2017年05月14日(日) 天気:晴
期限切れフィルムに あえてAPSを使う意味をさがす
かつて,「APS」とよばれる規格の製品があった。それまで主流だった135フィルム(パトローネ入り35mmフィルム)にかわるものとして,使いやすくコンパクトで多機能な製品をめざすものだった。しかし,135フィルムのシステムにかわって主流となることはなく,写真のメディアがフィルムからディジタルデータに移行するなかで,早々に姿を消した。いまとなっては,APSでの基本となる画面サイズ(APS-C)が16.7mm×23.4mmだったことから,これに近い撮像素子をもつディジタルカメラに「APS-Cサイズ」という表現が残っているくらいである。
「APS」が登場した当時は,各メーカーともにあたらしく市場が広がることを期待していたのであろう。簡便なカメラだけでなく,システム一眼レフカメラも投入されてきた。Nikon PRONEA 600iは,APSの一眼レフカメラの1つである。
個人的に「APS」に対しては,ずっと懐疑的に思っていた。そのため,私はニコン様を厚く信心する者であるが,PRONEAシリーズにはほとんど関心をもつこともなく,積極的にそれをお迎えしようとも考えなかった。しかし,偶然にもNikon PRONEA 600iを入手してしまう(2017年2月4日の日記を参照)。入手したからには,いちおう使ってみようと思う。ちょうど,いろいろな花が撮りごろである。
APSカメラで使うIX240フィルムの販売終了が発表されたのは,2011年のことであった(2011年7月6日の日記を参照)。すでに通常の市場では,フィルムは流通していない。オークションサイトでたまに,強気の価格での出品が見られることがある。リサイクルショップでは逆に,値段がつかずにジャンクコーナーにころがっていることが,たまにある。それらはもちろん,有効期限が過ぎている。APSの「写ルンです」がいくつか手元に残っているので,フィルムを抜き取って(2006年3月14日の日記を参照)使ってみることにした。著しく劣化しているかもしれないが,そのまま朽ち果てさせてしまうよりは,いいだろう。
いまさらAPSカメラを使うにあたって,フィルムを確保することのほかに,確認しておくべき重要なことがある。それは,現像を受け付けてもらえるかどうか,という点だ。撮影をすませたIX240フィルムを近所の「カメラのキタムラ」にもっていったところ,幸いにもまだ現像は受け付けていた。ただし,いまとなっては店内の機械では処理できず,「工場送りになる」とのこと。そのため,納期は1週間くらいになる。
今回,現像を依頼するにあたって,「フジカラーCD」の作成をお願いした。今回の撮影は,使えるかどうかわからないカメラとフィルムの試し撮りである。少なくとも,同時プリントは不要だ。IX240フィルム対応のスキャナをもっていないので,「現像のみ」依頼して自分でスキャンするのも,不可能ではないが,あまりに面倒である(2005年9月22日の日記を参照)。そこで,「現像のみ」+「フジカラーCD作成」を注文することにした。
ともあれ,スキャンされたデータが納品されると,パソコンで利用するには便利である。しかし,そこに記録されていた画像は,あまりに悲惨なものであった。
Nikon PRONEA 600i, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, nexia 800
なにやら,ぼんやりした画像である。さらに,粒子も極端に目立つ状態だ。もちろん,色もはっきりとしない。
Nikon PRONEA 600i, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, nexia 800
ディジタルカメラで撮影したもの(2017年4月7日の日記を参照)と,色を比較していただきたい。
Nikon PRONEA 600i, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, nexia 800
長く放置していたことによる劣化と,薬品等のカブリの影響を受けたような,あいまいま色合いだ(2008年9月13日の日記を参照)。「『写ルンです』に入っていたフィルムは,内蔵されている電池が出すガスによる悪影響も受けているはず」,という指摘をtwitterでいただき,納得する。
Nikon PRONEA 600i, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, nexia 800
しかし,ここまで粒子が目出ち,かつぼんやりして曖昧な色になっていると,不思議な雰囲気が醸し出されて,これはこれで悪くないようにも思えてくる。
ここで,正直に1つだけ,告白しておこう。
Nikon PRONEA 600iに,AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8Sを装着して撮っていると,「無理してAPSカメラで撮る意味など,かけらも存在しない」ことに気づかざるを得ない。いや,他のレンズを使っても,おそらく同じこと。APSのシステムとしての完成度がなまじ高いがために,撮影してプリントするという基本的な面については,135フィルムとの差別化ができていないのである。だからいまならば,「あえて期限切れフィルムで撮る」ために,APSを選択するのもよいのではないだろうか。ただし,期限切れの程度によって,どのような結果につながるかは予想がつかない。
ところで,「カメラのキタムラ」は,どこの工場で現像処理をしているのだろうか。その工場は,大阪なのか高松なのか,聞いておこうと思っていながら,忘れてしまった。次の機会には,必ず聞くようにしよう。
|