撮影日記


2017年04月05日(水) 天気:薄曇り

「シノゴの日」 曇り空のサクラ

中判カメラとは,120フィルム(幅が61.5mmのロールフィルム,220フィルムも含む)を使って撮るカメラを,おもに指す。中判カメラによって撮影されるコマのサイズは,56mm×84mm(およそ6cm×9cmなので,ロクキュウ判ともよぶ)などとなる。それよりさらに大きなフィルムを使うカメラは,大判カメラとよばれる。大判カメラとしてもっともポピュラーなサイズと言えるのは,4インチ×5インチのフィルムを使う「シノゴ判」であろう。
 今日,4月5日は「シノゴの日」である(2010年4月1日の日記を参照)。最近になって大判カメラを使わなくなった人も,まだ大判カメラを使ったことがない人も,この機会に大判カメラでの撮影を楽しもうではないか!いまならば,4×5判の中古カメラはすっかり安くなっている。いまでもまだ,4×5判のシートフィルムは(種類がずいぶんと減ったものの)ふつうに購入できるし,現像も受けつけている。
 4×5判のカメラでもっともお手軽といえるのは,木製の組立暗箱よよばれるタイプのカメラであろう。もしかすると,大型のモノレールタイプのほうが中古カメラ店では安価に扱われているかもしれないが,風景写真を撮るならば組立暗箱のほうが好都合かと思う。

4×5判のカメラは,それだけの大きさのピントグラスをもつ。撮影時にはレンズを開放状態にして,このピントグラスに被写体の像を投影し,構図を整えたりピントを調整したりする。冠布とよばれる片面が黒,片面が赤(緑やグレーのものもある)になっている布で全体を覆い,そこに頭をつっこむ(すなわち頭から布をかぶった状態になる)と,ピントグラスが見えやすい。このとき,ピントグラスおよび頭の周辺を暗くしたいのだから,黒いほうを内側にし,赤いほうを外側にして使うのが正しいとされる。しかし,赤を外にすると必要以上に目立ってはずかしいので,いつも黒いほうを外側にして使っている(笑)。なお,人通りのあるところで組立暗箱を使うことそのものが恥ずかしいのだ,という類のツッコミンは,ご遠慮いただきたい。

大判カメラを使うときには,本体のほかにも必要なものがある。
 まずは,レンズが必要だ。組立暗箱の機種にもよるが,90mmくらいから300mmくらいまでのレンズが使える。4×5判での90mmレンズは,ライカ判での25〜28mmレンズくらいに相当する,広角レンズとして使える。4×5判での300mmレンズは,ライカ判での85〜100mmくらいに相当する,中望遠レンズとして使える。レンズをカメラにとりつけるときに使うボードは,「リンホフボード」とよばれるものが一般的だが,異なるものもあるので購入時には確認が必要である。
 さらに,フィルムが必要である。市販されているシートフィルムを,専用のフィルムホルダに装填して使用する。フィルムホルダは,ほぼ統一規格になっている。
 シートフィルムをフィルムホルダに装填する作業は,完全な暗黒下でおこなう必要がある。暗室があれば作業しやすいが,「携帯暗室」ともよばれる「チェンジバッグ」があればよい。
 このほか,先に紹介した冠布,ピントをチェックするためのルーペ,ケーブルレリーズ,そしてじゅうぶんに丈夫な三脚があれば,大判カメラを使うことができるようになる。

今日の組立暗箱は,タチハラ フィルスタンド45というカメラである。組立暗箱としてはポピュラーな製品であり,2013年にタチハラ写真機製作所が廃業するまで製品の供給があった。ただしこれは,最近になって購入したあたらしい製品ではない。ずっと以前に,「それまで長く使っていたもの」をいただいたものである(1999年8月30日の日記を参照)。

ともあれ今日は,「シノゴの日」だから,4×5判での撮影を強行する。4×5判での撮影からすっかり遠ざかってしまっているので,こういうときくらいは無理やりにでも使うようにしたい。
 平日だから,行ける場所が限られる。まだ少し時期が早く花が寂しいが,「楠木の大雁木」のサクラを撮ることにした。明るい曇り空なので,間近から広角レンズで撮ることにした。
 タチハラ フィルスタンド45は,上の画像でもわかるように,フロントフレーム部を後ろへさげることができる。そのため,90mmレンズでも問題なく使えるようになっている。

ちょうど,お花見の時期である。周囲では,お弁当を広げているグループもある。日ごろから,ここに腰かけて昼食をとる人の姿も見かけるが,いまは幸い誰もいない。
 用意したフィルムホルダは,1枚だけである。表と裏にフィルムを装填できるので,撮影できるのは2コマだけ。お昼休みの短い時間では,2コマ撮るだけでもあまり余裕はない。
 もっと余裕のあるときに,大きな画面とおなじくらいの大きなゆったりした心で,撮影に臨むべきなのだろうけれど。


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