撮影日記


2023年04月29日(土) 天気:雨

パトローネで絞り板をつくる

正体がよくわからない暗箱と,古そうなレンズとのセットを入手した。

前枠と後枠とが蛇腹でつながれた構造をしているが,前枠も後枠も倒すことはできない。いわゆるイギリス式の組立暗箱とは違ったもので,古いスタイルのカメラのようである。いわゆるテールボードカメラのようであるが,以前に入手したテールボードカメラ(2020年7月18日の日記を参照)とは違って,前枠も後枠もどちらもベースボード上を自由に前後することができる。ベースボードは途中で2つに折りたためるようになっているが,前側がかなり長くなっている。前枠と後枠を後側に寄せてベースボードを折りたたむと,厚みの面ではコンパクトになるがベースボードの前側が長く突き出ることになる。前枠と後枠を前側に寄せてベースボードを折りたたむと,設けられている留め金がうまくかかるようになるし,レンズを装着したままでも持ち運びやすいから,そのようにするのが正解だろう。ともかく,たたんでもあまりコンパクトにはならない。ピント調整は,前枠も後枠もどちらもベースボード上をスライドさせるだけであり,ラックとピニオンや,ウォームギアなどを利用した微動装置は設けられていない。そういう面では,簡素な構造になっているということができる。
 バック部の構造は,よく組立暗箱で使われる取枠を使うようにはなっていない。本来はどのような取枠などを使うようになっていたのかは,わからない。本体には,製造元などにつながりそうな文字などを見つけることができないまったくの,無銘な暗箱である。ただ,本体とピント板との組み合わせを示すと思われる数字(ここでは「2」)があることから,器用な人が自作したようなものではなく,それなりの工房などである程度は量産され,販売されたものであると考えられる。

実際に撮影に使うことを考えれば,ふだん使っている取枠を利用できると便利である。そこで,枠をつくって,ほかの組立暗箱のピント板を取り付けられるようにする。これで,カビネサイズ用の取枠を使った撮影ができるようになる。ただ,この工作は重大な失敗をしている。奥まった状態で固定するようにしたので,ピント板を縦位置にはめかえたときに取枠の脱着ができず,縦位置での撮影ができない。

 この暗箱とセットになっていたレンズは,シャッターも虹彩絞りも内蔵されていないタイプの古そうなものである。また,焦点距離や明るさ(F値)などを示す文字が見あたらないので,スペックもわからない。
 レンズを分解して観察したところ,前玉と後玉ともに3つの反射像が見えた。このことからは,どちらも2枚貼り合わせレンズであると考えられる。それで間違いないとすれば,このレンズは,アプラナット型あるいはラピッド・レクチリニア型などとよばれるタイプのものだと考えられる。

スペックがわからないので,露出計を内蔵したカメラにあてがってみた。数値のわかっているレンズと比較したところ,焦点距離はおおよそ350mm,明るさはおおよそF8のようであると判断できた。
 このレンズには虹彩絞りがないかわりに,鏡胴の側面にスリットがあいている。露出などの調整には,ここに絞り板を挿入する。残念ながら絞り板は1つも付属してこなかったので,実際に撮影に使うために絞り板をつくる必要がある。その材料として,135フィルムの金属パトローネがちょうどよい厚さで大きさのものである。

パトローネを開き,レンズに挿入できるように角を少し落とす。挿入したときにレンズの中心になる位置に小さな穴を開けて,そこからテーパリーマで穴を広げていく。それだけではじゅうぶんに広がらなかったので,さらにやすりを使って少しずつ広げていった。

このようにしてつくった絞り板を挿入し,露出計を内蔵しているカメラにレンズをあてがってみたところ,おおむねF32で使えそうな絞り板になっていた。とりあえずはこれで試し撮りをすることにしたい。
 使えるようにした取枠は,カビネサイズのものである。だから試し撮りには,フィルムではなく印画紙を使うことにする。いつも使っているフジブロWP FM2という印画紙で撮影する場合,日中の屋外で基準となる露光は,F22で1秒となる。同じ感覚で使うためにこの絞り穴をもう一回りくらい広げて,F22で使えるようにしたいところだが,とりあえずはF32のままでよいだろう。シャッターを内蔵していないレンズなのでキャップで露光を調整することになるわけだが,それならば露光時間が少し長めになるほうが都合がよいことになる。ソルントンシャッター(ローラーブラインドシャッター)などを用意するまでもない。


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