撮影日記


2013年04月11日(木) 天気:晴

八丁堀交差点を右折
路面電車からしか見えない風景もある

広島の市街地の特徴として,路面電車が走っているというものがある。かつて路面電車は,日本中の多くの町に走っていたが,時代が昭和になったころから次第に数を減らしていった。とくに,高度成長期においてのマイカーなど自動車の普及が,大きく影響している。自動車が急激に増加するなかで,都市中心部で道路の中央部を走る路面電車は「邪魔者」とされたのである。最近になり,都市の交通手段として路面電車が見直されるようになったとはいえ,路面電車の走る町が一気に増えたわけではない。現在,路面電車の走る町で自動車を運転した経験のない人も,けっして少なくはないだろう。
 先に書いたように,路面電車は「道路の中央部」を走行する。もちろん,道路の隅を走る路面電車もないわけではないが,もっぱら道路の中央部を走行するものである。路面電車も自動車も,みんなまっすぐに走るのならば問題ないのだが,道路には交差点というものがあり,そこでは自動車や電車が右折や左折をすることになる。左折するときには左端の車線に寄り,右折するときには右端の車線に寄ればスムースに走行できるようになるわけだが,路面電車はつねに道路の中央部を走行している。したがって自動車が右折するときには,路面電車の左側から右折することになる。右折しようと少し右にはみ出せば,直進してくる路面電車の走行を妨げることになる。だから右折車は,路面電車の線路にかからないように手前で待機することになり,広島に住んでいる人はそのあたり慣れているのであまり問題ない。しかし他県から来た自動車など,広島市内での運転に慣れない人などが,路面電車の走行を邪魔してしまうことは,どうしても起こりうる。
 まあ,路面電車があろうとなかろうと,右折車は対向車線の直進車の通過を待たねばならないので,右折車が多いとどうしても交通の流れが妨げられることになる。そのために,交通量の多い道路などでは,右折ができないように規制されていることがある。たとえば広島市内中心部で,東西方向の相生通りと南北方向の白島通り・中央通りとが交差する八丁堀交差点も,右折が禁止されている交差点の1つである。

しかし,ここに例外がある。この道路標識を見ると,「路線バスを除く」という文字が見える。相生通りを東進し,八丁堀交差点で中央通りのほうへ南に右折することが,路線バスに限っては終日,許されているということだ。
 もう1つ例外な事象として,路面電車がある。
 東西方向の相生通りは,電車通りでもある。ここは,広島駅と広島港(宇品)を結ぶ1号線の電車や,広島駅と宮島口を結ぶ2号線の電車などが走る,広島電鉄の路面電車にとってもメインストリートとよべるところである。そして八丁堀からは,白島線という支線が,白島通りを北へ伸びている。白島線は,八丁堀と白島とを結ぶ,全長1.2km(*1)の短い支線だ。白島線の電車は,この短い区間を行ったり来たりするだけで,宇品や宮島口方面へ直通することはなかった。そのためか,白島線だけを乗車する場合は,運賃がおとな100円で,ほかの市内線がおとな150円であるのにくらべて安価に設定されている。なお,八丁堀で乗り換えてほかの市内線へ直通する場合は,おとな150円となる。

白島線は,広島市内にさいしょに路面電車が開業したときの路線の1つである。ただし,開業当時は現在の白島通りよりも1つ西側の道路を走っていて,第二次世界大戦後に線路が移設されている。また,白島からさらに北への路線延長が提案されていたこともあったようだが,具体的なことは進展していない。結果としてずっと孤立した状態の白島線であるが,そこを走る電車は,夜間は江波の車庫にはいる。つまり線路はつながっており,白島方面から江波方面に,電車は八丁堀の交差点を右折して帰っていくのである。それがこの2月より,1日に7往復(休日は6往復)だけであるが,白島と江波とを直通する電車が運転されるようになった(*2)。同じく2月には,広電にあたらしい超低床電車が導入された(2013年2月24日の日記を参照)。この電車は,おもに7号線(横川駅前−広電本社前)と8号線(横川駅前−江波)で使われることになっているが,日中は一部が江波から白島までの直通運転にも使用されるという。要は,白島と江波との直通運転は,とりあえず試験的なものであり,朝と夜の便は,車庫の出入りのついでに営業運転をするもの,日中は新型電車のお披露目的なものということだろうか。
 ともあれ,白島発江波行の電車に乗れば,八丁堀交差点を右折するという貴重な経験ができるのである。

交差点を右折するのであるから,直進車の通過を待たねばならない。映像をよく見ていただければ,この交差点では自動車は右折してはいけないことになっているのがわかるだろう。ここを右折できるのは,いまのところ路面電車だけということである。
 ところで,路面電車は道路の中央部を走行しているため,右折のみならず左折のときにも直進車の通過を待たねばならない。右折や左折が多いと,どうしても路面電車はスムースに走行できなくなる。交差点を曲がる電車が集中すると,このように詰まった状態になる。

この状況だけを見れば,「路面電車は遅くて利用しにくい」という印象をもたれることも少なくないかもしれない。ただ,交通信号によって適度な間隔が保たれるわけで,このことによってむしろ「いつでも電車がやってくる」状態になると考えることもできる。地下鉄などとくらべれば,駅(停留場)の間隔も短く,信号を渡ればすぐに乗り場があるのは利用しやすい特徴といえるだろう。
 この映像で紹介したさいしょのシーンで,いちばん前に停車していたのは広島駅発の江波行き電車で,その次に停車していたのは白島発の江波行き電車である。本来であればもっとスムースに運行されていたはずのところに,白島発の電車が増発されたわけで,そのせいで詰まってしまったとも考えられる。平日の日中で乗客があまり多くないので,あとの電車が予定よりも早く追いついてしまったことも,要因として考えられるかもしれない。
 ともあれ,交通信号のために路面電車に乗っているとイライラする人があるかもしれない。だがもともと,そのあたりも考慮して運行時刻は予定されている。電車での所要時間をあらかじめ把握しておけば,なにもイライラする必要などないのである。

*1 電車路線図 ‐ 路線一覧・運行系統 (広島電鉄株式会社)
http://www.hiroden.co.jp/train/rosenzu/ichirankeito.htm

*2 新型超低床車両1000形の営業運行開始について (広島電鉄株式会社,2013年2月6日)
http://www.hiroden.co.jp/what/new/topic.htm#130206_train


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