撮影日記


2015年10月31日(土) 天気:晴

ほっておいてもよく育つ!?
満開のミセバヤが存在を主張する

市内中心部でも,川沿いや公園の木々が色づきはじめている。山のほうは,まさに紅葉が見ごろなはずだ。底抜けの青空が広がる日も,続いている。だが今年はいろいろと用事があって,ゆっくりと写真を撮りに行けそうにないのが残念だ。とくに「三段峡」にはできるだけ毎年,欠かさずに訪れるようにしているのだが,今年は行けないかもしれない。
 「三段峡」では,多くの滝や淵,岩などのさまざまな姿を楽しむことができる。それらの多くには名前がつけられており,そのうちの1つに「玉緒滝」というものがある。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 75mm F5.6, E100VS (2003/11/01)

赤い岩肌に,水が細く流れ落ちている。そしてそのまわりには,色とりどりの葉が,ちりばめられている。「玉緒」(たまのお)という言葉は,辞書では「玉をつらぬいた緒」と説明されている。そして,「玉」は「美しい宝石類」,「緒」は「糸やひも」などをあらわしている。なるほど「玉緒滝」は,糸で結ばれた宝石が,赤い宝石箱に入った状態をイメージして名づけられたものなのかもしれない。

古くから園芸用に栽培されている花に,「ミセバヤ」というものがある。園芸種としてはありきたりなものなので,その名前を知らなくても「あ,見たことあるわ」と思う人は多いだろう。なお,原産地が不明とのことで,野生種とされるものは絶滅危惧種になっている(*1)。
 「ミセバヤ」は,別名「タマノオ」ともよばれる。「タマノオ」という名称は,伸びた茎に厚くて丸い葉がついているようすを,宝石を糸で連ねたように見たてているのだろう。そして,秋になるとその先に,ピンク色の小さな花をつける。その花は,ふんわりと大きな球状に咲いているが,よく見ると小さな花が集まったものであることがわかる。
 「ミセバヤ」は日本に自生している種もあるのだから,基本的に,日本の暑さや寒さに耐え抜いてくれる。つまり,栽培が容易である。葉の厚い多肉植物であることから察することができるかと思うが,寒い時期の過湿にさえ気をつければよい。「ミセバヤ」は多年草であるが,冬は地上部が枯れてなくなってしまう。だから冬は,雨や雪のかぶらないところに,鉢を隠しておけばよい。
 そうして存在を忘れられた「ミセバヤ」が秋を迎えて,その花を盛大に咲かせていたのである。このことからも,「ミセバヤ」の栽培の容易さが理解いただけるかと思う(笑)。

FUJI FinePix S2Pro, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

満開になっているのに気がついて,あわてて日光のよくあたる場所へ移動させる。さっそく,蜂がやってきた。移動させたのはもちろん,蜂のためではない。私自身がこの花をよく見て,そして撮影するためである。

FUJI FinePix S2Pro, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4

ややローキーに撮れば,「タマノオ」の名にふさわしい,豪華さを感じられる。

FUJI FinePix S2Pro, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4

逆にハイキーに撮れば,「ミセバヤ」の花の「ふんわりさ」が伝わるのではないだろうか。

FUJI FinePix S2Proで撮るとき,マニュアルフォーカスのニッコールレンズではオートフォーカスはもちろん,カメラに内蔵されたTTL露出計もはたらかない。しかしこのように,動かない被写体の接写というものは,どのみちマニュアルフォーカスを使いたい場面である。また,段階露出もしたいから,TTL露出計がなくてもなんとかなるものである。そして,撮像素子がライカ判よりも小さなAPS-Cサイズなので,本来よりも撮影倍率が大きくなる。標準マクロレンズが中望遠マクロレンズとして,望遠マクロレンズが超望遠マクロレンズとして使えてしまうのだ。
 「ミセバヤ」は,いまの時期にもっとも楽しめる花の1つであろう。

FUJI FinePix S2Pro, Ai Micro-NIKKOR 55mm F2.8S

*1 絶滅危惧種情報 (環境省)
http://www.biodic.go.jp/rdb/rdb_f.html


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