撮影日記


2018年05月11日(金) 天気:晴

初の28-210mmレンズ? キロン28-210mm F3.8-5.6を救出

八百富写真機店の大阪駅中央店は,JRの大阪駅と,地下鉄や阪急・阪神の梅田駅との間で乗りかえるときに,立ち寄りやすい位置にある。逆に考えれば,とくに用事がなくてもついつい立ち寄ってしまうという,巧妙な「罠」として存在しているのである。今日も当然のように,自然と足がそこへ向いてしまうのである。

具体的にほしいものがあって,それをさがしているわけではないから,求めるものは,なにか「安くて,おもしろいもの」だ。したがって,ジャンクコーナーに並べられているカメラやレンズを,1つずつ見ていくことになる。たぶん,同じようなことを考えている人は,少なくないのだろう。ジャンクコーナーには先客があり,私の後に来た人もあった。
 ジャンクコーナーに,大きくてきれいなレンズがあった。ちょっと手にしてが,もちかえてじっくり見ようとひとまず横においた。すると,後から来た人がそれを取り,じっくりと調べはじめたではないか。
 横取りされたような気分だが,しかたない。もちろん,文句を言う気など,さらさらない。
 後から来た人は,それを抱えたまま,ほかのものも物色している。
 しばらくすると,なにを思ったのかその人は,レンズをもとの位置へ戻した。なにか,納得のいかない要素があったのだろうか?レンズが戻ってきたということは,私が救出しなければならないという,定めなのであろう。
 リングの動きや絞りの動きには,とくに問題ない。大きなカビやクモリも見られない。M42で位置決めピンのようなものもなく,自動絞りのピンがあるだけ。また,自動絞りにもマニュアル絞りにも切りかえられる。使える機種に制約は少なそうなので,もう迷うことなく救出した。

KIRONというブランドのズームレンズで,28-210mm F3.8-5.6というものだ。
 28-200mmをカバーするズームレンズとしては,1992年に発売されたTAMRONの71D (28-200mm F3.8-5.6 ASPHERICAL)というものが有名だ。このレンズには,最短撮影距離があまりに長い(2.1m)という短所がある。描写についても,いまひとつシャープには感じられない。それでも,コンパクトな筐体ながら28mmから200mmまでの範囲をカバーできる魅力は,とても大きいものであった。

TAMRON 71Dはその後,アダプトール交換マウントに対応した71A,IF方式(中央部のレンズ群が移動することでピントをあわせるようになっているもの)になり最短撮影距離の問題が改善された171Dなど,モデルチェンジがすすんだ。そうとうなヒット商品になったようで,このシリーズのレンズは,中古カメラ店でもよく見かける。そのため,28-200mmクラスのレンズといえばタムロンだ,という印象をもっている人も少なくないかと思う。

TAMRON 71Aでの作例。

しかし,28-200mmクラスのレンズを最初に発売したのは,タムロンではない。TAMRON 71Dが発売される以前に,COSINAやSIGMAから,28mmから200mmをカバーするズームレンズが発売されている。たとえば,日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.88」(1987年)には,次のような製品が掲載されている。

COSINA コシナ 28-200mm F3.8-5.6 MC マクロ
 SIGMA  シグマ ズーム・AFイータ 28-200mm F4-5.6

どちらが先に発売されたのかは,確認できていない。しかし,TAMRON 71Dより5年くらいは早く,28mmから200mmをカバーするズームレンズは,発売されていたのである。

このとき発売されていた28-200mmクラスのレンズは,COSINAとSIGMAの2本だけではなかった。
 KIRONもあったのだ。
 しかし,KIRONはさらに目立たない存在であった。COSINAもSIGMAも日本カメラショーに出展しており,「カメラ総合カタログ」にもページを確保していた。しかし,KIRONは,日本カメラショーには出展していなかったのだろう,「KIRON」というページは確保されていない。ただ,途中に挿入された,近江屋写真用品の広告に載っていただけである。
 なお,近江屋写真用品は写真用品ショーのほうに出展しており,「写真用品ショーカタログ」にはそれなりのページ数を確保している。しかし,そこにはKIRONのレンズを掲載していない。

1本で28mmから200mmまでをカバーできるズームレンズというものは,とても便利そうに思える。しかし,COSINAにせよSIGMAにせよ,そしてこのKIRONにせよ,あまりに大きく重いのである。これらの商品を中古カメラ店で見かける機会は少なく,発売当時にヒットしたようには思えない。あまり売れなかったとすれば,この大きさや重さにも,大きな原因があったのではないだろうか。

ところで,28-200mmというズームレンズをさいしょに発売したのがCOSINAなのかSIGMAなのかは,確認できていない。しかし,28-210mmというズームレンズは,このKIRONのレンズがさいしょなのではないだろうか。まあ,こういうときの10mmの差に,大きな意味があるとも思えないが。


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