5」は,一般に「レンジファインダーカメラ」とよばれるカメラである。「レンジファインダー」とは「距離計」のことで,「レンジファインダーカメラ」とは,被写体までの距離を計測できる機構を内蔵したカメラをさす。実際にはもう少し限定的に使われる言葉で,交換レンズ等のシステムが充実しており,内蔵された距離計がレンズのピントリングの動きに連動していて,被写体にピントがあっているかどうかをファインダー内で確認できるようになっているカメラをさすことが多い。

finder

レンジファインダーカメラの良さは,一眼レフカメラと比較して語られることが多いようだ。
 具体的には,一眼レフカメラと違ってミラーがないことから,小型軽量であり,シャッターレリーズ時の振動が少ないことがあげられる。また,一眼レフカメラで広角レンズを使うときには,被写界深度が深くなることからややピント合わせがしにくくなるのに対し,レンジファインダーカメラでは広角レンズでもピントがあわせやすいという点を指摘する人もある。
 逆に,一眼レフカメラのほうが良い点としては,撮影レンズを通した像をファインダーで確認できることから,望遠レンズでの撮影や接写がやりやすいことがあげられる。
 そうやって「キエフ5」を眺めてみると,重大な問題があることに気がつくだろう。それは,最近の一眼レフカメラとくらべると,まったく「小型軽量ではない」ことだ(笑)。だから滅多なことでは,使う気にならないのである。

ともあれまずは,広角レンズ(といっても,35mm F2.8の)「Jupiter-12」でいろいろ撮ってみよう。

Kiev 5, Jupiter-12 35mm F2.8, RVP F

工場が移転し,取り壊しが進んでいる。工場の建物が壁の骨組みだけになったとき,これまで見えにくかった青空と向こうの山がきれいに見えるようになった。

Kiev 5, Jupiter-12 35mm F2.8, RVP F

取り壊しが進んでいる工場の隣では,高層住宅の建設も進んでいる。よく晴れた空に,クレーンの赤が映える。

なんという,こってりした色だろうか(^_^; PLフィルタなどは使っていないし,もちろん,頭にバンダナなど巻いていない。RVP Fのもつ色と,Juiterレンズの特性とがあわさった結果である。こういう色になってしまったものの,作品あるいは単に写真としての優劣は別問題として,このポジフィルムをライトボックスに照らして見てしまうと,単純に「フィルムっていいなあ」と感じることになる。発色が下品だろうとなんだろうと,これはとても「楽しい」ことなのである。同じ色を見ることができるとしても,ディスプレイで見るものよりも,ライトボックスの上に置いたフィルムで見るほうが,楽しく感じるのである。

Kiev 5, Jupiter-12 35mm F2.8, RVP F

私は「鉄」ではないが,近所を走っている電車を撮るだけでも,実に楽しいのである。きれいに写ると,それだけでも,楽しいものである。

これだけのことで結論づけるのは性急であろうが,「キエフ5には,ジュピターの35mm F2.8がよくあう」と言い切ってしまいたい。
 Jupiter-12 35mm F2.8のよいところとしては,装着時のでっぱりの少なさも指摘しておこう。
 このレンズは,後ろ玉が大きく突き出した独特のスタイルをしているが,カメラに装着したときにはみだすのは,わずか2cmほどにすぎない。標準レンズJupiter-8NB 50mm F2と比較してみよう。これだけ違うと,カバンへの収まりが,ずいぶんと良くなる。

「キエフ5」では,望遠レンズを使うのも悪くない。レンジファインダーカメラ用のレンズは,一眼レフカメラ用のレンズにくらべれば小さい。小さいレンズを重く大柄なボディに取りつけて使うと,カメラブレしにくくなるように感じる。また,ミラーの動作がないことから,シャッターレリーズ時のブレもかなり防ぐことができる。ただ残念ながら,私の手元にある「キエフ5」用の望遠レンズは,JupiterではなくNikkorだ。撮影時のお天気等の関係もあるのだろうが,Nikkorでの描写はややあっさりしたものに感じられる。

Kiev 5, Nikkor-Q 13.5cm F3.5 'C', RVP F

今日,納品されたこのフィルムを眺めていて,「やっぱりフィルムで撮った写真はいいなあ」と一人で勝手に感動しているのであった。


← 前のページ もくじ 次のページ →