撮影日記


2017年05月21日(日) 天気:晴

ACROSがなければ,FUJIBROで撮ればいいじゃない

富士フイルムが,またフィルムのラインアップを縮小するようだ。メーカーのプレスリリースとしてはまだ公表されていないようだが,販売店への通達があったとのことである。それによると,感度1600のカラーネガフィルム(Natura 1600およびそれを使った「写ルンです」)と,NEOPAN ACROSのシートフィルム(4×5判および8×10判)の販売が終了するとのことである。

写真が発明されたとき,感材の感度はきわめて低かった。ある程度普及したとされる「ダゲレオタイプ」でも,数分程度の露光が必要だったという。その後,湿板や乾板が発明され,感度も高くなり,動いているものを写しとめることができるようになった。ロールフィルムの感度がISO100程度になると,カメラの小型化や自動化もあいまって,日中での撮影に困ることはほとんどなくなった。
 さらに速いものを写しとめたり,暗いところでもフラッシュを使わずに写したりできる,高感度フィルムも市場にあらわれてくる。1983年には,KodakからISO1000の高感度フィルム,Kodacolor VR1000が発売された。同じころ,AGFAからはカラーネガフィルムと同じ処理をおこなうモノクロフィルムAGFAPAN VARIO XLが発売された。AGFAPAN VARIO XLは,ISO1600相当で露光しても良好なネガが得られると宣伝されていた。その後,富士フイルムからモノクロフィルムNEOPAN 1600 Super PRESTOやカラーポジフィルムPROVIA 1600などが発売され,高感度フィルムの種類も増えてきた。さらにコニカからはISO3200相当での撮影もできるKonica GX3200も発売されている。その後,各社とも,フィルムのラインアップを縮小させたりフィルムの製造から撤退したりしていった。富士フイルムのNatura 1600は,最後まで残った高感度フィルムだったということになる。
 高感度での撮影は,性能が著しく高まったディジタルカメラを利用すればよい,という考え方は間違っていない。しかし,フィルムの選択肢が減ることにより,表現手法が限定されることになる。なお,私はNatura 1600を使ったことがないので,この件についてのコメントはここまでにとどめておく。

私としては,NEOPAN ACROSのシートフィルムが販売終了になることが大問題である。大きなフォーマットは,七難を隠す。フォーマットの大きさは,正義なのである。ACROSがあったから,4×5判の撮影をお手軽に楽しむことができたのだ。
 しかし,販売終了になるというのであれば,対策を考えなければならない。ある程度の量を買いだめしたところで,いずれ使い果たしてしまう。これからしばらく継続的に楽しむには,もっぱら印画紙をフィルムのかわりに使うようにする方法が考えられる。富士フイルムの多階調印画紙は,この3月に販売終了になることが発表された(*1)が,幸いにも号数印画紙はまだ販売終了が発表されていない。2号印画紙があれば,撮影が楽しめる(2010年4月25日の日記を参照)。
 「ACROSがなければ,FUJIBROで撮ればいいじゃない」を実践するしかない。
 今日は,早朝からよく晴れている。さっそく,印画紙を詰めて撮影の準備だ。ただし今日は,FUJIBROを使わない。古くなってかなり劣化していると思われる,ILFORD MG-IVを使い切ってしまうことにする。

田植えが終わった直後の棚田では,まだ水面がよく見えている。

Okuhara Camera, FUJINON 210mm F5.6, ILFORD MG-IV

このILFORD MG-IVは残念ながら,古くなってカブリも生じているようだ。だが,印画紙で撮影するという感覚を思い出す練習はできたものと思う。

Okuhara Camera, FUJINON 210mm F5.6, ILFORD MG-IV

この種の組立暗箱では,アオリ操作はほとんど考慮されていない。それでもアオリができないわけではないから,このような撮り方も楽しめる。

もう一度,自分自身に言い聞かせておこう。

「ACROSがなければ,FUJIBROで撮ればいいじゃない」

FUJIBRO FM2だって,いつまでも使えるとはかぎらない時世だ。今をせいいっぱい,楽しむようにしたいものだ。

*1 黒白印画紙 フジブロ バリグレード WP(多階調) 販売終了のご案内 (富士フイルム)
http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0064.html


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