2025年12月06日(土) 天気:晴
「使い捨て」をアピールしていた「ラブポケットカメラ」
12月になると,少ないながらも忘年会の予定が入ってくる。今夜も1つの機会があったが,日中から夕方にかけていろいろとほかの予定が入りこんでいて,それらの終わりの時刻が読めなかったために,残念ながら遠慮することにした。
忘年会は,市内中心部方面でおこなわれることが多い。昨年末に入手した見慣れぬカメラは,忘年会の帰りにふと立ち寄った「ブックオフ」のジャンク品コーナーで見つけたものである。年末のあわただしいときだったために,そのときにはそのカメラの素性を調べることもなく放置することになっていたものである(2024年12月31日の日記を参照)。そののち,少しずつではあるが,その素性が見えてきたので,およそ1年遅れとなるがまとめておくことにする。
まず,そのパッケージを見てみよう。発泡スチロールのパッケージには,「LOVE POCKET CAMERA」という文字と,いかにもカメラらしいイラストが描かれている紙が巻かれている。この中身がカメラであることが,とてもわかりやすいものになっている。だからこそ,ジャンク品のなかからすぐに,見慣れないカメラがあると認識できたのである。パッケージにはさらにいろいろな情報が含まれており,目立つものとしては「カラーフィルム16枚+カメラで¥1,980」という文字が記されている。また,「MADE IN U.S.A.」という表示があり,輸入発売元として「(株)ラブカメラ・ジャパン」という名称が記されている。日本やドイツなどの,なじみのあるメーカーの製品ではなさそうである。また,アメリカの製品のようだが,コダックが直接に発売しているようなものでもないようだ。
パッケージを開くと,カメラ本体と説明書が出てくる。しかし,フィルムのパッケージは出てこない。この点については,このカメラの本体にとても注目に値することが書かれている。
「お客様へ 撮り終わりましたらDPE店へカメラごとお出しください」という文言からは,このカメラはフジの「写ルンです」と同じようなものであることがわかる。これは,「DPE店へ カートリッジフィルム同様に取扱ってください。」という文言からもわかる。また,それに続いて「現像C-41又はCN-16」とあることから,このカメラに装填されているフィルムが,カラーネガフィルムであることもわかる。
このカメラに関係する記事などがないか,国立国会図書館デジタルコレクションでさがしてみた。
見つかったもっとも古い記事は,1979年1月発行の「中部財界 新年特大」に掲載されている「使い捨てカメラ日本上陸」(*1)というものである。フジの「写ルンです」は,「材料のリサイクルなどをしているので,使い捨てカメラではない。」ことを強くアピールしていた。実際に,「使い捨てカメラ」ではなく,「レンズ付きフィルム」であると称している。また,1979年5月発行の「近代中小企業」では,「カメラまで使い捨て」(*2)というタイトルの記事で紹介されている。「写ルンです」の時代とは異なって,堂々と「使い捨て」を名乗っている。むしろ,「使い捨て」がスマートであたらしい時代の感覚であるととらえられていたのではないかと思えるくらいである。これらの記事では,このカメラを開発したのはアメリカのカリフォルニア州にある「ルアー社」で,日本では「ラブ」という名称で,「株式会社ラブカメラ・ジャパン」が取り扱っていると紹介されている。
さらに記事をさがしたところ,「日本カメラ」1978年9月号で「試用記 使いすて!ルアーポケットカメラ(田村彰英)」という記事があるのを見つけた。この記事では,「アメリカ,カリフォルニア州の…ルアー社が…開発」とあるが,日本国内での取り扱いは「株式会社アテント」となっている。ただしここでは,「ラブポケットカメラ」ではなく,「ルアーポケットカメラ」として紹介されている。日本で発売する前は,「ラブポケットカメラ」ではなく,「ルアーポケットカメラ」としてアメリカなどで流通していた状況が考えられる。また,記事の時期から推測すると,「ラブポケットカメラ」として日本で発売されるようになったのは,1978年末ころではないかと思われる。ただし,「株式会社アテント」と「株式会社ラブカメラ・ジャパン」との関係の有無は確認できていない。
なお,カメラの仕様については,レンズは2枚構成のF11のもので,シャッターは1/60秒のみ,フィルムは3M社のネガカラーで感度はASA 100のものであると紹介されている。使われているフィルムは,コダックのものではなかったようである。
1986年に発売された「写ルンです」を10年近くも先んじた製品であるが,これが世界初の「使い捨てカメラ」というわけではなく,先行する商品が存在していたようだが,そのあたりは,万一,実物を入手できたならば整理してみよう。
*1 「中部財界 新年特大」(1979年1月1日発行,中部財界社)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/2773802/1/21
*2 「近代中小企業」(1979年5月1日発行,中小企業経営研究会)
→https://dl.ndl.go.jp/pid/2653722/1/22
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