撮影日記


2023年04月09日(日) 天気:晴

花の色と画像処理ソフトウェアの設定
(Kodak DCS PhotoDesk)

Kodak DCS Pro 14n

Kodak DCS Pro 14nは2002年にフォトキナで発表され,2003年5月に日本でも発売されるようになったデジタル一眼レフカメラである。
 このカメラ本体の内容は,フィルムカメラの中級機であったNikon F80に相当するものである。ただ,Nikon F80のボディをそのまま流用したものではなく,マグネシウム合金によるボディをあらたに作成したものである。それでも基本的に,あまり高級感はない。連続撮影は可能だが,最大で毎秒1.7コマにすぎない。それでもニコンFマウント用のデジタル一眼レフカメラとしては,はじめてライカ判サイズの撮像素子をもった製品である。当時,ライカ判サイズの撮像素子をもったデジタル一眼レフカメラはほかにはまだキヤノンと京セラの製品くらいしかなく,一定の完成度に近づきつつあったとはいえ,まだデジタル一眼レフカメラ全体が発展途上にあったともいえるだろう。
 Kodak DCS Pro 14nに感じる「発展途上」な点は,なんといっても動作が遅いことである。まず,電源スイッチをONにしてから,はじめの1コマ目を撮影できるまでに,10秒以上の時間がかかる。撮りたいときにさっと撮りたいならば,電源をつねに入れておきたいくらいである。だが,バッテリーの持続時間はそんなに長くはないので,こまめに電源を切りたいという葛藤もある。
 動作が遅いのは,電源を入れるときだけではない。撮影した画像の記録にも,かなりの時間がかかる。Kodak DCS Pro 14nでは,画像の記録形式として,JPEG形式かRAW形式かを選択できる。JPEGとRAWの同時記録もできる。記録した画像は,カメラの背面に内蔵されている液晶モニタに表示して,拡大表示やヒストグラムの表示などもできる。記録されるデータの画像データ大きさは,もちろん圧縮効果もあってJPEG形式のほうが小さくなる。だから,撮影した画像をメモリカードに書き込む時間はRAW形式で記録するときよりも短いものになる。しかし,カメラ内での画像処理が遅いせいか,JPEG形式で記録した場合,液晶モニタでの表示に時間がかかってしまう。とくに撮影結果を確認するために拡大表示をして画像をスクロールするときの遅さはまったく実用的なものとは思えない。

Kodak DCS PhotoDeskでルックプロファイルを適用する。

このカメラは基本的に,RAWで使うべきだと考えるほうがよい。そして「Kodak DCS PhotoDesk」という専用のソフトウェアを使って,JPEG形式に変換して使うことになる。RAW形式で記録した画像をJPEG形式に変換するときに「ルックプロファイル」を選択できる。これは,トーンカーブ調整のプリセット値だと考えればよい。「ルックプロファイル」はKodak DCS Pro 14nカメラでも設定できるが,その設定が反映されるのはJPEG形式で記録する場合だけである。

Kodak DCS Pro 14nカメラでもルックプロファイルを適用できる。

ルックプロファイルの内容についてKodak DCS PhotoDesk (ver.4.3.0)のヘルプにおいては,たとえば「Portrait Look」(ポートレイト)は,「コントラストを下げ,人肌をより滑らかに,リアルにします。」と,説明されている。また,「Product Look」(プロダクト)は,「高い彩度とコントラストを維持します。」と説明されている。目的や好みの差もあるが,「通常のコントラストで,シャドー部の彩度を下げます。」と説明されている「Wedding Look」(ウェディング)を基本に使うようにしておけばよいだろう。

 

たとえばこれは,「パープルプリンス」という紫色で一重咲のチューリップの花をRAWで撮り,異なるルックを適用した例である。なお,背景にある赤は「フラッシュポイント」の花である。

@ Portrait Reduced Lookを適用。
(低彩度ポートレイト「コントラストと彩度を下げ,人肌をより滑らかに,リアルにします。」)
A Event Lookを適用。
(イベント「通常のコントラストで,彩度を高くします。(シャドー部,人肌の彩度は上げません。」)
B Wedding Lookを適用。
(ウエディング「通常のコントラストで,シャドー部の彩度を下げます。」)
Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR 120mm F4

@のPortrait Reduced Lookでは自然な印象を受けるが,彩度が低めになっているため「パープルプリンス」と「フラッシュポイント」の色の違いがあまり目立たない。AのEvent Lookを適用したものでは,「パープルプリンス」の色がかなりきついものに感じられると思う。また,背景になっている「フラッシュポイント」の赤が飽和してしまっているように見える。BのWedding Lookでもかなり彩度が高く感じるが,赤が飽和してしまう直前で抑えられているように見える。

「アプリコットビューティ」と「クンユン」というチューリップを同じ鉢に植えたところ,ほぼ同時期の開花になった。草丈は「クンユン」のほうがわずかに高くなったが,似たようなものである。また,どちらも花の色がピンク系で,鉢としてまとまりのある状態になった。黄色がかったピンク色(アプリコット色)のほうが「アプリコットビューティ」で,やや濃いピンクで少し黄色い部分のあるほうが「クンユン」である。

@ Portrait Reduced Lookを適用。
A Event Lookを適用。
B Wedding Lookを適用。
Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR 120mm F4

@のPortrait Reduced Lookでは,「アプリコットビューティ」と「クンユン」との花の色の差が目立たない。少し背が低く,花びらの先端が尖っているほうが「アプリコットビューティ」である。AのEvent Lookを適用したものでは,「クンユン」の花の赤みが強調されているので,色だけでも区別をつけやすくなる。BのWedding Lookだと,@とAの中間くらいに感じられる。

彩度を極端にあげた画像は,見た目がやさしく感じられないし,とくに赤がすぐにべたっと飽和してしまいがちである。この赤が飽和しやすいという印象は,むかしのKodak DCS 460でも感じられたことである。逆に彩度を控えめにした画像では,花の色の違いがわかりにくくなる場合もある。花を撮るときには,彩度をあげすぎないように「Wedding Look」を基本的に使い,赤みが強い花の場合は飽和しないように「Portrait Look」などを適用するようにし,色の区別がつきにくそうなときには色飽和に気をつけながらもあえて「Event Look」を使うことも必要である。
 RAW形式で記録しておけば,撮影後にKodak DCS PhotoDeskで適用するルックプロファイルをいろいろ試しながらJPEG形式に変換できる。こういう点も含めて,Kodak DCS Pro 14nを使うときは,JPEG形式で記録するのではなく,RAW形式で保存するのがよい。


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