撮影日記


2015年06月24日(水) 天気:明るい曇

狭い場所でも楽しめる「パノラマ写真の日」

「パノラマ写真の日」は,中判写真用の120フィルム(または220フィルム)用「パノラマカメラ」でよく使われる「6×12判」「6×17判」「6×24判」にちなんで,勝手に制定したものである。したがって「パノラマ写真の日」は,6月12日,6月17日,6月24日の3日となる。広辞苑によれば,「パノラマ写真」とは「広い視野を撮影した横長の写真」ということになっている。ただし広辞苑では,「広い」と「横長」の量が定義されていない。
 「横長」については,ライカ判(24mm×36mm)が「パノラマ」とは呼ばれず,6×12判ならば「パノラマ」と呼ばれることから,縦横比が1:1.5は「パノラマではない」フォーマットであり,1:2は「パノラマである」フォーマットだと見なされていると考えてよいだろう。
 「パノラマカメラ」には,超広角レンズが装着されていることが多い。たとえば6×17判のフジG617 professionalには105mmレンズが装着されており,80.3°の範囲が写るということになっている。縦横比が異なるので単純に比較はできないが,ライカ判だと25mmくらいのレンズで画角が80°くらいになる。そう考えればライカ判の天地をマスクした「パノラマフォーマット」(13mm×36mm)のカメラでも,24mmレンズよりも短焦点のレンズが装着されていれば,「横長」だけでなく「広い」についてもじゅうぶんに「パノラマカメラ」だということになりそうだ。
 ただ,「写真の長短比と大きさが写真の印象評定に与える影響」(大中・竹澤・松田,2003年)で述べているように,「広い」ではなく「横長」が重要だという指摘もあるようだ。

視角だけでパノラマ感を説明することはできず,長短比の要因が第一義的に関わっていることが確認された。

ということで,「パノラマ写真の日」をあらためて定義すると,「縦横比1:2よりも横長の写真を撮って楽しむ日」ということになる。6×12判の中判パノラマカメラで撮るのもよし,13mm×36mmの「パノラマフォーマット」で撮るのもよし,ふつうに撮影して1:2よりも横長にトリミングするのもよし。
 もちろん,レンズが回転するタイプのパノラマカメラで撮るのもOKだ。

今日も,LomographyのSPINNER 360°での撮影を楽しむことにした。
 「パノラマ写真」では「広い」ことよりも「横長」が重要らしいということはわかったが,どうしても「広い」というイメージが強い。だから,広く開けた場所で撮ろうと考えてしまう。だから今日は,あえて「狭い」場所で撮ってみることにした。さあ,どんな写真が撮れただろうか。

Lomography SPINNER 360,ACROS 100
Lomography SPINNER 360,ACROS 100

可部線の安芸長束駅で,ホームの先端付近で撮ったものである。安芸長束駅はすれ違いのできる駅であるが,そのスペースは4両編成の電車がすれ違うためのスペースとしては,あまり余裕がない。したがってホームの先端付近では,電車がごく接近して並ぶことになる。ホーム上の黄色い展示ブロックも,ホームの端までは設けられていない。ホームの先端はごく狭く,そこにはそれだけのスペースがないのだ。この狭さは,かつての阪神電車「春日野道」駅を髣髴とさせるかもしれない。幸い,可部線では特急列車が安芸長束駅を猛スピードで通過することはないのであるが。
 いま安芸長束駅では,この画面で言えば左側に,ホームを増設する工事がおこなわれている。ホームの反対側の端も狭く,そこで線路を横断する必要もある。そのためか事故も少なくない。この工事で,のぼりホームとくだりホームとをわけて混雑を解消するとともに,事故の要因も減らすことが目的だろう。

Lomography SPINNER 360,ACROS 100
Lomography SPINNER 360,ACROS 100

こちらは,横川駅のホームである。安芸長束駅とは違って,ホームにはじゅうぶんな広さがある。慌てて撮ったので,自分の手が写りこんでしまった(笑)。
 SPINNER 360°のレンズは,かなり短焦点である。強いパースペクティブがついているが,これは広角レンズを使うことで,「パンフォーカス」と「自分も写りこむこと」を狙っているものと思う。「自分も写りこむこと」を意識してつくられたカメラだから,油断すると自分(の一部分)は簡単に写りこんでしまうのだ。

Lomography SPINNER 360,ACROS 100
Lomography SPINNER 360,ACROS 100

川沿いにある,小さな神社の中心で,SPINNER 360°を回して撮った写真である。遠くまで見通しのある部分があると,SPINNER 360°のレンズが広角レンズであるため,その部分が間延びしてしまう。そして全体の形が把握しにくくなり,パノラマ感がかえって薄れるように感じる。このような狭い空間で撮るほうが,全体に安定し,パノラマ感が強くなるように思える。

Lomography SPINNER 360,ACROS 100
Lomography SPINNER 360,ACROS 100

これは,遠くまで見通せる部分があるが,その上部に覆い被さっている木も写っているので,安定して見えるのだろう。

Lomography SPINNER 360,ACROS 100
Lomography SPINNER 360,ACROS 100

これは,横断歩道を渡っているとき,電車の前で撮ったものである。Lomography SPINNER 360°のレンズが,どれくらい広角なのか見当がつくものと思う。

ところで「クラシックカメラ専科No.11」において,酒井修一氏は「パノラマカメラの歴史」を語るにあたって

…その後に出てきた超ワイドレンズ付きパノラマカメラは除外した

と述べ,土方健介氏は

…画面が細長いだけで,カメラ自体はワイドカメラ
従ってこの種のカメラをパノラマカメラのジャンルに入れることはいささか抵抗がある

などと述べている。「パノラマ原理主義」(?)的にいえば,レンズが固定されているものは,パノラマカメラではないことになるのだろう。また土方氏の記事では,レンズが固定されているカメラはあくまでも「ワイドカメラ」であってパノラマカメラではない,としているが,今回のSPINNER 360°での撮影結果を見ると,レンズ(またはカメラ)が回転するタイプのパノラマカメラでは,レンズは広角気味になっていないほうがよさそうに思われる。
 私は,「パノラマ写真の日」を勝手に制定したが,「パノラマ原理主義」者ではないから,レンズが固定された「ワイドカメラ」によるパノラマ撮影であっても,ライカ判の天地をマスクした13mm×36mmフォーマットのカメラによるパノラマ撮影であっても,同じように楽しめばよいと考えている。
 じつは,土方氏の記事をさらに読んでいくと,次のように書かれている。

…この種のあいまいな表現はカメラ界にはまだたくさんあるので,ある程度鷹揚に構えなければ,カメラ界の発展の妨げになる

「パノラマ原理主義」的な発想で,レンズ回転式あるいはカメラ回転式ではないカメラは「パノラマ」とは認めたくないということだ。しなしながらも,カメラ業界の発展を考えれば,「ワイドカメラ」でもパノラマ写真を楽しめばよいのだという態度になっているかと思われる。ということで,いまいちど,「パノラマモード」を見直してあげようではないか!

*1 写真の長短比と大きさが写真の印象評定に与える影響(大中・竹澤・松田) (立命館大学人間科学研究所)
http://www.ritsumeihuman.com/uploads/publication/ningen_05/171-186.pdf


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