撮影日記


2013年02月23日(土) 天気:晴

動物園を楽しもう
裏側を知れば,おもしろさも広がる

私は,広島市民パブリシスト(*1)という活動に参加している。その集まりがあり,安佐動物公園職員の南方延宣(みなみがたのぶよし)氏のお話をおうかがいする機会があった。南方氏は,動物園でのできごとをユーモラスに紹介するマンガ「ヒヒ通」(*2)の作者としても,よく知られている。
 南方氏のお話によれば,動物園には「情報がいっぱい」とのこと。「情報」とは,「あることがらについてのしらせ」であり,判断や行動のために必要な知識である。そこに飼育されている動物のことを説明するありとあらゆるものが「情報」である。それは立札であったり,職員による説明や演示などであったりとさまざまな形をしているが,たしかに,「情報」に満ちている。動物園で飼育している動物だけではなく,動物園に勝手に入りこんでくる野鳥などについても,それがよく見られるあたりに説明の立札を設置したところ,来場者から好評だったということもあったそうだ。こんど,安佐動物公園に行くときには,そのような説明にも気をつけてみようと思う。
 安佐動物公園内にある説明には,南方氏によるマンガも活かされている。というか,動物園内での説明のために描いたマンガが,先の「ヒヒ通」としてまとめられた,ということである。このようなマンガを作成するにあたって「配慮」されていることも,いろいろと参考になるものがある。まず,ユーモアのためにはオチが必要だが,そのオチによって他人を傷つけることがないように配慮しているとのこと。さらには,書籍としてまとめるにあたっては,著作権の問題も避けては通れない。たとえば,動物のしぐさを有名なコミック作品に登場するキャラクタにたとえようとしたとき,そのキャラクタの名前を出すことに関して権利者に問い合わせたところ,それは「どうぞ,ご自由に」という扱いになった。一方,飼育している動物の反応を見るために「お面」を利用したエピソードでは,有名なキャラクタである「お面」を描くのに,権利者からは使用料を請求されたという(それが高額で,「お面」は架空のキャラクタに変更したとのこと)。こういう「線引き」は,現実の場面に直面しないと,なかなか理解が難しいものである。
 昨今は,blogなどで個人がいろいろな「情報」を発信できるようになっているが,「これくらいなら大丈夫」と,勝手な判断はしないのがいいだろう。「私的な使用だから」といっても,著作権法で「私的使用」による権利の制限があるのは「複製」についてだけで,ネットワークでの「公衆送信」は対象にならない。「非営利目的」の場合に権利の制限があるのは「上演・演奏」であり,さまざまな条件が関わってくる。基本は,権利者に「こういう目的で使っていいですか?」と問い合わせること。「ダメ」と言われたり,払いたくないくらいの高額の使用料を求められたら,潔くあきらめよう。

南方氏には,個人的にいくつか質問もさせていただいた。たとえば,キリンテラス(2012年9月2日の日記を参照)。キリンが餌を食べるところを間近で見られる,というのがウリの施設だが,やや見下ろす感じになる。地面から見上げるのとは違う視点だが,どうせなら「キリンの目の高さ」で見たいじゃないか。これについては,「身長130cmの子ども」がキリンの目の高さになるような位置に設計したことと,キリンがまだあまり成長していないことがあるとのこと。キリンが十分に成長したとき,やや屈みこんでみれば,キリンの目の高さで,キリンの食事が見られるというわけだ。もっとも,キリンにとっては迷惑な話かも知れぬ(^_^; ということで,その日,キリンの説明をしてくれた方は,どうやら南方氏だったようだ。描くマンガもおもしろく,安佐動物公園での説明も,違う場での講演も,いずれもユーモアたっぷりの楽しい説明である。南方氏の説明を聞けるだけでも,安佐動物公園を訪れる価値があるというもの。ただし,毎日,いつでも南方氏の説明が聞けるというわけではないようだ。

*1 広島市民パブリシスト (広島市)
http://www.city.hiroshima.lg.jp/www/contents/0000000000000/1168586103388/index.html

*2 オリジナルマンガ「ヒヒ通」 (安佐動物公園)
http://www.asazoo.jp/index.php?page_id=181


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