2011年10月17日(月) 天気:晴
大きいことはいいことだ FP-ULは使いやすい大判カメラか?
昨日の日記のように,フジ「FP-UL」をステレオカメラとして使うのは,思ったよりも具合がよさそうである。これに味をしめて,いろいろ身の回りのようすを,ステレオ写真として記録していこうという気になってくる。
「FP-UL」の使い心地がよいのは,カメラの操作性が合理的だからだろう。そして,機械の耐久性や得られる写真などは,業務用として十分な品質を維持している。そしてなんといっても,実質4×5判の大判写真を,手持ちで撮影できるというところに満足感があるものと思われる。
より品質の高い写真を撮りたいならば,フォーマットは大きいほうがいいのは当然だ。原版が大きければ,プリントをつくるときの引き伸ばしの倍率も低くて済む。しかしながら,カメラが大きくなり,操作性や可搬性が悪くなる。撮りたいときに撮りたいところへ持ち出せないなら,結果として撮りたいものを撮ることはできない。どんなに高品質な写真を得られる機材を使っても,実際に撮れないのであれば意味はない。「FP-UL」は,屋外へ持ち出すときの利便性などは一切配慮されていないが,それでも一般的な4×5判カメラよりはよっぽど扱いやすい。
一般的な4×5判カメラといえば,たとえばこんなものだ。
こういうタイプのカメラは,「モノレール型カメラ」とよばれる。1本のレール(オプチカルベンチ)に,レンズボードやフィルムホルダを取りつけるためのスタンドが載っている状況をあらわしたことばである。このクラスのカメラは,レールや蛇腹を延長することもでき,短焦点レンズから長焦点レンズまで,至近距離の接写から無限遠の撮影まで,なんでもござれである。ただし,カメラは大きく重い。操作するべき箇所が多く,1カット撮るだけでもそれなりの手間がかかる。いわゆるファインダーというものはなく,構図やピントの調整は,フィルムホルダのかわりにピントグラスを取りつけ,そこに写った像を見ながらおこなう。とてもじゃないが,手持ち撮影は無理だろう。また,このクラスのカメラは,必要となる三脚の大きさもそれなりのものになる。
操作が複雑なのはよいとしても,モノレール型カメラはその大きさ,重さのために,屋外で使うには,それなりの覚悟が必要になる。屋外で使うには,木製の組立暗箱がよい。
木製の組立暗箱は,モノレール型カメラとはくらべものにならないくらい軽い。また,折りたためるので可搬性にもすぐれている。だが,やはりファインダーというものはない。構図やピントの調整には,ピントグラスを見ておこなうことになる。
組立暗箱は軽いので,比較的小型軽量な三脚でも十分に支えられる。しかし,組立暗箱には別の問題もある。それは,大きさの割には軽すぎることだ。軽量な三脚では,風に吹かれてカメラといっしょにふーらふらということにもなりかねない。
また,先に,組立暗箱は可搬性にすぐれているとは書いたが,それはあくまでも折りたたんだ状態のときである。撮影できるように組み立てた状態では,やはり持ち運びにくい。撮影場所まで持ち運んでも,実際に撮影できるまでにはひと手間が必要になるのである。
その点,「FP-UL」は扱いやすい。
撮影場所についたら,フィルムホルダを装着して,電源スイッチをONにするだけ。まあ,厳密に書けば,フラッシュを使わないときは「ON」ではなく「EXT.」の位置にするのだが,ともかく意味としては電源をオンにするということである。あとは露出をあわせてファインダーを覗き,構図を整えながらピントをあわせるだけ。その部分は,AE,AFのカメラでなければ,どんなカメラでも同じことである。
ただ,「FP-UL」のピント位置は1.2mに固定されているので,カメラが動いて被写体との距離を1.2mにあわせなければならない。ヘリコイドや蛇腹の操作でレンズを動かしてピントをあわせるという,一般的なやり方とはちがって違和感があるかもしれない。しかし,接写を楽しむ人ならお気づきかと思うが,接写のときにはカメラ全体を動かしてピントの微調整をすることだってあるじゃないか。結局は,同じことなのである。
ともあれ,「持ち運びがたいへんだ」「撮影に手間がかかる」という大判カメラのイメージを見事にぶちやぶってくれるところにも,「FP-UL」の魅力があるということだ。
そう,大きいことはいいことだ。
そんなに「いい」カメラなのであれば,「FP-UL」はもっと人気が出てもいいはずだが,話題になっているような雰囲気はうかがえない。インスタントフィルム用カメラというイメージが,大きく影響しているのであろう。インスタントカメラといえば,ポラロイドであれフジであれ,一部を除いてほとんど「おもちゃ」扱いである。また,はじめてインスタントカメラに興味をもった人としては,「このカメラにはどのフィルムが使えるのだろうか?」ということに悩まされたであろう。そして,インスタントフィルムの単価は,高いのである。
だからこそ,4×5判のシートフィルムも使える「FP-UL」に価値がある。
「FP-UL」は,もう「証明写真用インスタントカメラ」ではなく,「手持ちで使える大判ステレオカメラ」と考えることにしよう。これで,いいのだ。
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