撮影日記 |
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2017年05月23日(火) 天気:晴Finepix F710に宿る「疑似パノラマ」の亡霊かつて富士フイルムは,「スーパーCCDハニカムSR」という撮像素子を,ディジタルカメラに採用していた。富士フイルムはこの撮像素子を,「面積が大きく感度が高い”S画素“と、面積が小さくダイナミックレンジを広くするための“R画素”を持ち、撮影シーンにより、これらの画素の信号を最適に組み合わせて画像を形成し約4倍のダイナミックレンジを実現。」(*1)として,強くアピールしていた。しかし,高性能を誇る「スーパーCCDハニカムSR」を採用した機種は,コンパクトディジタルカメラで2機種,APS-Cサイズのディジタル一眼レフカメラで2機種だけにとどまる。 FUJI FinePix F710での変更点としてもっとも目立つものに,背面の液晶モニタがワイド画面になったことがあげられる。 FUJI FinePix F700では「1.8型 約13.4万画素」のものだったが,FUJI FinePix F710では「2.1型ワイド 約17.3万画素」に変更されている。ワイド画面にあわせて,通常の縦横比4:3のほかに,16:9での撮影もできるようになっている。FUJI FinePix F700もF710も,どちらも撮像素子の有効画素数は620万画素(S画素:310万画素,R画素:310万画素)で,最大2832ピクセル×2128ピクセルで記録される。この画像は,4:3のものだ。FUJI FinePix F710には16:9で記録するモードがあり,このときは最大2816ピクセル×1584ピクセルでの記録となる。すなわち,4:3で記録するときの画素数は約600万画素になるが,16:9で記録するときの画素数は約450万画素にすぎない。これは,35mm判カメラで一時期よく見られた,天地をクロップしてつくる「いわゆるパノラマモード」と同じことである(2014年6月24日の日記を参照)。4:3の画像の上下をクロップして,16:9のワイド画面にあわせた画像を切り出しているのである。 フィルムカメラの「いわゆるパノラマモード」のときには,ファインダーにマスクが表示されて,フィルムの一部しか使わないことが直観的にわかるようになっていた。それに対してFUJI FinePix F710では,撮像素子の一部しか使わない「WIDEモード」のときには液晶モニタ全面に画像が表示されるのに対し,撮像素子の全体を使う「STDモード」のときには液晶モニタの一部にしか画像が表示されない。感覚として,逆になっているのである。しかも,「STD」と「WIDE」の切り替えは,とても操作しやすい場所にある。これは,不用意に動いてしまう可能性が高い,ということだ。そのため,意図せずして「WIDEモード」で撮ってしまい,600万画素のディジタルカメラを使っていながら,450万画素の画像しか得られないという,もったいないことになってしまう。 FUJI FinePix F710FUJI FinePix F710でつくることができる「ワイド画面」な画像は,ふつうに撮影して天地をクロップすればつくることができるものである。FUJI FinePix F710の「WIDEモード」は,まったくの余計な機能であり,存在そのものが迷惑なだけだと,ここで強く主張しておきたい。 FUJI FinePix F710
*1 ダイナミックレンジが4倍に向上した「スーパーCCDハニカムIV SR」搭載 デジタルカメラ「FinePix F700」新発売 (富士フイルム) |
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