撮影日記


2025年03月08日(土) 天気:晴

ウメの開花は遅かった

この夏が猛暑だった反動なのか,この冬は寒波の勢いが強かった。ウメの開花が遅れているのは,そのせいのようである。近所に,赤い花を咲かせるウメが生えている。この花は,1月末くらいには咲きはじめ,2月10日くらいに見ごろ撮りごろになる年が多い。しかしこの冬は遅れていて,開花がはじまったのは2月の終わりころになってからである。そして今週になってようやく,見ごろ撮りごろといえる状態になってきた。まったく,例年にくらべると1か月以上も開花が遅れているのである。

SONY α7, Mamiya-sekor E 28mm F2.8

さて,このウメが生えている場所は,駐車場の隅である。人もクルマもよく通る,道からよく見える場所でもある。ここを通りがかった人がすこし足を止めて,スマートフォンを向けてその花を撮ろうとしているのはよく見かける。しかし,カメラを使って,さらには三脚を立てて撮ろうとしている人を見かけることは,ほとんどない。すぐ近くの緑道では,カメラをもった人の姿は珍しくないのであるが。  ちょうど通りかかった人たちが話している声が聞こえてきた。「ここの花はきれいなんだけど… 背後にマンションがあるから,あまり撮る気にはならない」という意味のことが含まれていた。その人たちは,スマートフォンでそのウメを撮っていたようであるが,すぐにそこを立ち去った。たしかに,その人たちの言うとおりだろう。背景が山だとか庭園だとかである場所で撮ると,ウメの花も引き立つだろうし全体としてきれいな風景になりそうである。しかしこの場所は,背景になるのが駐車場であったり高層のアパートであったり,全体的に無機質な感じがする場所である。こういう場所なので,漫然と撮ると,ごちゃごちゃしているだけでなにを撮ったのかわかりづらいものになりそうである。
 こういう場面では,まず背景を整理したい。安直ではあるが,TAMRON SP 90mm F2.5の出番となる。この種のいわゆる中望遠レンズで接写をすると,背景に余分なものが入りにくくなる。しかし,そうやって花だけを接写するのではおもしろくない。画面いっぱいを数輪の花が占めるような写真であれば,なにもわざわざこの場所で撮る必要などないのである。そう考えると,背景に位置する駐車場や高層アパートをなんとか利用してみたい。たとえば,背景に入ってくるクルマや建物などの無機質なものと,ウメの花とを対比できるような構図をつくるとよいかもしれない。そこで,駐車しているクルマのボディに反射する光を利用することにした。

Kodak DCS Pro 14n, TAMRON SP 90mm F2.5

ウメの花までの距離は数10pであるが,クルマまでの距離は数m以上ある。この状況で,花のほうにピントをあわせる。反射光の元は太陽であり,そのためそれは点状のものである。それをいわゆる中望遠レンズでピンボケにして撮ることになるわけで,大きな丸いボケができることになる。花とこの丸いボケとがほどよく重なる位置をさぐる。絞りは,当然ながら開放にする。これは大きなボケを得るためではなく,ボケの形を円形にするためである。この場合は,F1.2のようないた ずらに大口径なレンズは必要ない。F2.8ないしF3.5程度でじゅうぶんである。レンズに内蔵されている虹彩絞りは相当な枚数の絞り羽を使わないと,どうしても角(かど)のある多角形になってしまい,その形がボケにも反映されてしまうのである。絞りの形が反映されたほうが好都合な場面もあるだろうが,ここはそういう場所ではないと思っている。

Kodak DCS Pro 14n, TAMRON SP 90mm F2.5

カメラは今日も,Kodak DCS Pro 14nを使う。このカメラは,電子接点のないタイプのレンズを装着したときには内蔵の露出計がはたらかない。単体露出計を使うなど,別の手段で絞りの値や露光時間を決め,その値をマニュアルモードで設定することになる。煩雑ではあるが,画面内に逆光で強い光線が入ってくるときは,その光が露出計にどのように影響を与えるかが判断しにくい。そこはデジタルカメラを使うメリットを活用できるわけで,試し撮りをしてヒストグラムを確認しどの程度の露出にするかを判断することになる。そして,光の状況は安定しているので,いちど決定した絞りの値や露光時間を変更せずに撮り続ければよいことになる。つまり,カメラに内蔵された露出計が使えない,AEを利用できないというのは,この場面では問題にならない。いや,むしろ,カメラに内蔵された露出計に頼りすぎないのがよさそうな場面であるということになるのである。

Kodak DCS Pro 14n, TAMRON SP 90mm F2.5

少しずつ位置を変えながら,何枚か撮る。さすがに同じようなものばかり撮ていると飽きてくるので,こういうピントがどこにもあっていないような状態で撮ってみるのも,気分が変わるわけで,よいものである。

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