撮影日記


2020年08月16日(日) 天気:はれ

超広角レンズで撮る大判写真

現在,大判カメラとよばれるものは,シノゴ判(4インチ×5インチ)より大きなシートフィルムを使うカメラをさすことが多い。その画面の大きさや縦横比には,さまざまなものがある。わたしが使っている大判カメラの1つに,四つ切1/2判というものがある。これは,12インチ×10インチの四つ切印画紙を半分にした大きさである,6インチ×10インチの画面に撮影ができるというものである。一般的なカメラで使われるライカ判(36mm×24mm)よりはるかに大きく,さらに少し長細い画面になっている。

ライカ判のカメラでは,焦点距離が50mmレンズを標準レンズとよぶことが多い。そして,焦点距離が長くなるほど写る範囲が狭い望遠レンズとなり,焦点距離が短くなるほど写る範囲が広い広角レンズとなる。ライカ判のカメラでは,焦点距離がおおむね24mmより短いレンズは超広角レンズとよばれる。このとき,どれくらいの範囲が写るかを角度であらわすと,画面の対角線の方向でおおむね90度をこえている。
 画面が大きくなると,同じ範囲を写すためのレンズの焦点距離も,長いものになる。ライカ判のカメラで焦点距離が50mmの標準レンズを使うとき,画面の対角線の方向ではおおむね46度の範囲が写る。これと同じ範囲をシノゴ判で写そうと思えば,画面の縦横比が異なるので厳密な比較はできないが,おおむね焦点距離が180mmのレンズを使う必要がある。さらに大きな四つ切1/2判では,300mm以上の焦点距離のレンズが必要になる。四つ切1/2判はやや細長い形状をしているので,できるだけ焦点距離が短い広角レンズを使いたいと考えていた。そんなとき,FUJINON SW 120mm F8というレンズを貸していただけることになった(2018年10月21日の日記を参照)。

蛇腹を使った大判カメラは,レンズとボディに連動機構があるわけではないので,レンズを取りつけるボードの形状さえあわせておけば,どんなレンズでも取りつけられることになる。ただし,レンズにはイメージサークルというものがある。これは,良好な像を結ぶことができる円形の範囲をさしており,撮影に使うためには画面の大きさがこの円の範囲にはいっている必要がある。画面がイメージサークルをはみだすと,はみ出した部分がケラレるなど,良好な像が得られない。
 FUJINON SW 120mm F8のイメージサークルの大きさは,290mmとされている(*1)。四つ切1/2判の対角線の長さは,計算上は290mmをわずかにこえるが,実際に撮影するときは周囲が数mmずつ小さくなるため,ぎりぎりイメージサークル内におさまるようになる。FUJINON SW 120mm F8は,四つ切1/2判で使えるもっとも焦点距離が短いレンズの1つである(*1の表によれば,NIKKOR SW 120mm F8,Rodenstock Grandagon 115mm F6.8なども使えそうである)。このレンズを使った場合,対角線の方向ではおおむね100度の範囲が写ることになる。これは,ライカ判のカメラで18mmレンズを使うときに相当する範囲であるとみなすことができる。

イメージサークルの大きさは,絞りと撮影距離によって変化する。カタログ等で示されるイメージサークルの大きさは,絞りがF22,撮影距離が無限遠の場合のものである。そこから絞りこむほど,撮影距離が短くなるほど,イメージサークルは大きくなる。だから,被写体にごく接近して撮る場合は,イメージサークルに余裕が生じるので,四隅がケラレる心配が少なくなる。一昨日,まずはこれを確認することにした。

なお,現在は四つ切1/2判のフィルムは販売されていない。そのため,RCタイプの2号印画紙,フジブロWP FM2を半分に切って,フィルムの代用にしている。ISO 3から1.5くらいに相当するものとして露出を決めれば,おおむね良好な画像が得られる。

FUJINON SW 120mm F8, FUJIBRO WP FM2

印画紙で撮影する場合は,2号というやや軟調の印画紙を使っても,硬調になりがちである。ただしこの場合は,金属部分の質感が強調されるので,むしろ好都合ではないかと思う。

そして今日は,ごく近いものではない,それなりに遠方の被写体を撮ることにした。暦の上ではとうに秋であるが,まだ日ざしは盛夏のものである。太陽が高くのぼってくると暑さにまいってしまいそうなので,朝のうちに撮ることにした。8月6日も8月15日もすぎたからなのか,それとも今年は観光客が少なくなっているからなのか,それともまだ時刻が早い(7時ころ)からなのか,平和公園は空いていた。

120mmレンズで遠方にピントをあわせるには,このように無理に前枠を後ろにさげる必要がある。このとき,(意図的にアオるのでなければ)フィルム面とレンズボードとが平行になっているように,気をつけなければならない。

FUJINON SW 120mm F8, FUJIBRO WP FM2

「原爆の子の像」にお参りする人もほとんどなく,画面がケラレないように慎重に撮影することができた。そう,これくらいの距離であってもケラレないことが,あらためて確認できたのである。これからしばらくは,四つ切1/2判で撮るときは,もっぱらFUJINON SW 120mm F8を使うことにする。あくまでも借り物のレンズであるから,その間にしっかりと楽しませていただくつもりである。

*1 Large Format Lenses: specs (Large Format Photography . Info)
https://www.largeformatphotography.info/lenseslist.html


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