2016年03月28日(月) 天気:曇のち晴
これも,オールドレンズブーム? NIKKOR-N Auto 24mm F2.8をディジタルカメラで
ライカ判における24mmレンズは,超広角レンズだろうか?
「超」がつくと,特殊なレンズのように感じられる。しかし最近では,標準ズームレンズや高倍率ズームレンズとよばれるレンズでも,24mmをカバーしていることは珍しくない。そう考えれば,24mmレンズは超広角レンズではない。
NIKKOR-N Auto 24mm F2.8は,一眼レフカメラ用の超広角レンズのラインアップがまだ不十分な時代に発売された。一眼レフカメラ用の広角レンズは,「逆望遠レンズ型」とよばれる構成をとるものが多い(*1)が,このタイプのレンズは近接撮影時に周辺の描写が悪くなるという性質があった(*2)。NIKKOR-N Auto 24mm F2.8は,その描写の悪化を防ぐ「近距離補正機構」がはじめて搭載されたレンズとなった(*2)。その結果,一眼レフカメラ用としてはじめての,周辺までじゅうぶんに高画質な超広角レンズとみなされるようになっている。
「ミラーレス」とよばれるレンズ交換式ディジタルカメラの遊び方の1つとして,「マウントアダプタ遊び」というものがある。マウントアダプタを介して,さまざまなレンズを装着して撮影を楽しむことをさしている。そのうちとくに,古いカメラ用の交換レンズを装着して撮影を楽しむことは,「オールドレンズ遊び」とよばれる。「オールドレンズ」としては,よく写るとして有名だったレンズや,歴史的に意味のあるレンズがとくに注目される対象となる。
NIKKOR-N Auto 24mm F2.8も,その写りを楽しむ対象としてふさわしいレンズである。
しかしながら,多くの「ミラーレス」カメラの撮像素子は,ライカ判よりも小さなものである。それでは,NIKKOR-N Auto 24mm F2.8の中心部付近の描写しか楽しめない。NIKKOR-N Auto 24mm F2.8は,周辺まで描写にこだわったレンズであるから,周辺まで含めて楽しみたいものだ。
昨年,ジャンク品のNikon F-501AFをニコイチして再生した。その残骸を組みあわせたところ,NIKKOR-N Auto 24mm F2.8などの非Aiニッコールレンズを,プログラムAEや絞り優先AEでお手軽に楽しめるボディができあがった(2015年3月25日の日記を参照)。今年はディジタル一眼レフカメラで,NIKKOR-N Auto 24mm F2.8を楽しんでみよう。
一眼レフカメラ用のニッコールレンズは,1959年のNikon Fの発売以来,カメラボディとレンズとを接合するマウントの形状が変わっていないという特徴がある。しかし,絞り機構の伝達などのしくみが変更され,ディジタル一眼レフカメラでは非Aiニッコールレンズを装着できなくなっている。唯一,2013年末に発売された「ニコンDf」というディジタル一眼レフカメラは,可倒式のAi連動ピンが設けられており,正式に非Aiニッコールレンズを装着できるようになっている。
だが,しかし。
非Aiのニッコールレンズを装着できるディジタル一眼レフカメラは,Nikon Dfだけだ!というと,それは大間違いである。正式に対応しているのはNikon Dfだけかもしれないが,2016年1月4日の日記にも書いたようにFUJIX DS-505Aは,非Aiのニッコールレンズの装着を妨げる各種の連動ピンが,なにもないことを忘れてはいけない。
FUJIX DS-505Aは,ディジタルカメラとしてはクラシカルな機種である。そうはいっても,その発売は1996年のこと。それに対してNIKKOR-N Auto 24mm F2.8の発売は,1967年。その間には30年という長い隔たりがあるが,実際に装着すると,とてもよく似合っている。なかなか,かっこよい。
そして,マウント内部のピンを適切な位置で固定すれば,AE撮影も可能になる(2016年3月17日の日記を参照)。固定には,細く切ったパーマセルテープでじゅうぶんである。
液晶ディスプレイに「A」が表示され,AE撮影が可能な状態になったことがわかる。
FUJIX DS-505Aの撮像素子は小さいものの,内蔵された縮小光学系によって,ライカ判サイズの像を小さな撮像素子にあわせて縮小して導いている。24mmの超広角レンズを,そのまま超広角レンズとして使えるのである。ただし,大口径ではないレンズを使うときは,その縮小光学系によってケラレが生じて実用にならないとされる。FUJIX DS-505Aの取扱説明書には,レンズごとにケラレの有無をまとめた表が掲載されているが,非Aiニッコールに正式に対応しているわけではないので,NIKKOR-N Auto 24mm F2.8でケラレが生じるかどうかは,はっきりとは示されていない。
ケラレが生じるのかどうか,生じるとしてどの程度なのか。実際に撮ってみれば,すぐわかる。
FUJIX DS-505A, NIKKOR-N Auto 24mm F2.8
残念ながら,かなりのケラレである。
FUJIX DS-505A, NIKKOR-N Auto 24mm F2.8
Lomographyなどトイカメラのマニアの人が,「トンネル効果だ」と大喜びしそうなレベルの,ケラレが生じている。
構図によっては,ケラレが気にならないこともある。
FUJIX DS-505A, NIKKOR-N Auto 24mm F2.8
ここで念のために書いておくと,NIKKOR-N Auto 24mm F2.8の周辺減光が激しいのではない。あくまでも,FUJIX DS-505Aに内蔵された縮小光学系によるケラレの影響なのである。
NIKKOR-N Auto 24mm F2.8のセールスポイントは,「近距離補正機構」である。接写も,ためしてみよう。
FUJIX DS-505A, NIKKOR-N Auto 24mm F2.8
四隅がケラレで暗くなっているが,近接した被写体でも,周辺で像が流れるなどの現象は目立たない。このレンズの,素性のよさが反映しているのであろう。
FUJIX DS-505A, NIKKOR-N Auto 24mm F2.8
画面内に光源が入るような逆光条件で,ここまで写ってくれれば文句はない。コーティングが古いレンズとしては,よくがんばっているほうだろう。
ディジタルカメラで古いレンズを使うことにもそれ特有のおもしろさがあるのだが,そこで語ることができるのはあくまでも「このレンズを使ったら,こんな写りだったよ」という事実だけである。決して,「このレンズの描写は,こういうものである」という評価をじゅうぶんに語れるわけではない。この点は,勘違いしてはいけないことだと思う。
*1 ニッコール千夜一夜物語 第十二夜 (株式会社ニコン)
→http://www.nikkor.com/ja/story/0012/
*2 ニッコール千夜一夜物語 第十四夜 (株式会社ニコン)
→http://www.nikkor.com/ja/story/0014/
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