撮影日記


2015年01月21日(水) 天気:曇

撮影の間隔が開くと 撮影の感覚も鈍るようだ

コダック製品の価格改定を告げるお知らせが,twitterを通じて伝わってきた。コダックのカラーネガフィルム,モノクロフィルム,処理薬等の大幅な値上げを告げるものである(*1)。あわせて公開されている価格表を参照すると,具体的には35mm判T-MAX 100の36枚撮りが680円から720円で値上げは小幅であるのに対し,24枚撮りは420円から790円と大幅に値上げして36枚撮りよりも高価になるという。このことは,24枚撮りというラインアップを廃止するつもりがあることを示唆しているのかもしれない。フィルムに関しては毎年のように,ラインアップの縮小と値上げが発表されている。
 日本カラーラボ協会が公開していたデータによれば,2010年度のロールフィルムの出荷量は,2003年度の8.5%ほどである(2011年7月7日の日記を参照)。そこまで減少していても,減少傾向は継続していた(*2)。日本カラーラボ協会によるこのデータの更新は,2010年度分をもって終了してしまった。それから5年,ロールフィルムの出荷量は,さらに減少しているだろうことは,想像に難くない。
 そのような状況のなかで,「まだ,この程度の値上げで済んでいる」ことは,感謝すべきことだ。

フィルムで写真を使うことにおける問題は,フィルムの入手そのものだけではない。撮影したフィルムを現像処理するインフラも,確保されなければならないという問題がある。当然ながら,現像のインフラもかなり限定的になってきた。以前は広島市内だけでも,カラーポジフィルムを現像しているお店や現像所が複数あったのに,いつのまにかカラーポジフィルムの現像施設を自前でもっているお店が見当たらなくなっている。ずっとお世話になっていたプロラボも,2011年1月に現像処理を終了してしまった(2011年1月19日の日記を参照)。ただ,取り次ぎはおこなっていただけるので,何本か撮影済みフィルムがたまったら,現像をお願いするようにしている。
 最近,フィルムで撮影する量が激減している。誤解の内容に言い訳をしておくと,これはフィルムのランニングコストに負担を感じるようになったからではなく,なにかと公私多忙で,写真撮影をする時間が確保しにくくなっているだけだ。
 昨年秋ごろ以降に撮影したフィルムが何本かたまっていたが,そのうち1本の「さいごの1コマ」を使い切れないでいた。それをようやく使い切って現像を依頼し,納品されたのが今日のことになる。現像料も少しずつ値上げされているが,それも「まだ,この程度の値上げで済んでいる」と,深く感謝している。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 75mm F5.6, E100VS

その「さいごの1コマ」は,1月11日の「とんど」のようすだ。
 とにかく「さいごの1コマ」を使ってしまいたかったので,手持ち撮影である。
 広角レンズを使ったし,被写体までの距離がじゅうぶんにあるのでピントのほうは問題ないが,撮影範囲がややずれてしまっている。マミヤプレスの場合,広角レンズを使うときはただでも背の高いボディの上にさらに背の高いファインダーをつけて使うことになるので,パララクス(撮影レンズが狙う位置と,ファインダーから見える位置とのずれ)の影響が半端ではない。パララクス補正機能があることはあるのだが,これはふだんから撮り慣れておかないと,なかなか思い通りの範囲をきちんと入れることは容易ではない。
 一眼レフカメラや,いわゆるライブビューの可能なコンパクトディジタルカメラでは,撮影レンズを通った像をファインダー(あるいは液晶モニタ)で見ることができるので,パララクスが問題になることはない。マミヤプレスのような撮影レンズとは別の光学系のファインダーを利用するカメラでの撮影で,問題になることである。
 しかもふだんの私は,フィルムホルダをピントグラスにつけかえて,大判ビューカメラのようにマミヤプレスを使うので,そもそもパララクスを意識した撮影になれていないのである。

ライブビュー撮影ができるディジタルカメラでの撮影を否定するつもりは毛頭ないのだが,そういう撮影ばかりしていると,きちんとした撮影ができなくなるのではないか?と,大げさなようだが感じてしまうのである。

納品されたフィルムには,昨秋に「三段峡」で撮影した写真が含まれている。ところがその多くが,アンダー気味である。アンダー気味というレベルや意図的なアンダー表現ではなく,ただの明らかな露出不足だろこれ,と言いたくなるようなコマもある。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 75mm F5.6, RVP F

あまりにアンダー過ぎる露出であれば,撮影のときに気がつくはずだ。露出計がなんと言おうと,「いくらなんでも,これはあり得んだろ」と。では,シャッターの調子が大幅に悪くなっているのか?そうであれば,先の「とんど」の写真もアンダーになっているはずだ。
 違いは,露出計だ。
 「とんど」の写真は,入射光式露出計で測光している。「三段峡」のほうは,反射光式のスポットメーターだ。スポットメーターでの測光とその解釈を誤った,ということか。

こういう撮影を,毎週のようにおこなっていたころもあった。最近は,1年に数回という惨状である。
 フィルムの市場は,年々厳しくなっている。フィルムでの撮影を好む者としては,ずっと変わらずに一定量のフィルムの消費を続けていくしかない。少なくなったとはいえ,フィルムは年間数1000万本単位で消費されてきた。1人1人が使う量はまさに微々たるもの,これが市場の維持に貢献すると考えるのは思い上がりかもしれない。だが,1人が1年間に1000本使うことが難しくても,1000人が1年に1人1本使っても,全体の消費量は同じである。使う人が増えることを期待するにも,まず自分が撮り続けることだ。それだけでなく,撮影の感覚を鈍らせないためにも,引き続きフィルムでの撮影を続けていかねばならない。撮ったらなるべく早く現像し,その結果を確認して次回にフィードバックしなければならないのだ。
 ピントも露出もぜんぶおまかせできる,ディジタル一眼レフカメラでの撮影ばかりでは得られないものが,フィルでの撮影で得られることだろう。

しばらく忙しい日が続くのだが,サクラの季節にはちゃんと写真を撮るようにしたい。
 だが冷静に考えると,そのころがいちばん,いま抱えている仕事が忙しくなるはずであることに気がつく。
 コダック製品が値上げされたことと同様に,現実はなにかと厳しいようだ…。

*1 ナショナル・フォート製品情報 コダックNews6 「コダックカラーネガフィルム、モノクロフィルム、ケミカル他価格改訂のお知らせ 2015.1.19」 (ナショナル・フォート)
http://www.nationalphoto.co.jp/1F/kodak_news_06.htm

*2 統計情報 国内フィルム市場の動向 ロールフィルムの国内出荷本数推移 (日本カラーラボ協会)
→http://www.jcfa-photo.jp/archives/bis/report/report07.html
http://jpia.jp/jcfa/archives/bis/report/report07.html#rep1


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