撮影日記


2014年7月21日(日) 天気:はれ

指にご注意 アクメルMDを使うなら

むかし,大阪付近の電車のドアには「指づめ注意」というステッカーが貼られている,と話題になっていたことがある。これはもちろん,「ドアに手の指をはさまないように注意してください」という意味である。ここでいう「指づめ」は「指をなにかにはさんでしまう」ことをさしているのだが,一般的に「指づめ」というと,暴力団構成員が謝罪等のために自分の指を切り落とすことを連想してしまうようだ。そのせいか,「指づめ注意」という表現は,いつしか「指にご注意」「手をはさまないように」などの表現にあらためられていった。
 さて,「指にご注意」しなければならないのは,電車のドアだけではない。
 写真を撮るときにも,指にはじゅうぶんに注意する必要がある。まずは,これを見ていただこう。

ACMEL MD, 15mm F3.5,ACROS

画面の右下を,なにかが隠してしまっている。そう,撮影者自身の指が,レンズの正面にかかってしまっているのだ。このような不注意をしでかしてしまうのは,このときに使ったカメラ「アクメルMD」の形態が,大いに関係している。

「アクメルMD」は,ミノックス判のフィルムを使うカメラである。絞りはF4.8に固定されているが,無限遠から0.3mまで目測だがピント調整ができ,電子制御のシャッターでAE撮影がおこなわれる。ピントと露出とをきっちりあわせることができるので,8mm×11mmというきわめて小さい画面サイズながら,シャープな写真を撮ることが可能なカメラである。ボディはプラスチック製で安っぽく,電子制御のために修理等に不安があるせいだろうか。あまりコレクターに注目されないようで,実用的なカメラでありながら,比較的安価に流通しているようである(2010年9月18日の日記を参照)。
 ともあれ,このような小さなカメラをふつうのカメラと同じように構えると,こんなことになってしまうのだ。

だから「アクメルMD」は,このように上下ではさむように持つのがいいだろう。

ここにさえ気をつければ,「アクメルMD」はとても愉快なカメラになる。なにせ,小さい。それでいて,電柱に貼り付けられたプレートの文字も読めるくらいには,きちんと写る。

ACMEL MD, 15mm F3.5,ACROS

問題は,フィルムの入手と,現像,プリントのインフラだ。「アクメル」シリーズが発売されていたころには浅沼商会からミノックス用フィルムが発売されており,ヨドバシカメラなど大手量販店でもよく見かけたものである。いま,ミノックス用フィルムの供給はシャランに引き継がれており(*1),クラシックカメラ専門店のようなお店でなければ,入手しにくい状況になっている。

ミノックス用フィルムは巻き取り側だけに軸があるマガジンに入っているが,幸いにも蓋が外せるようになっている。つまり,マガジンさえあれば,自分でフィルムを詰め替えて使うこともできるわけだ(2012年9月3日の日記を参照)。
 フィルムを販売しているお店であれば現像やプリントも受けつけてくれるとは思うが,自作フィルムも同じように受けつけてくれるかどうかはわからない。また,フィルムを自作する必要がある人は,近くにそういうお店がないという事情もあるはずだ。だから,自家現像ができるようにしておくと好都合である。
 9.5mm幅のフィルムを現像するためのリールやタンクは,いまとなってはやや入手難である。だが,フィルムが長くないので,フィルムが重ならないように両端をクリップで留め,やや深い容器を使うようにすれば,現像処理はそう面倒なものではない(もちろんそのためには,暗室が必要になるのだけれど)。プリントについては,ガラス入りキャリアを使えば,なんとかなるだろう(2011年10月6日の日記を参照)。もちろん,スキャナで読みこんでディジタル処理するのも,アリだ。

ACMEL MD, 15mm F3.5,ACROS
ACMEL MD, 15mm F3.5,ACROS

福山の「ばら公園」の駐車場の前にある廃屋が,以前から気になっていた。ドアが,この建物が「以前はちょっとおしゃれなお店だったのだよ」と,主張しているように感じるのだ。今日はたまたま福山方面に用事があり,ちょっと時間調整をする必要も生じたところ。こんなときに,ささっと取り出してささっと撮れる,ミニチュアカメラはじつに愉快である。
 できるなら「バイテンの日」などに,時間をかけて大判の印画紙で撮影するのがおもしろそうなのだが。
 ともかく,機械としての魅力にはやや欠けるものの,撮影するための道具としては「アクメルMD」は,なかなかに優秀なものだと思う。ただその大いなる欠点は,ピント調整レバーのところに印刷された目盛が,消えやすそうなことだ。私が入手した「アクメルMD」では目盛が消えかかっていたし,その後に見かけたものも,そこが薄くなっているものばかりである。

*1 シャラン用フィルム (株式会社シャラン)
http://www.sha-ran.co.jp/filmiso100.html


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