2018年02月13日(火) 天気:曇ときどき晴
コスパ最悪 12枚撮り SPDでモノクロフィルムに変身?
最近,「フィルムで写真を撮る」ことが流行しているらしい。しかし,メーカーから供給されるフィルムの種類は減少し,価格は上昇している傾向にあるのが現実だ。富士フイルムはまだ,供給するフィルムの種類が多いほうである。それでも,モノクロフィルムはNEOPAN 100 ACROSの1種類のみ(*1),カラーポジフィルムは4種類(*2)だけとなっている。カラーネガフィルムは7種類(*3)がラインアップされているが,そのうちNATURA 1600は2017年5月26日づけで(*4),X-TRA 400は2017年10月6日づけで(*5)それぞれ販売の終了がアナウンスされているから,実質的には5種類ということになる。
最近では,あえて「期限切れ」フィルムを使うという遊び方をする人も見られる。フィルムの使用期限を気にしなければ,もう発売されなくなった銘柄のフィルムを体験することも可能ということだ。ただしそれは,きちんと保管されたものではないかぎり,そのフィルムの本来の性能を味わえるというものではない。また,どのみち本来の性能が得られないのであれば実際とは大きく異なった調子の色を楽しもう,という発想だろうか,クロスプロセス現像を試みる人もある。これは,カラーポジフィルムをカラーネガフィルムとして現像すること,あるいは逆に,カラーネガフィルムをカラーポジフィルムとして現像することをさしている。そのようなイレギュラーな処理に応じてくださるのは,かぎられたお店だけのようであるが,フィルムで撮影したいというユーザの要望をささえているお店として,貴重な存在である。
ところで,カラーネガフィルムを,モノクロネガフィルムの現像液で処理したら,どうなるであろうか?
このようなイレギュラーなことを考えたのは,富士フイルムが発売するモノクロフィルムが1種類しかないからではない。
昨年,まとまった量の期限切れフィルムを入手した(2017年11月4日の日記を参照)が,そのなかに「12枚撮り」のフィルムも多く含まれていた。パトローネという金属ケースに35mm幅のフィルムがおさめられた「135フィルム」は,単に35mmフィルムともよばれて,もっともよく使われるタイプのフィルムとして流通している。パトローネにおさめられたフィルムの長さの違いにより,ライカ判(画面サイズが24mm×36mm)で何コマの撮影ができるかが決まる。富士フイルムから発売されているフィルムでは,「24枚撮り」「27枚撮り」「36枚撮り」の種類がある。現在はもう発売されていないようであるが,かつてはさらに短い「12枚撮り」というタイプのものも,各社から発売されていた。そのことからも,この「12枚撮り」フィルムが,それなりに古いものであることがご理解いただけるだろう。
撮影したフィルムは,現像処理しなければ画像が得られない。写真店に現像を依頼すると,当然ながら「現像料」を支払わなければならない。フィルムのパッケージには,「価格に現像料は含まれない」という意味のことが記載されているはずである。「36枚撮り」のような長いフィルムでは,やや高い現像料を設定しているお店もあるが,最近では「36枚撮り」でも「24枚撮り」でも同じ価格になっているお店も少なくない。現在は「12枚撮り」フィルムが発売されていないので,「12枚撮り」の現像料が示されていないケースもあるが,基本的には「24枚撮り」と現像料はかわらない。
趣味の世界にコストパフォーマンスの考え方を持ちこむのは実に無粋なことであるが,「12枚撮り」フィルムを使うことは,あまりにもコストパフォーマンスが悪いのである。自分で現像するならば,処理能力とフィルムの長さを勘案した運用も可能なのでコストパフォーマンスを改善できるが,「ナニワカラーキット」のようなお手軽な現像薬セットはすでに販売されていない(2012年11月21日の日記を参照)。
そこで,モノクロネガフィルム用の現像液で,カラーネガフィルムを処理したらどうなるか,たしかめたくなったのである。カラー画像は得られないとしても,モノクロフィルムの代用として使えれば,ありがたい。カラーネガフィルムとモノクロネガフィルムは,その構造が大きく異なるので,はたして実用になるのかどうか。たしかめるには,実際に現像処理をすればよい。
私がNEOPAN 100 ACROSの現像に利用している現像液の1つに,富士フイルムが発売している「ミクロファイン」がある。業務用パッケージのコニカカラー400を,NEOPAN 100 ACROSと同じ条件で,ミクロファインで現像してみよう。
なにも,写っていない?
いや,よく見れば,うっすらと像が見えている。
撮影時に,露出を誤ったのだろうか?いや,フィルムに焼きこまれているコマ番号などもほとんど見えないので,現像上の問題である。
ともあれこれでは,とても実用にはなりそうにない。
しかし,まったく像が出ていないわけではない。モノクロフィルム用の現像液にもさまざまな処方があるので,その違いによって結果に差が生じることがあるかもしれない。富士フイルムが発売している「スーパープロドール (SPD)」でも,NEOPAN 100 ACROSと同じ条件で試してみよう。
ミクロファインで現像したものよりは,像が見えている。
MINOLTA HI-MATIC S, Konica 400
MINOLTA HI-MATIC S, Konica 400
きちんとスキャナで読みこんでみたが,これならばなんとか使えそうである。なお,ISO 400のフィルムであるが,期限切れため感度低下を懸念して,カメラの設定をISO 200にして撮影している。
ミクロファインとスーパープロドールの成分の違いは知らないし,その違いがどのように影響しているのかもわからない。だが,スーパープロドールで現像するならば,カラーネガフィルムをモノクロネガフィルムの代用として使うことができそうである。
なお,今回はたまたまうまく画像が得られただけかもしれない。同様のことを試すときは,あくまでも各自の責任において実行すること。なんらかの問題が生じても,当方は一切責任をとらない。
*1 黒白フィルム(富士フイルム株式会社)
NEOPAN 100 ACROS (135-36(1本/3本パック),120(5本パック),4×5(20枚),8×10(20枚))
→http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/film/monochrome/film.html
*2 リバーサルフィルム(富士フイルム株式会社)
PROVIA 100F (135-36(1本/5本パック),120(5本パック),4×5(20枚),8×10(20枚))
Velvia 50 (135-36(1本/5本パック),120(5本パック),4×5(20枚),8×10(20枚))
Velvia 100 (135-36(1本/5本パック),120(5本パック),4×5(20枚),8×10(20枚))
Velvia 100F (4×5(20枚),8×10(20枚))
→http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/film/reversal/index.html
*3 カラーネガフィルム(富士フイルム株式会社)
NATURA 1600 (135-36)
SUPERIA Venus 800 (135-27,135-36)
SUPER PREMIUM 400 (135-27(1本/3本パック),135-36(1本/3本パック))
SUPER X-TRA 400 (135-24(3本パック),135-36(3本パック))
FUJICOLOR 100 (135-24(1本/3本パック),135-36(1本/3本パック))
PRO 160 NS (120(5本パック))
PRO 400H (135-36,120(5本パック))
→http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/film/color/index.html
*4 写真フィルム 一部製品の販売終了のご案内(富士フイルムイメージングシステムズ株式会社)
→http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0066.html
*5 写真フィルム 一部製品の販売終了のご案内(富士フイルムイメージングシステムズ株式会社)
→http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0072.html
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