2015年09月23日(水) 天気:晴のち曇
シルバーウィークだから「クラデジ」を使ってみよう 使いやすさのポイントは撮影データの転送方法
このシルバーウィーク期間中には,古いディジタルカメラを「クラデジ」とよんで,その不便さを楽しんでみている。そんな「クラデジ」の不便さは,大きく3つある。
1つ目の不便な点としては,電池の問題がある。専用のリチウムイオン電池を使うものにくらべると,電池の持続時間があまり長くないことが気になる点である。ただしこれは,汎用の電池が使えると考えれば逆に大いなる長所となる。専用のバッテリーが劣化してしまったことで使えなくなる,ということがないからだ。「クラデジ」ではないが,FUJIFILM FinePix S2 Proはそういう意味で,個人的に高く評価したいディジタルカメラである(2015年9月14日の日記を参照)。
2つ目の不便な点としては,データの書き込み時間の問題がある。私が「クラデジ」とよぶディジタルカメラは,とにかく撮影データの書き込みに時間がかかるのである。画質が期待できない30万画素クラスのものでも,連写などとても考えられない。なまじ高画質を謳った「メガピクセル機」(100万画素をこえる撮像素子をもつディジタルカメラをさす)であれば,撮影データの書き込みに10秒近い時間がかかるものもある。そしてその間,そのディジタルカメラはいかなる操作をもまったく受け付けないのである(2015年9月22日の日記を参照)。
3つ目の不便な点として,撮影データの転送の問題を指摘したい。最近のディジタルカメラには,必ずと言ってよいくらい「USB端子」が設けられている。「USB」とは,Universal Serial Busの略であり,パーソナルコンピュータや周辺機器等とを接続し,データをやりとりするための規格の1つである。いろいろな機器が接続しやすくなっており,さまざまな周辺機器を接続してのパーソナルコンピュータの活用がおこないやすくなっている。パーソナルコンピュータとディジタルカメラとをUSBケーブルで接続すれば,ディジタルカメラの本体に内蔵したメモリカードのデータを,パーソナルコンピュータに内蔵されたハードディスクと同じような感覚で読み取りやすくなるので,たいへん便利である。USB規格の接続端子がパーソナルコンピュータに取り入れられたのは,1998年に発売されたWindows98以降のことであり,それより以前に発売されたディジタルカメラには,当然ながらUSB端子がない。
USB端子のないディジタルカメラで撮影した画像データを,パーソナルコンピュータに取りこむ方法は,いろいろなものがある。USB端子がなかったころのディジタルカメラにも,たとえばRS-232C規格に対応したシリアル接続端子などは装備されていた。パーソナルコンピュータ側のRS-232C端子はほぼ決まった規格になっていたが,小型化を追求したディジタルカメラ側の接続端子は,それ専用の小さなものになっている。したがってパーソナルコンピュータとディジタルカメラとを接続するには,専用の接続ケーブルが必要となる。また,RS-232Cで接続しただけでは撮影したデータを読み取れるようにはならず,さらに専用のソフトウェアを使ってデータを転送する必要のあるケースが多い。それらが付属品であればたいした問題ではないのだが,別売であるケースも少なくない。
初期のディジタルカメラでは,撮影したデータはディジタルカメラ本体内のメモリに記録されるだけのものもあったが,しばらくするとメモリカードを使うものもあらわれる。メモリカードを使うことができれば,パーソナルコンピュータにメモリカードの読み取り装置をつないでおくことで,いろいろなディジタルカメラのデータを読み取ることもできるようになる。はじめのころは,スマートメディアとよばれるきわめて薄いメモリカードがよく使われた。スマートメディアは,むき出しになった接点が大きいせいか,カードの抜き差しにあたって,なんらかの原因でデータが読めなくなることがある。
私が「クラデジ」とよんでいる時期のディジタルカメラでは,現代のディジタルカメラと違って,画質の面であまり期待できるものではない。それでもあらためて比較すれば,画質というか,ディジタルカメラによってつくられる画像にはなんらかの特徴が見られるようである。たとえば私の手元にある2機種の「クラデジ」のうちでは,TOSHIBA Allegretto PDR-2にくらべてFUJI CLIP-IT DS-10Sのほうが,いくぶんか写真として自然な雰囲気があるように感じる(2015年9月12日の日記を参照)。だから,TOSHIBA Allegretto PDR-2とFUJI CLIP-IT DS-10Sとの比較においては,どちらかというとFUJI CLIP-IT DS-10Sのほうを積極的に使いたい。
しかし,そこに問題が生じた。
FUJI CLIP-IT DS-10Sで撮影した画像をパーソナルコンピュータに取りこもうとしたとき,スマートメディアにエラーが生じて,データを取りこめなかったのである(2015年9月21日の日記を参照)。滅多に起こることではないが,やはりあってはならないことであるので,たいへんに困ることである。当然ながら,FUJI CLIP-IT DS-10SにUSB端子はない。
この点を重視すれば,FUJI CLIP-IT DS-10SよりもTOSHIBA Allegretto PDR-2のほうが使いやすい,ということになる。TOSHIBA Allegretto PDR-2も撮影データをスマートメディアに記録するものであり,USB端子はない。しかし,TOSHIBA Allegretto PDR-2は裏蓋がPCカードになっていて,パーソナルコンピュータのPCカードスロットに差し込めば,そのままハードディスクと同じように認識されるようになっている。
今日は,TOSHIBA Allegretto PDR-2を見直してみようと思い,いろいろと撮ってみた。装填したスマートメディアの記憶容量は,8MBである。いまとなっては「はぁ,なにそれ?」というものであるが,TOSHIBA Allegretto PDR-2で使う場合,ファインモードで96コマの撮影が可能である,十分な大きさのものなのである。
TOSHIBA Allegretto PDR-2, 4.9mm F2.8
無限遠に近い状態被写体は,非常にぼんやりとしか写らない。また,周辺減光の激しさが,よくわかる。そのかわり空の部分も暗く落ちるので,よい具合に濃い青空になっている。このような描写は,「トイカメラ」ファンの人に好まれるのではないだろうか?
TOSHIBA Allegretto PDR-2, 4.9mm F2.8
近いものでも,あまりはっきりとは写らない。看板に書かれたこの大きさの文字でも,読み取ることはかなり困難である。読み取りにくいのは,画素数が少ないことに加えて,固定焦点式のためにピントがきちんとあっていないということも大きく影響しているのだろう。
TOSHIBA Allegretto PDR-2, 4.9mm F2.8
この時代のディジタルカメラは,極端な明暗差にかなり弱いとされている。朝日のあたった車両の側面は,完全に飛んでしまっているし,左側の白い車両も白飛びしてしまっている。ここでは周辺減光が幸いしてか,朝日が反射していない部分の色はそれなりに残っており,全体としては「よくがんばっている」という画像になっており,意外と絵になっているのではないだろうか。
「クラデジ」は,現代のディジタルカメラにくらべると,画質面ではまったくお話しにならないくらいの差がある。しかし,「クラデジ」ならではの危うい画像も,たまには意外なよい面を見せてくれることがある。Lomographyのトイカメラで,その不安定さから生じる意外な画像を楽しむのと同じように,「クラデジ」を楽しむこともできそうである。
フィルムを使ったトイカメラでは,二重写りや光線漏れなどによってフィルムに不必要な露光があった場合,それが「意外な画像」につながることがある。それに対して「クラデジ」でメモリカードにエラーが生じたときは,画像がまったく得られず,「意外な画像」も得られない。「クラデジ」では,どのみちあまり期待できない画質にこだわるよりも,確実なデータ転送にこだわることのほうが重要なのかもしれないと思うのだが,どうだろうか?この点を重視すると,「クラデジ」かそうでないかは「USB端子の有無」で区別することになりそうだ。
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