撮影日記 |
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2016年05月21日(土) 天気:晴TはタムロンのT一眼レフカメラ用の交換レンズには,マウント部分を交換することで,複数のメーカーのボディに使えるようになっているものがある。一眼レフカメラがTTL測光や各種AEなどの機能をもりこむにつれて,交換マウントにも工夫がこらされ,ボディの多機能化に対応するようになっていった。しかし,オートフォーカス化するようになって,ボディとレンズとの間でやりとりする電気信号やさまざまな機械的な連動がさらに複雑になったせいか,交換マウント式のレンズは見られなくなった。 これは,アメリカの販売店から取り寄せた,TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4という55mm〜90mmをカバーするズームレンズである。「TAISEI-ROKUNAR」とは聞きなれない名前だが,泰成光学という名前に聞き覚えがあれば,「ああ,タムロンの初期のレンズね」と気がつくことだろう。タムロンのWebサイトに同じスペックで同じ外見のレンズが掲載されているが,その画像(*2)ではレンズ名が「TAMRON」になっているように見えており(「ON」の部分がはっきり見えており,その手前が「MR」になっているように見える),「TAISEI-ROKUNAR」ではない。タムロンの商標登録後の発売なので,日本国内向けには「TAMRON (PZ-55)」という名称で発売されたが,アメリカなどへの輸出用としては「TAISEI」という名が使われ続けたのだろうと,考えられる。 (ライカ判カメラ用のレンズであれば)50mmを「はさんだ」焦点距離の範囲をカバーしているレンズを「標準ズーム」レンズとよぶ習慣があるので,このレンズは「標準ズーム」レンズとはよび難い。とはいえこのレンズが発売された1964年には,50mmをはさんだ焦点距離をカバーするレンズは,Zoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5とZoomar 36-82mm F2.8くらしかなかった(2007年2月11日の日記を参照)。短焦点側が50mmくらいのズームレンズに範囲を広げても,ほかにはミノルタ(50-100mm F3.5),キヤノン(FL 55-135mm F3.5)くらいしか発売されていなかった。 ただし,私はこのレンズを,中古カメラ店の店頭で見たことがない。つまり,実際にはあまり売れなかったのかもしれない。とてもよく売れたとされるZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5が,中古カメラ店でポピュラーな存在であることと,好対照である。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4実際に撮ってみると,まっとうな写りを示してくれている。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4高倍率ズームがあたりまえな現在の基準では,1.6倍そこそこの倍率は,ほとんど冗談にも等しく感じられることだろう。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4前ボケについては,とくに気になることはなさそうである。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4しかし,後ボケについては,ぐるぐると渦巻いているようで,不安を感じさせられる。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4ともあれ,すなおな被写体であれば,素直に写ってくれる。 Kodak DCS460, TAISEI-ROKUNAR 55-90mm F4初期のズームレンズなので,描写には厳しい面があるかと想像していたので,意外な結果である。描写がややあやしいといわれるZoom-NIKKOR Auto 43-86mm F3.5にくらべて,全体のサイズ,短焦点側の焦点距離,開放F値などに,無理をしていないことが,すなおな描写に影響しているのかもしれない。
*1 タムロンの歴史 (株式会社タムロン)
*2 デジタル博物館 旧タイプ MFカメラ用レンズ (Tマウント〜アダプトマチック〜アダプトールシリーズ) (株式会社タムロン) |
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