2019年08月01日(木) 天気:晴れ
「京セラ デ〇タルカメラ」は特殊なカメラ
接写用レンズの先端にリングライトを内蔵したレンズが,「メディカルレンズ」あるいは「デンタルレンズ」などの名称で発売されている。また,そのようなレンズを固定したカメラが「メディカルカメラ」あるいは「デンタルカメラ」などの名称で発売されている。このようなレンズは,医療現場(とくに歯科医で使われることが多いらしい)で必要とされているようである。
患部のみの写真を,至近距離からフラッシュで確実に撮るという,どちらかというと特殊な用途のレンズ(カメラ)であり,一般のユーザが趣味で使うために入手するような性格のものではなかった。したがって,販売された価格は高めであり,中古カメラ店にあらわれるときは「レア品」のような性格も加味されて,それなりに高価な値付けがされていた。
しかしながら,この分野でもフィルムによる撮影からデジタルカメラによる撮影に移り変わっている。交換レンズの商品であれば,デジタルカメラでも使えるのでそれなりの価格が維持されているようだが,レンズを固定したタイプのカメラは,ずいぶんと安価に入手することも可能になっている。
インターネットオークションに,KYOCERA DENTAL-EYE IIというカメラが出品されていた。リングライトを内蔵したレンズが固定された,「メディカルカメラ」「デンタルカメラ」の一種である。2006年には中古カメラ店で28000円の価格がつけられていたようだが(2006年10月16日の日記を参照),このたび見つけた出品物の開始価格は1円である。
いま,使いたいと思う人はそうそういないとは思うが,本体だけでなく,専用ハードケースとACアダプタも付属している。それなりに価格が競うことになるだろうと思っていたが,気がつくと開始価格のままで落札してしまっていた。ただし,落札価格の約1700倍の送料が必要であった。
固定装着されているレンズは,100mm F4というものである。大口径レンズではないが,リングフラッシュを内蔵しているために,鏡胴がきわめて太い。
カメラには,電動ワインダーが内蔵されている。そのため,巻き上げレバーはない。しかし,巻き戻しは電動ではなく,巻き戻しクランクを回しておこなう。また,フラッシュ撮影専用のカメラであり,AEモード切り替えやシャッター速度ダイアルのようなものもない。
背面には,電源スイッチがある。そのうえに「DA-1」という文字が見えるが,スチルビデオカメラKYOCERA DA-1 (2017年11月28日の日記を参照)とは関係ない。これは,「KYOCERA DATA BACK DA-1」というものである。KYOCERA 230-AFなどの「Let'sシリーズ」(この名称は,広く知られるようになっていたとは思えない… 2007年9月20日の日記を参照)用に用意されたオプション品で,日付などを写しこむことができるようになるデータバックである。
カメラの電源は,リチウム電池2CR5を使う。また,ACアダプタを使うこともできる。正面下部向かって左側には,ACアダプタを接続するための電源端子がある。右側には露出補正スイッチと,フラッシュのON/OFFスイッチがある。
ところが残念なことに,このカメラはフラッシュが発光しない。電源スイッチをONにすると,きゅぃーんというフラッシュがチャージする音が聞こえるので,発光しない理由として考えられるのは,発光管へつながるコードの断線か,発光管そのものの寿命がつきているか,だろう。
ともかく,接写用カメラとして使えないだろうか。試し撮りをしようとしたとき,このカメラの重大な「特徴」に気がついた。三脚に取りつけるためのネジ穴がないのである。
本来,このカメラは手持ちで撮影することが想定されていたのであろう。患部に近づいて,リングフラッシュで撮影する。フラッシュの閃光時間はごく短いので,手持ちでも手ブレの影響は少ない。至近距離から発光させるので,レンズもじゅうぶんに絞りこまれることになり,被写界深度がかなり大きくなる。三脚に据えて撮るような使い方は,そもそも考慮されていなかったのだ。
「カメラ」と,「撮影できるがカメラではないもの」(たとえば「おもちゃカメラ」や「スマートフォン」などがある)の境界線としては,いろいろな要素が考えられると思う。その1つの基準として,私は「三脚のネジ穴」を指摘したい。三脚のネジ穴のあるものが「カメラ」であり,ないものは「撮影できるがカメラではないもの」だ。たとえば,フジのCLIP-IT DS-10sは,三脚のネジ穴があるから,「デジタルカメラ」である。東芝のAllegretto PDR-2は,三脚のネジ穴がないから,「撮影のできるパソコンの周辺機器」である。
そう考えると,KYOCERA DENTAL-EYE IIは,三脚のネジ穴がないから「カメラ」ではなく,「撮影のできる医療機器」ということになるだろう。
ま,「カメラ」であるか否かの定義は,どうでもよい。KYOCERA DENTAL-EYE IIは,そのように「特殊なカメラ」なのである。
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