撮影日記


2016年01月17日(月) 天気:雨ときどき晴

Kodak DCS460のファイルが開かない…
血路を開いてファイルを開く!

Kodak DCS460は,1994年に発売されたディジタル一眼レフカメラである。ニコンのF90シリーズカメラに,コダックのディジタルバックを組みあわせたものであるため,多くのニコンFマウントのレンズが使えるという特徴がある。また,撮像素子の画素数は600万画素になっており,この当時のディジタル一眼レフカメラとしては最高の性能を誇っていた。
 そんなディジタル一眼レフカメラを友人からいただいたのであるが,受け取ったときには残念なことに,動作しない状態であった。調べてみると,バッテリーが劣化していたために動作しなくなっている可能性が高いことがわかったので,ダイソーの単3型Ni-MH電池を8本内蔵させる改造をおこなった(2016年1月15日の日記を参照)。その結果,カメラは無事に起動したのである。

問題は,これで解決したわけではない。友人からいただいたときには,「動作が不安定である」「専用ソフトがないから出力画像がうまく開かない」という問題(2016年1月14日の日記を参照)が示されていた。いまの状態は,「カメラが起動した」というだけであって,これらの問題が解消したわけではない。
 ともかく,バッテリーインジケータも満充電を示すようになったので,なにか撮ってみよう。Kodak DCS460は,記録メディアとしてPCMCIAカード(PCカード)型のハードディスクを使うことが想定されている。170MBのPCカード型ハードディスクもあわせていただいていたのだが,今後も長く使うことを考えれば,CFカードで使えるとありがたい。手元にあった256MBのCFカードをアダプタを介して装填したところ,CFカードはきちんと認識されたようで,撮影可能枚数が「40」と表示された。そこで,ACアダプタを接続したまま室内で1枚,撮影した。「CARD BUSY」インジケータが点滅しはじめ,しばらくすると消灯し,撮影可能枚数が「39」に減った。正常に,撮影されたはずである。CFカードを抜いて,パソコンに画像を転送する。ファイルには「.tif」という拡張子がついているので,いわゆるTIFF形式だろう。TIFF形式であれば,一般的なものだ。これがうまく開かないとは,どういうことだろう?実際に開いてみると,そこにはごく小さな,モノクロ画像が表示されるだけである。

これが,600万画素の画像か?いや,ファイルの大きさは6MBくらいある。

「専用ソフトがないから出力画像がうまく開かない」とは,この現象を示していたのだ。

ところで,ディジタルカメラでは,撮影したデータを保存する形式を選択できるようになっていることが多い。扱いやすいJPEG形式で記録されることが多いが,とくにディジタル一眼レフカメラにはたいていの場合,RAWデータとして記録できる機能が用意されている。RAWデータとは,撮像素子から得られた画像データをそのまま記録している,と説明されることが多い。この形式で記録するメリットは,撮影後の画像データに対して,たとえばホワイトバランスや露出などを補正できる幅が大きいことがある。そのかわり,JPEG形式のように圧縮されていないのでデータが大きいことや,プリントなどに出力するためにRAWデータをJPEG形式などに変換する「RAW現像」とよばれる作業が必要になる。お手軽に撮影を楽しむのであれば,少々面倒な形式のデータである。
 RAW現像のためには,ディジタルカメラのメーカーが提供する専用のソフトウェアが必要であるが,いろいろなメーカーのいろいろな機種のRAWデータに対応したソフトウェアもいろいろある。最近,私は「RawTherapee」という名称のフリーソフトウェアを使っている(*1)。昨年9月に入手したFUJI FinePix S2Proは特別仕様のものだったらしく,JPEG高画質モードが使えなくなっていた(2015年9月18日の日記を参照)。ふつうに使うにはJPEG標準モードでじゅうぶんなのはわかるのだが,せっかく撮るなら,少しでも高画質で記録しておきたい。すると,RAWデータとして撮影するしかない(*2)のだが,FinePix S2ProのRAWデータを現像するための専用ソフトウェアは,もう富士フイルムから提供されていないようである。そこで見つけたソフトウェアが,「RawTherapee」だったわけだ。
 Raw Therapeeの説明を確認すると,Kodak DCS460のファイル形式にも対応していることがわかった(*3)。そこで,Kodak DCS460で撮影したファイルを,RawTherapeeで開こうとした。しかし,RawTherapeeの「ファイルブラウザ」に,撮影したデータが表示されない。RawTherapeeがKodak DCS460に対応しているという情報は,誤っているのだろうか?いや,最新の製品であれば対応が未完成だった可能性もあるだろう。マイナーな機種であれば,データの分析が不十分だった可能性もあるだろう。Kodak DCS460は,それにはあてはまらない。20年以上前から使われていた機種であり,業務用としてはそれなりに普及していたはずの機種である。では,Kodak DCS460に,TIFFファイルではなくRAWデータで出力する切り替え機能があるのか?取扱説明書(*4)を参照しても,それらしき記述は見つからない。

とにかく,Kodak DCS460で撮影したTIFFファイルを,なんとかしてRawTherapeeで開かせたい。そこで,ファイルの拡張子「.tif」をほかのものに変えてしまうことで,血路を開くことにした。手始めに,「.tif」を「.raw」に変更した。これによって,とにかく何かの機種のRAWデータだと認識されないだろうか。

その結果,RawTherapeeは,あっさりとファイルを認識した。

そして無事に,画像を得ることができたのである。

Kodak DCS460, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S

RawTherapeeで開いたファイルを,初期設定のままでJPEG形式に出力したものである。画像にはやや赤みがかかっているものの,緻密で色の変化も滑らかな感じがする。20年以上前に,これだけの画像が得られていたことに,強く感動する。これは,文句なく当時最高のディジタル画像だったことだろう。
 明日には,屋外に持ち出しての撮影も試みることにしよう。室内蛍光灯下では,ホワイトバランスが過度にはたらいて赤みが強くなったのかもしれない。また,内蔵させた単3型Ni-MH電池では,どれくらいのコマ数を撮影できるだろうか。
 まだ,Kodak DCS460の復活宣言をするわけにはいかないのである。

次ページへつづく

*1 RawTherapee Blog
http://rawtherapee.com/

*2 FUJI FinePix S2Proには,TIFF形式で保存するモードもあるが,このTIFFファイルは巨大なものになるので,とても扱いにくいのである。

*3 Supported Cameras - RawPedia
http://50.87.144.65/~rt/w/index.php?title=Supported_Cameras

*4 User's Manual KODAK Professional DCS410 DCS420 DCS460 NC2000e Digital Cameras (Eastman Kodak Company, 1997)
ftp://ftp.kodak.com/web/service/manuals/dcs/1h6359.pdf


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