撮影日記


2017年09月22日(金) 天気:くもり一時あめ

白一点

「紅一点」という語句がある。これは,多くの男性のなかに女性が1人いる状況を表現するときに用いられる。古い漢詩に「青葉の中に赤い花が一つ咲いている」状況を詠んだものがあり,そこに「紅一点」という表記が使われていることから,使われるようになったとされている表現である。
 これに対して,多くの女性のなかに男性が1人いる状況を表現する語句として,とくに定まったものはないようである。もとにできそうな適当な漢詩が存在しなかったのであろうか,あるいはそういう語句がそもそも必要とされていなかったのか。

今年も,そこらじゅうでヒガンバナが見られる季節になった。近所の公園でも,ヒガンバナが群れて咲く場所が何か所もある。有名なヒガンバナの群生地のような迫力はないものの,写真を撮るには十分な群れがいくつもある。

Kodak DCS Pro 14n, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

赤いヒガンバナが群れているなかに,白い花が1輪だけ咲いていた。
 この状況をあえて表現するならば,「白一点」という表記を使えるだろうか。
 「紅」の対となる色として,「白」は適当だろうか?運動会なら「赤組」「白組」だから,「紅」の対は「白」でもよいだろうか?「白」の対は「黒」が適当だろうから,「紅」の対を「白」にするのは誤りだ,という批判もできるだろうか?「紅一点」の由来を参照すれば,「青葉」の「青」あるいは「緑」がふさわしいかもしれない。そもそも,「白一点」のような語句は慣用的に使われていない,という批判もあるかもしれない。
 ともあれ,この状況をストレートにあらわしただけだから,「白一点」でもかまわないだろう。そこは,大目に見ていただきたい。

Kodak DCS Pro 14n, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

ここで撮っているあいだ,通りがかる人からなんども,「私も,そこに1つだけ咲いている白い花が気になっていたんですよー」と声をかけられた。木も多く植えられており,やや薄暗いところ,赤い花のなかに1つだけ咲いている白い花は,とても目立つ存在である。まわりの花におじけづくことなく,堂々と花を咲かせている。

Kodak DCS Pro 14n, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

白い花は,まわりの赤い花に引き立ててもらっているだけではない。見方を変えれば,貴重な明るい背景となり,赤い花から伸びる蕊の姿を,明瞭に浮かびあがらせてくれる。赤い花が群れているなかに咲いた,たった1輪だけの白い花だが,お互いに助けあい引き立てあっているのだ。

Kodak DCS Pro 14n, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

この場所では,昨年までは赤いヒガンバナしか咲いていなかったはずだ。少し離れたところには,白いヒガンバナが群れているところもあるので,そこから誰かによって運ばれてきたのであろうか?来年,この場所の白い花が増えているか,それとも,咲かなくなっているか,気をつけてみてみたい。


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