撮影日記


2017年04月30日(日) 天気:晴れ

縦型FinePixを見直そう

富士フイルムが発売する35mm判コンパクトカメラ「クラッセW」は,2014年4月をもって出荷が終了した(*1)。これによって,富士フイルムが発売するフィルムを使うカメラは,インスタントカメラ「チェキ」のシリーズと,中判カメラ「GF670 Professional」のシルバーボディのみとなっている。
 フィルムを使うカメラの出荷が減少した背景には,ディジタルカメラの高性能化と普及が考えられる。実際に,ディジタルカメラの出荷台数が増加するにともなって,フィルムを使うカメラの出荷台数が減少している。そして,2008年以降,一般社団法人 カメラ映像機器工業会が公表するデータ(*2)に,「銀塩カメラ」の数値が記載されなくなった(2011年7月19日の日記を参照)。一方でこのころ,コンパクトディジタルカメラの出荷台数がピークを迎える。フィルムを使うカメラを駆逐したコンパクトディジタルカメラも,その後,出荷台数が急減していく(2016年12月30日の日記を参照)。

カメラ出荷台数の変遷
(一般社団法人 カメラ映像機器工業会が公表するデータによる)

「FinePix」は,富士フイルムが発売しているディジタルカメラのブランド名である。エントリーモデルから高級機まで,さらにはレンズ交換式のディジタル一眼レフカメラまで,「FinePix」を名乗る多くの機種が発売された。現在,レンズ交換式のいわゆる「ミラーレス」カメラや高級コンパクトディジタルカメラとされる機種を含む「Xシリーズ」が主力になっており,「FinePix」を名乗る機種は,防水モデルの「FinePix XP」シリーズのみとなっている。フィルムを使うカメラが市場から消えていったように,一般ユーザ向けと考えられるコンパクトディジタルカメラは,「FinePix」というブランド名とともに静かな終焉を迎えるのであろうか。

さいしょの「FinePix」は,1998年に発売されたFUJI FinePix 700である。当時としては高画質モデルといえる,150万画素機として発売された。FUJI FinePix 700は,フィルムを使うカメラとは異なる,縦型の斬新なボディであったことも,話題になっていた。その後,FinePix 2700やFinePix 1700Zなど,縦型のデザインを採用したコンパクトディジタルカメラがつぎつぎに発表されていく。

FUJI FinePix 1700Z

FUJI FinePix 1700Zは,3倍ズームレンズを搭載した150万画素機で,1999年9月に発売された。発売当時,「3倍ズーム搭載メガピクセルカメラで世界最小・最軽量」をうたっていた(*3)。現在の感覚では,けっして小型でもなければ軽量でもないが,縦型のボディは意外と持ちやすいものである。
 せっかく入手したのだから実際に使ってみようとは考えたのだが,残念なことにバッテリーがない。ACアダプタを使用すれば使えるのだが,実際に携帯し持ち歩いて使ってみたいものである。

最近,インターネットオークションにおいて,ジャンクカメラのセットを「送料無料」で出品している人があったので,気になる機種が含まれているセットに入札し,いくつかを落札した。なかには,50円や100円程度で落札してしまったものもある。たぶん出品者の人にとっては,送料分がまるまる赤字であろう。送料にも満たない金額で落札したことについて,「お前は,人として平気なのか?」と問いたくなる人があるかもしれないが,たまたま競合者があらわれなかっただけのことである。出品者の人には申し訳ない気もするが,ありがたく受け取ることにする。

「気になる機種」の1つは,これである。

FUJI FinePix 4700Z

FUJI FinePix 4700Zは,3倍ズームレンズを搭載した240万画素機で,2000年3月に発売された。この機種は,富士フイルム独自の,「スーパーCCDハニカム」を搭載したさいしょの機種である(*4)。ディジタルカメラで使われるCCDという撮像素子では,1つ1つの素子が格子状に並んでいるが,スーパーCCDハニカムでは1つ1つの素子を8角形にしてさらに45度回転した状態で並んでいる。補間計算に有利になって2倍の画素数で記録できるようになるとともに,1つの素子あたりの受光面積を広くできて階調の面でも有利になる,とうたわれている。FUJI FinePix 4700ZのCCDは240万画素のものだったが,撮影した画像は400万画素のものとして記録されていた。
 この後,スーパーCCDハニカムは改良が加えられながら,CMOSセンサが主流になるまで「FinePix」の多くの機種で使われるようになる。はじめてスーパーCCDハニカムが搭載された機種として,ディジタルカメラにおける記念碑的な存在の機種の1つと言えるだろう。

もう1つ,「気になる機種」があった。

FUJI FinePix 6800Z

FUJI FinePix 6800Zは,3倍ズームレンズを搭載した330万画素機で,2001年2月に発売された。スーパーCCDハニカムのため,撮影した画像は600万画素のものとして記録される。600万画素あれば4つ切りくらいまではじゅうぶんにプリントできるので,一般的な用途であれば,これでじゅうぶんということになる。スペック面での魅力のほか,ポルシェデザイン社によるボディのデザインも大きな魅力である。

さて,ジャンク品として入手したFUJI FinePix 4700ZとFUJI FinePix 6800Zは,ACアダプタを接続することでどちらも動作を確認できた。さらに,FUJI FinePix 6800Zのほうには,バッテリーパックが残されていたのである。もし劣化して使えなくなっていたとしても,殻割してバッテリーを作り直せる可能性がある。
 さいしょのうちは,うんともすんともいわなかったバッテリーパックだが,なんどか充電を試みているうちに,短時間ではあるが使えるようになった。
 これら「縦型FinePix」を使うにあたって,大きな問題点が1つある。それは,記録媒体として「スマートメディア」を使う仕様になっていることだ。幸いにも,FUJI FinePix 1700Zを入手したとき,そのなかに128MBのものが残されていた。たまたま,ジャンク品のなかからFUJI FinePix 6800Z用の「クレードル」も入手していたのである。

FUJI FinePix 6800Zと専用クレードル

この連休中には,「縦型FinePix」の魅力再発見!をしてみたいものである。

*1 出荷終了品 (富士フイルム株式会社)
http://fujifilm.jp/personal/filmandcamera/filmcamera/oldproducts.html

*2 デジタルカメラ統計 (一般社団法人 カメラ映像機器工業会)
http://www.cipa.jp/stats/dc_j.html

*3 「デジタルカメラFinePix1700Z」新発売 (富士フイルム株式会社)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj479.html

*4 「デジタルカメラFinePix4700Z」新発売 (富士フイルム株式会社)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj592s.html

*5 「デジタルカメラFinePix4700Z」新発売 (富士フイルム株式会社)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj729.html


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