撮影日記


2023年09月24日(日) 天気:晴

ヒガンバナの色は赤とはかぎらない

古くから「暑さ寒さも彼岸まで」といわれている。早朝にはいくぶんか涼しさを感じることもあるが,日中はまだまだ暑い。気温が35℃をこえたという声はあまり聞かれなくなってきたが,よく晴れた日の昼間は,まだまだ夏の感触である。
 それでも季節は確実に変わっており,今年もヒガンバナが見られるようになってきた。少しばかり前後することはあっても,ヒガンバナは秋のお彼岸の時期に咲くのである(2021年9月19日の日記を参照)。お彼岸の時期に咲いてこそのヒガンバナである。
 ヒガンバナというと,赤い花を連想することが多い。しかし,ときおり白い花のものも見られることがある。白い花は,モノクロ撮影の被写体として都合がよい。

(unknown camera), Thomson Brothers lens, at F32, 10sec, FUJIBRo WP FM2

カビネ判の暗箱と,Thomson Brothersのレンズ(2023年4月30日の日記を参照)との組み合わせで撮っている。このレンズには,焦点距離などの仕様は記載されていない。写る範囲を,焦点距離のわかっているレンズと見くらべたところでは,おそらく350mm F8程度のレンズのように思われる。カビネ判サイズに350mmレンズで写る範囲は,ライカ判サイズで80mm程度のいわゆる中望遠レンズを使ったときに写る範囲に相当する。花を撮るには手ごろな焦点距離といえる。また,ここで使う暗箱は,蛇腹をじゅうぶんに伸ばすことができるので,それなりに被写体に寄ることができるので,なにかと都合がよい。ただ,この白いヒガンバナの咲いている場所に日光があたるようになるには,まだ時間がかかりそうだった。フィルムではなく2号印画紙(フジブロWP FM2)を使っているので,感度はISO 3相当くらいで扱う必要がある。かなり感度が低いため,このときは露光する時間を10秒にしている。そのため,どうしても風による被写体ブレが発生してしまう。

そこで,日光があたっている場所の花も撮ってみる。じゅうぶんに日光があたっているので,露光する時間は1〜2秒程度で済むはずだが,ここに咲いている花は赤い花ばかりである。印画紙は,赤いセーフライトの下で扱えるように,赤い色に対する感度が著しく低い(ほとんどない)。そこで,露光する時間は気持ちほど長めの4秒とした。幸い,このときはほとんど風がなく,被写体ブレも目立たない。

(unknown camera), Thomson Brothers lens, at F32, 4sec, FUJIBRo WP FM2

印画紙は,赤に対してほとんど感度がないことになっている。たとえば,フジブロWP FM2(RCタイプの2号印画紙)のデータシート(*1)に記載されている「分光感度曲線」では,おおよそ350nmから500nmの波長の色にしか感度がないように示されている。波長が350nmというのは紫色で可視光線の領域としてはぎりぎりのあたりである(これより波長が短いと,紫外線ということになる)。一方で,500nmというのは青緑色くらいにあたる。おおむね,青い光しか記録しないと考えてよいだろう。
 だから,赤い花はまっ黒にしか写らないかもしれないと考えていたのだが,実際に撮ってみると,それほどまっ黒でもない。意外と,薄い色に写っている。フジブロWP FM2は,赤よりは緑に感度があるはずだが,緑色の花茎と大差ないトーンになっているように見える。むしろ,影になっているせいか,花茎のほうが濃く写っている。
 赤く見える花でも,赤以外の光がそれなりに含まれているということなのだろう。どのくらいの濃さに写るのかは,実際に印画紙で撮ってみないとわからないようだ。

*1 データシート(フジフイルム株式会社) ※Wayback Machineのデータ
http://fujifilm.jp/support/filmandcamera/download/datasheet.html


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