撮影日記


2025年02月12日(水) 天気:雨

多階調印画紙で撮る

一般に,4インチ×5インチ以上のサイズのフィルムで撮る写真は,大判写真とよばれている。大判写真用のシートフィルムとしては,4インチ×5インチのものと,8インチ×10インチのものが,常時,販売されている。そのほか,5インチ×7インチのものが販売されている場合もある。それ以外のサイズのもの,たとえば6インチ×10インチのものなどは,基本的に販売されていない。そのようなサイズで撮影するために,フィルムのかわりにモノクロ印画紙を使ってきた。モノクロ印画紙であれば,セーフライトの下で扱えるので,使いたいサイズにカットするのに都合がよい。そのかわり,ほぼ青色にしか感度がない(このような特性のフィルムは,「レギュラータイプ」とよばれる。現在のモノクロフィルムは,可視光域全域に感度がある「パンクロマチックタイプ」である),全体に感度が低い(富士フイルムの号数印画紙「フジブロWP FM2」は,ISO 3ないし1.5相当として撮影に使えた)という特徴があるため,ふつうのパンクロマチックなモノクロフィルムより扱いにくい面もある。
 印画紙での撮影では,これまで,RCタイプの号数印画紙を使ってきた。富士フイルムのフジブロ WP FM2というシリーズが,扱いやすく,比較的安価で,安定して入手できたからである。しかし,いまでは販売が終了している。買い置きしていたものも,使い切ってしまった。そこで,今後はどの印画紙を使うかを検討することにした。ヨドバシ.comあたりで安定して購入できそうな製品としては,イルフォード,オリエンタル,フォマから発売されるものがある。号数印画紙を発売しているブランドがあれば,そこから選択したいところであるが,いずれのブランドでもすでに号数印画紙は発売しておらず,製品としてラインアップされているものはすべて多階調紙(マルチグレードペーパー)である。
 つぎに,ラインアップされているサイズを確認する。撮影で使いたいサイズは,6インチ×10インチとカビネサイズIである。フォマおよびイルフォードの製品には,四つ切(12インチ×10インチ)のラインアップがなさそうである。また,各ブランドとも,カビネサイズのラインアップは用意していないようであるので,カビネサイズで撮りたいときは,5インチ×7インチの印画紙をカットして使うしかない。「印画紙ならカビネサイズのものがあるので,そのまま取枠にセットして撮影できる」というメリットは,失われてしまったようだ。ともかく,オリエンタル「イーグルVCRP-F」という多階調紙を買って,試すことにした。

フジブロWP FM2では,赤色のLEDナツメ球をセーフライトとして使用してきた。これを近くで照らしても感光していないようなので,引き続きこれをセーフライトとして使えそうである。
 感度はISO 3相当として,基準になる露光時間を決めた。クローズアップレンズを併用して等倍に近い撮影倍率にしているため補正をおこない,露光時間を4秒にしている。現像は1:2に薄めたミクロファインで液温は24℃で現像を開始し,360秒でほどよい感じになったので定着液に移している。

Symmar 210mm F5.6, Kenko AC CLOSE-UP No.2, EAGLE VCRP-F at F22, 4sec, Microfine 1:2 24℃ 360sec

スキャン後に反転処理をすると,いい具合にしあがってくれた。

Symmar 210mm F5.6, Kenko AC CLOSE-UP No.2, EAGLE VCRP-F at F22, 4sec, Microfine 1:2 24℃ 360sec

多階調紙は,ほとんど青色にしか感度がない号数印画紙にくらべると,黄色への感度がやや高い傾向がある。フィルムでいえばオルソタイプに近いものと考えられ,パンクロマチックのものほどではないが,レギュラータイプよりは扱いやすいと期待できる。Y2フィルタをかけて撮ってみたところ,一定の効果は見られそうである。

Symmar 210mm F5.6, Kenko AC CLOSE-UP No.2, Y2, EAGLE VCRP-F at F22, 8sec, Microfine 1:2 24℃ 450sec

ともかく露出の決定に関しては,これまで使ってきたフジブロWP FM2と同じ感覚で使えそうである。また,Y2フィルタの効果についても,いろいろ試してみる価値がありそうだ。

Symmar 210mm F5.6, Kenko AC CLOSE-UP No.2, Y2, EAGLE VCRP-F at F22, 8sec, Microfine 1:2 24℃ 450sec
← 前のページ もくじ 次のページ →