2011年06月11日(土) 天気:雨のち曇
大森貝塚は2つあった! ここも「がっかり名所」なのか?
考古学とは,さまざまな痕跡の調査を通じて,人間の活動を研究する学問である。人間が関与しているという面で地質学とは異なり,文字などの記録に頼らないという面で歴史学とは異なるとされるが,まあそんなに厳密に区分されるものではないだろう。
東京の大森貝塚は,日本における考古学発祥の地とされている。1877年に,列車に乗っていたアメリカ人学者モースが,貝塚があることに気がついたということになっている。最寄の京浜東北線大森駅のホームには,そのことを記念する碑がたてられている(2010年3月18日の日記を参照)。ホームに碑が立っているわけだが,そこが貝塚だったというわけでもないようだ。大森貝塚の記念碑は,駅の近くにあるというので,そこも見に行くことにしよう。
大森駅を出て,道を右へ進む。300mほど進むと,「史跡大森貝塚」という案内が目に入る。
CASIO QV-R4, PENTAX ZOOM LENS 7.6mm-22.8mm
矢印が示すほうへ向かって歩く。
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名所だからといって,入場料などが必要というわけではない。
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深い砂利の道を通り抜けると,下へおりる階段がある。その向こうには,線路がある。なるほど,モース博士は列車に乗っていて貝塚に気がついたというわけだから,その場所は線路沿いにあるわけだ。
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階段をいちばん下までおりると,通路の途中に説明板があった。
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さらに奥へ,線路際まで進むと,そこに大きな碑があった。そう,碑があったのである。だが,それだけである。ほんとうに碑だけなのである。せめて,「モース博士が見た崖は,まさにここである」旨の説明があってもよさそうなものなのに。いや,どうせならその貝塚そのものが部分的にでも保存されていてもよさそうなものなのに。せめて,貝塚が復元されていてもよさそうなものなのに。
どこをどう見ても,碑だけなのである。
日本には「がっかり名所」と呼ばれるところがある。「がっかり名所」とは,ものすごく有名なスポットなのに,実際に行ってそれを見ると,「なんだ?こんなものか?」と「がっかりする」場所のことである。その代表的なものとして,高知の「はりまや橋」を指摘する人は多い。私も見たことがあるが,たしかにそれを目当てに訪れると「がっかり」するだろう。
ここ,東京都大田区の大森貝塚も,そんな「がっかり名所」の1つになるのではないだろうか。
実際に「がっかり」した私は,階段をのぼって大森駅に向かう道までもどった。そこで案内板をよく見ると,「大森貝塚は品川区にもあります」と書いてあるではないか。その場所は,大田区の大森貝塚から,品川区のほうへ300mほど行ったところとのこと。そこには,「大森貝塚遺跡庭園」という大きな公園があったのである。
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ここも,とくに入場料などは必要ないようだ。
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庭園に入ると,正面には地層のあらわれた崖が見えるではないか。しかし,近づいてよく見てみれば,やはりそれは「作り物」にすぎない。
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そばにはさらに,モース博士の胸像もあるものの,もしこれだけで終わりならば,やはり「がっかり」である。最後の望みをもって,線路際まで行ってみたものの,崖は固められており,そこに貝の含まれた地層が保存されているわけでもないようだ。
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結局「がっかり」して庭園の出入り口へもどる私の目に,妙なものが飛びこんできた。
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なかを覗きこんで,私はようやく「がっかり」状態から開放されたのである。そこには,実際の位置とは関連がないものの,貝の含まれた地層が復元されていたのである。
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なぜ,「大森貝塚」が2箇所もあるのだろうか?聞くところによると,モース博士が調査した貝塚の位置がはっきりしていなかったのが原因らしい。いまのところ,品川区のほうが,モース博士が調査した場所に近いという結論に落ち着いているとのことである。
復元されたものとはいえ貝の含まれた地層が見られることから,品川区の「大森貝塚遺跡庭園」は,大田区のには「大森貝墟碑」よりもはるかに見ごたえがあるものといえる。いずれにしても駅からも近く,ちょっと時間に余裕があるときにぶらぶら訪れるには,手ごろな場所であろう。しかしながら,結局はすべて「作り物」である。ここを目的にわざわざ訪れると,「がっかり名所」ということになってしまいそうではある。
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